スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ゼロの夜想曲 16

いつの間に彼はあんなものを持っていたのだろう?
光を固めて作ったかのような剣。
彼がそれを持った右手を高々と掲げると、それによってローブの袖口が肩の方へと滑り落ち、あの特徴的な刺青が露になった。
しかし、誰もそんなことに気付いた様子はなく、一様に息を飲んだように光の結晶を見つめていた。

時が止まったかのような一瞬。

それを破ったのは、

「待ちなさい!!!!!」

ミスタ・コルベールの鋭い声だった。

彼はギーシュを背に、玲治と対峙するかのように舞い降りたミスタ・コルベール。
そのすぐとなりにミス・ロングヒルもまたしなやかに着地したのだが、果たして何人がそれに気付いただろうか。
シンと静まり返った広場で最初に息を吹き替えしたのは光の剣を持ち、自ら悪魔と名乗った私の使い魔だった。

「決闘の邪魔をするなんて無粋だな。」

笑いのにじんだ声。
「下がっててくれないか?ミスタ・コルベール。俺は買った喧嘩を途中で放り出したくはないんだけどな?」
「・・・喧嘩・・・ですか?ギーシュが貴方の気に触るようなことをしましたか?」
「いや?ただの気障な坊っちゃん、俺はどうでもいいんだけど・・・向こうはそうじゃないらしいってだけの話だ。」
玲治の言葉にミスタ・コルベールは眉を潜め、何があったのかと同じ質問を背後のギーシュにした。
ギーシュは「それは・・・」と口ごもり、居心地悪そうに視線をそらした。要領を得ないギーシュに、今度は玲治の後ろの方に立っていた私の方へと視線を向けた。
「ミス・ヴァリエール。何があったのか説明してもらえますね」
断定系で聞かれて私は一瞬びくりと体を震わせた。
「あ、あの・・・」
言いかけて戸惑う。
食堂からここへの移動がてら知り合いに事の次第を聞きはしたのだが、それを口にするとモンモランシーやケティという下級生も居心地の悪い気分を味わうことになってしまう。
まさか彼女たちに恥をかかせるわけにもいかないと迷った末に私は、
「彼らの名誉に関わることですから」
自分の口からは言えないと、曖昧に言葉を濁した。
すると、いつの間にかこちらを振り向いていた玲治がちらりと微笑み、それでいいと言うように頷いた。
「・・・というわけだ。貴族である彼も、俺も、引けないところにいるんだよ。ミスタ。無理に引けというなら・・・そうだな。あんたが相手をしてくれるか?」
挑発的に言った玲治。あまりにも下品な言葉遣いに彼をたしなめようと口を開きかけた私は、ミスタ・コルベールの強ばった顔に驚き口をつぐんだ。
「・・・そ・・・それは・・」
ひきつった顔に、震える言葉。一体なに・・・?
コルベールの顔は驚愕からぐにゃりと歪み、苦痛の顔でとまった。
彼のこめかみから大粒の汗が吹き出し頬へと流れる。
「・・どうしてもというならば・・・えぇ・・・私が受けてたちましょう」
苦しみに押し殺したかのような声。
「ミスタ・コルベール?!」
驚きの声を上げたのは本来の決闘相手であるギーシュ。
ギャラリーもまた、ミスタ・コルベールの言葉に騒然とした。
「ミスタ・コルベール・・・何も貴方の手を煩わせるようなことは・・・」
「黙りなさい!」
ギーシュの言葉を厳しくさえぎるミスタ・コルベール。
それにまた一同がざわつき、玲治は肩をすくめてため息をついた。
「参ったな、それじゃぁ俺がてんで悪役みたいじゃないか?」
なぁ?っと私を振り返った玲治。
「・・・そのものじゃない」
と私が答えると、彼は困ったように笑い右手を振った。
すると、彼の右手に持っていた光がフッと虚空に消えてしまった。
「ま、いいとこ見せるのはまた今度ってことで」
驚く私に彼はそう言い正面に向き直った。

「仕方ないな。力は使わないでいてやるよ。それでいいだろう?」
「・・・・」
「俺が使うのは拳一つだ、これでどうだ?ミスタ。もちろん相手はギーシュでな」
玲治の言葉に迷いを見せるミスタ・コルベール。
玲治はちらりと考え込む彼の横に影のように寄り添っていたミス・ロングヒルの方を見た。
淡いエメラルド色の髪をもった美しい女性は、トリスティン魔法学院の院長であるオールド・オスマンの秘書だ。
玲治が彼女を見ると、ミス・ロングヒルは一瞬だけ狼狽したような顔をしたが、すぐに顎を引いて彼を睨みける。
「嫌われたものだな」
玲治が苦笑交じりに小さく呟いたのが聞こえた。
「いいでしょう・・・。ミスタ・ギーシュ・ド・グラモンを傷つけないという約束をしていただけるなら」
「・・・つまらないが・・・まぁいいさ」
じゃ、どいてくれるか?っと顎をしゃくった玲治。それにミスタ・コルベールは待ってくれといいローブの内から一振りの剣を取り出し玲治に放った。
胸に抱えるようにそれを受け取った玲治。
「これは・・・?」
「・・・その剣を使って欲しい」
「どういう意味だ・・・・?」
怪訝に聞き返す玲治にミスタ・コルベールは何も言わず、ミス・ロングヒルに目配せしその場をあけた。

コメントの投稿

非公開コメント

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。