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ゼロの夜想曲 17

ミスタ・コルベールが剣をローブ姿の男へと渡す。
その瞬間、それを受け取った男の左手の甲にある紋章がぼんやりと光ったのが確かに分かった。
あれが、『ガンダールヴ』?
始祖ブリミルの使い魔・・・?

その男、ローブを羽織った男が“危険”だということは聞いていた。
赤い稲妻と共に召喚された巨大すぎる力を持った“何か”。
“私も死を覚悟したほどです。”冗談に紛らせて言ったミスタ・コルベールの言葉が甦る。
いい機会、その力を少し見て見たいと思っていた。
ローブを全身に纏っているので彼の風体がどのようなものかは覗うことは出来ない。
だが、一瞬だけローブの中の目と私は目を合わせた。
ローブのせいで影の落ちた面、その中にボウッと浮かび上がったのは真っ赤な双眸だった。
それを目にした瞬間、頭の中、心の中、魂の全てを見透かされたような気分になった。
腹の中に氷塊を放り込まれたような・・・体が内から冷えていくような感覚に私は怯え、膝をつきたい衝動に駆られた。
彼は私の動揺を悟ったのか、すぐに目をそらしてはくれたが・・・それが、もう1秒でも遅ければ私はその場で卒倒していただろう。
力の差という次元ではない。
格だ・・・格が違う。
しかも圧倒的に・・・・。
一体、あれは何なのだろう・・・?

「スクカジャ×2ってところか・・・?」

剣を右手で遊ばせながら男が呟く。
一体何を言っているのかまでは分からないが、酷く機嫌のいいような声色に聞こえた。
何の変哲も無い・・いや、どちらかというと安物に入る部類の剣、それを風を切るように左右に振り、それからラフに構える。
「お待たせ・・・んじゃ。はじめようか?」
軽く言った彼。
此処からではローブにさえぎられて、彼の表情を確認することは出来ないが、ギーシュを挑発するような表情をしていたのだろう。
蚊帳の外に置かれていたようだったギーシュの顔にサッと怒りが再浮上する。
そして・・・

ギーシュの薔薇の杖の一振りで戦闘は再開されたのだが・・・。

なんと言ったら言いのだろう・・・・。
それは全く戦いにすらなっていなかった。
男の腕が奇妙にぶれるたびに、彼に肉薄していた青銅の女戦士の体の一部がスライスされていく。
そう、スライスだ。
まるで柔らかなバターを切り分けるように、それは滑らかな断面を持って切り落とされていく。最初は大雑把に切り取られ地におちていった青銅も、やがてその力を試すように薄く薄くスライスされていく。
カンナで切り出されたかのような薄い青銅の帯。
それが、男の足元に静かに積もっていく。
こんなにも人が集まっている場所なのに・・・それは異様なほどに静かな光景だった。
両手を失った女戦士の首を男は無造作にはね、それでも動こうとするそれを滑らかな青銅の塊りへと変えてしまう。それを何度か繰り返した男は、その作業に飽きたのか・・・はたまた新しい遊びでも思いついたのか、舞いでも踊るようにローブを風に遊ばせながら、残った戦士たちの間を駆けた。
疾風のようなという表現が似合う、残像すら残すほどのすばやい動き。
風に煽られて一瞬見た彼の顔・・・それはまだ大人になりきれない少年のもので、彼はこれ以上ないというように楽しそうに微笑んでいた。
その彼が、青銅の女戦士たちの間をすり抜ける時何をしていたのか、定かではない。
だが、それらを全てすり抜け、ギーシュに肉薄した彼はスラリと抜いていた剣を彼の顎下へと差し出した。
その一瞬、私は幻を見た。
ギーシュの首から鮮血が噴出し、赤い霧が辺りに立ち込め、生臭い香りがいっぱいに広がるのを。
しかし、現実では彼の剣は首筋に突きつけられたままで・・・ギーシュは顔をこわばらせてローブの中の彼と目を合わせていた。
僅かに腰を落としていた男は、ギーシュの反応に何事かを呟いたようだった。
そして、その言葉にギーシュが大きく目を見開いた。
彼はそれを合図にしたかのように体を起こしながら剣を引き、もったいぶった仕草でそれを鞘へと納めた。
鞘と鍔とがぶつかる小さなカチンという音が、響き・・・
それを合図に、動きを止めていた青銅がガラガラと崩れ落ちた。

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