スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

会いたいな。 02

FT系 こんなのが書きたい というだけの話。
ちょっとだけ続けてみた。 読み返してないけれど。

久しぶりの故郷は楽しい。
懐かしい侍女や教師、友人たちとの再会。懐かしい料理にお菓子。母がくれた新しいドレスにお下がりのアクセサリー。弟が贈ってくれた家族の肖像画に宝石箱。向こうでは咲かない故郷の花、住み着いているかわいい猫、なんとか子爵に贈られた香水に、なんとか男爵に贈られた髪飾り。パーティの招待状が3枚、4枚、5枚も!
毎日が楽しい。
ドイツ帝国で勉強ばかりしていた時よりずっと楽しい。
楽しい…楽しくはあるけれど…でもなにか物足りない。

 *

ロヴィーナは侍女を相手にチェスのようなボードゲームをしていた。
それは近頃の彼女のお気に入りのゲームで、可愛い宝石のようなものがコマの代わりだ。ゲームでは現在彼女が優位な状況。だが、ロヴィーナは先程から憂鬱そうな顔をしてため息がとまらない。
正面に座ったお付きの侍女、ドイツ帝国でもずっと彼女の側にいた専属の侍女は浮かない顔のロヴィーナについつい苦笑が漏れる。
「お疲れですか?姫様」
「え?」
「さっきからため息ばかり」
指摘されてロヴィーナは口を尖らせた。
「そんなことない」
「ありますよ」
くすくすと笑って侍女は席を立つと、お茶の準備をはじめた。
「今日も沢山の面会が入っていますからね、つかれるのも当然です」
皆さん、ドイツ帝国とコネを作るのに必死なんですよ。
そんなことを言った侍女をきょとんとロヴィーナは見上げた。
確かにやたらと会いたいといってきたり、遊びに来ないかと誘いがきたり、贈り物が送られてくるとは思っていたが…
「そういうことだったんだ」
納得。
頷いたロヴィーナを見て侍女は「あら」と声を上げた。
「そのことで憂鬱だったんじゃないんですね。だったらやっぱり…」
「やっぱり?」
「ルートヴィヒ様のことですね」
指摘されてとっさに「違う!」とロヴィーナは返したが、もう何年も一緒にいる侍女はお見通しのようで「そうですね」なんて言いながらクスクスと笑った。
「違う、違う、違うわよ」
意地になる彼女だが、だんだんと語尾は不明瞭になっていく。
ロヴィーナはそっとクマのぬいぐるみを引き寄せ、抱きしめた。
「違う…」
「そうですか。まぁルートヴィヒ様は、姫様よりもずっと年上ですからね」
侍女はロヴィーナがこっそりと自分のほうを伺っているのを知りながらすまして言葉を続けた。
「私、本当に姫様が可哀想だと思ってるんですよ。いくらドイツ帝国の第一継承者だとしても、死神と恐れられる男ですし…表面上は穏やかな人ですけれど、一体何人の人を手にかけたことか…」
「……」
「いくらイタリア王国が軍事的にはとても弱いからって王様もひどい人ですよ。大事な姫様を嫁にやるだなんて!それも、姫様よりも14も年上ですよ?信じられません」
「……」
「王妃様は確か…17で姫様をお産みになったから…あら、王妃様とたった3つしか違わないじゃないですかッ!本当に何を考えているんでしょうね!」
「……」
「でもまぁ5年の猶予があるのはよろしゅうございました。王様としてはすぐに輿入れさせたかったみたいですからね」
「そう…なの?」
伺うように言うロヴィーナに頷き「はいどうぞ」と花の香りのするお茶を侍女は差し出した。
「えぇ。何しろイタリア王国は気候が穏やかで自然にも資源にも恵まれておりますから、いろんな国がそれこそ喉から手が出るほどに欲しがっているんですよ。でも…その割に兵力は…まぁあれですから…。ですから王様も、強国と婚姻関係を急がれていたんですよ」
それでも、結婚はまだでも姫様がドイツの王弟と婚約なされたことでで、国もずいぶん落ち着きました。
しつこく国境を攻めていた国も、彼女がルートヴィヒとの婚約を決めてからはおとなしいものだ。
「姫様にはわるぅございますけれど…国民たちは本当に喜んでいます。…本当に本当に姫様にはお気の毒なことですけれどね」
本当にお気の毒なのですけれど。
演技っぽく頬に手をあてため息をつく侍女。
しかしロヴィーナはそんな彼女の事は殆ど気にもとめなかった。
それというのも、彼女にはそれよりもずっと気になることがあったのだ。
「ねぇ、それって…つまり、こちらからは婚約は破棄できないってことよね?えっと、もしお金がたくさんあっても?」
「お金…?はぁ…そうですね、今うちの国に必要なのはお金ではありませんから…」
たとえお金で兵士を雇うことはできても、それで婚約を破棄なんてことをすれば、それはつまりドイツ帝国と事を構える用意がある…というふうにも受け取られかねない。
ドイツ帝国にはその意志がなかったとしても…いろいろまずいことになるのは目に見えている。
だからそんなことはないだろうと侍女が言うと、ロヴィーナはホッとしたような顔をしてぎゅっとクマのぬいぐるみを抱きしめた。
「やっぱり。馬鹿弟は騙されてるのね」
「え?」
「弟ったら、海賊のお宝があれば、私はイタリア国に帰れる…なんていうのよ」
本当にバカよね。
うれしそうにはにかむ愛らしい姿に侍女は思わず目を細める。
ロヴィーナ自身は意識していないようだが、今の彼女のセリフはルートヴィヒの妻になるのが待ち切れないといわんばかりではないか。
あんなにツンケンして、口では嫌だ…なんて言いながら…。
なんだかんだと言いながらやっぱり姫様は…そう微笑ましく思いながら、侍女はふと思いついて「でも…」と口を開いた。
「こちらから破棄することは出来なくても、向こうから断られることはあるかもしれませんね」
しれっと意地悪な事を言う。
「何しろ、向こうにとって、うちは確かに魅力的かもしれませんが、フランク国やオーストリア国などもっと大きな国が近くにありますしね。ええっとオーストリア国はどうだったか忘れましたが、フランク国には確かルートヴィヒ王子と変わらない年頃の姫様がおられたはず…。それもとびきりの美女と評判の。もしフランク国が是非に…と言われたら、ドイツ帝国も断ることができないでしょうし、その方が…」
言いかけてチラリとロヴィーナの事を伺った侍女は、彼女が今にも泣き出しそうな顔をしているのに気づき慌てて「冗談ですよっ!」と声を上げた。
「えっ…?」
「すみません、私の考え違いでした。フランク国とドイツ帝国はあまり仲がよくないですものね、きっとそんなことはないと思いますよ。えぇ、大丈夫です」
そして力強く言い切る。
ロヴィーナは侍女の剣幕に目を丸くしたが、
「えぇ、姫様の方がずっと可愛らしいし、ルートヴィヒ様とお似合いですわ!」
「別に、そんな事聞いてないわよ」
拗ねたような顔をして、持っていたクマの腕をぎゅーぎゅーと引っ張りはじめた。

コメントの投稿

非公開コメント

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。