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033 身長差

にょセシルネタ
微妙にカイセシかもしれない。 読み返さない

カインには口には出さないが妬ましい人物がいた。
やたら“ハイウィンド”という名に絡んでくる嫌味な貴族…ではなく、青竜騎士団よりも赤竜騎士団のほうが上だとライバル心むき出しな男…でもなく、彼を含めた軍のすべての実質的な総括であるベイガンに対するものでも、女泣かせの色男と評判のとある近衛兵に対するものでも、娘が生まれたとメロメロになっている飛空挺の技術者に対するものでもない。
彼は冒頭で言ったように、妬みを口に出したことはないし、人に悟らされるようなヘマはしない。
普段、彼の一番近くにいる…頭の切れる曲者の副官だってしらないだろう。
だが…例外もある。

 *

軍の幹部会議が終わった時、カインは自分の方を笑いを耐える表情で見ているセシルに気付き、舌打ちをしたくなった。
確かに彼は今日、会議の時にその人物の方を何度か見ては居た。
だがそれはその人が発言した時にちらっと見た程度で、けしてじっと見ていたとか目立って何度も視線をやっていたということではない。
おそらく彼女以外に気づいたものはいないだろう。
しかしだからこそ気づかれてしまったのが腹立たしい。
じっとセシルの方を睨んでいると、隣に座っていた副官が呆れたようにため息をつき「先に行きますよ」と資料をまとめて席をたった。
そしてしばらくして人がまばらになると、セシルは先ほどまで副官が座っていた席に腰を下ろし「お疲れさま」と声をかけた。それに「ニヤニヤするな」とカインが吐き捨てると、彼女はそれこそ面白いというように笑みを深めた。
「なんだよ、セシル」
「いや、相変わらずコンプレックスを刺激されまくってるみたいだなぁっと」
セシルの言葉にチッとカインは舌打ちをした。
「やっぱり気づいてたか」
「まぁね」
そう言ってセシルはちらりと部屋の中に視線を泳がせた。
会議場にはまだ何人か人がいて談笑を交わしていたが、やがてそれも一人二人といなくなり、そして二人きりになった時、

「重騎士の団長殿」

彼女ははっきりと彼のコンプレックスを言い当てた。
ぐっと言葉に詰まるカインにセシルはため息をついた。
「気にすることはないのに」
「女のお前にはわからん」
「だからって、君にはあの体型は似合わない。…というより、どう考えても無理じゃない?」
「セシルっ!」
「はいはい」
カインのコンプレックス。
およそ人を妬むなんてことをしない彼が、騎士になってからずっと意識してきた、妬んできた、羨んできた人物。
それが重騎士の団長だった。
重騎士といえば重装備、重装甲の破壊力に特化した部隊だ。
総重量五十キロを超える鎧甲冑を身に付け、刃渡りが身の丈ほどもある大剣や、巨大な戦斧を扱う。とにかく破壊力という点に関していえば、全く竜にも劣らんというような具合。
その分機動力や俊敏さには劣るが、攻撃力や防御力の高さは他の追随を許さない。
そんな重騎士に所属するものは総じて体格が良い。
身長は180から2メートルを超す巨人のようなものばかり。
半端ではない胸の厚みに、女の腰よりも太い腕、大木のような首、盛り上がった筋肉…
「でも、竜騎士カインがあの体格になるわけにはいかないし」
「うるさい…」
そんな豪傑ぞろいの重騎士の中でも、団長の男は群を抜いて素晴らしい体格をしていた。
顔こそ三枚目とはいわないが、2.5枚目くらいだが、高い身長と均整のとれた完璧な体格。
それに黒い髪に、黒い目…。
「金髪に碧眼なんて、優男の代名詞みたいじゃないか」
不機嫌そうに言うカインは、彼の持つ、所謂“男臭さ”というやつがとてもとても妬ましかったのだ。
プッと吹き出したセシルをにらみ、フンっと鼻を鳴らした。
「女のお前にはわからん」
「かもね。でもカインは女の人にもてるじゃないか。彼よりよほど」
「そんなのはどうでもいいんだよ。俺はあいつが羨ましい」
男らしい太い眉や、隆々とした筋肉、陽にやけた褐色の肌、真っ黒な髪に目…。
「俺もあぁ生まれつきたかった」
ぶすっとして言うカインをセシルは、クスクスと笑い、しかしバカにするわけではなく慰めるように頭を撫でた。
「おいッ!」
「だってさ、天下の青竜騎士団の団長であるカインが子供みたいに拗ねて。可愛いじゃないか」
「かわっ…ふざけるなッ」
怒るカインは顔を赤くして、彼女の手を振り払った。
「はははッ」
「あぁあぁうるさい!どうせ俺はアイツみたいに男らしくないさッ!」
「そんなことはない。カインは僕よりも背が高いし、筋肉だって付いている。女には見えないさ」
「そういうことじゃないだろう」
わかってない。とカインはやはり怒ったような顔をする。そして「俺は…」と言いかけて、重騎士団長をあまりに褒め称えるのは、なんだか自分がおかしな趣味があるように聞こえないかと口ごもった。
そしてもうこんな不毛な話題は終わりとばかりに持っていた書類を机で揃えていると、「僕は君くらいがちょうどいいと思うよ」とセシルが言った。
その言葉に少し驚いてカインが彼女の方を見ると、彼女はいたずらっぽい表情を浮かべて彼を見ていた。
カインはすぐに彼女がからかっているのだと気づいたが、なんだか彼は妙に脱力してしまって文句をいう気力もなかった。
「あぁ…もういい。ほら夕飯でも食いに行くぞ」
「それってカインのおごり?」
「バカか、食堂の夕食だ」
会議室を出てさっさと歩くカインを、セシルがぴょんぴょんと跳ねるような足取りでついていく。

そんな二人の姿を、すれ違う人のことごとくがなんとも羨ましそうに見ているのに、彼らは全く気づかない。

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