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感情は諸刃の

結構面倒臭い設定です。
まぁ読めばわかると思いますが、人修羅が帝都にやってきてライドウと共に暴れまわった後…。
数代後の新しいライドウ(モブ)が主役。でもモブ
14代目ライドウと人修羅引きずりまくりの話。
こんな感じの続編がいいなって話。オープニング的なかんじ。
好き嫌いあると思うので、微妙と思った人は読まないほうが利口かと。

何も、何もできなかった。
誰に賛同することも出来ず、元の世界を再興することも出来ず、そしてコトワリすら持つことがかなわなかった…

俺の中は空っぽだ。

いつかカグツチに言われた通り、空っぽだ。
埋まることのない穴。
それは少しずつ大きくなり、俺自身を蝕む。
俺は今や風前の灯。
人間という基幹すら奪われた俺からは人間の倫理や道理が失われていく。
それと同時に悪魔が大きくなってせり出てくる。
俺はもう人ではない。
だからと言って悪魔になりたいわけもないのに。
望んでなどいないのに。
助けて。
助けて。
助けて。
闇が俺にまとわりつく。
闇が俺を持っていく。
闇が俺を奪ってしまう。
俺は闇になってしまう。
俺は悪魔になってしまう。
俺は、俺は、俺は、俺は………お、俺は…オレ…オレオレオレ…



ハッと目を開けると、そこには瞑想に入ったときと同じように先生が静かに座っていた。
広いお堂の中…微かに揺れる蝋燭の明かりが、先生の顔に刻まれた皺を深く見せている。
「どうした。ライドウ」
呼ばれてまたハッとする。
「夢を…いえ、あれは…」
なんだったのだろうか。
せりあがる不安に胸がどくどくと高鳴り、私は先程みた夢を先生に話さずにはいられなかった。
馬鹿なと、居眠りをしていたのかと笑われるかもしれないが、それならそれでいいような気がした。
そうすればすこしなりとも不安がはれるような気がした。
そうすればあれはただの夢だと信じられる気がした。

赤黒い空間でもがくおぞましい何か。
切々と訴えられる血の滲む言葉。
身の毛もよだつ慟哭…。

しかし先生は、私の言葉に驚いたように身を震わせ、笑ってくれることはなかった。
「それは…」
掠れたような声で言う先生に、私の中の不安が大きく膨れ上がる。
「知っているのですか?」
私が聞くと、先生は目に見えて狼狽した。
彼は目を泳がせ、落ち着かなげに身体を動かし、口をきゅっと結ぶ。
よく見れば普段何事にも冷静で慌てることのない彼が、うっすらと額に汗を光らせているのがわかった。
「どうしたのですか、先生」
私が驚いて腰を浮かしかけると、彼はそれを手で制し懐から布を出してその汗を拭った。
「ライドウよ」
「はい」
「“アレ”と言葉を交わしたか?」
眼光鋭く見つめられ私は背中がぞわりとした。
「いえ…。ただ一方的に私が見ていたというようなかんじです」
「…そうか」
私の言葉に先生は少しだけ安堵したようだった。
「向こうから接触してきたわけではない…か」
「先生は先程“アレ”と言いましたが、ご存知なのですね?」
「…あぁ…。知っておる」
「一体アレは…?」
知りたいという気持ちと、知りたくないという気持ちがせめぎ合う。
知らないなら知らないでおきたい。
しかし“葛葉ライドウ”の名を継ぐものとしては絶対に知って置かなければならないような気がした。
息の詰まるような沈黙の中、先生は話すべきか否かを迷っているようだったが、やがて決心を付けたかのように小さく息をついた。
「お前には…帝都に下る際に話しておこうと思っていたことだ。お前はまだ実力が十分ではなく未だ話すべき時ではないと思っていた。だが、お前がアレの夢を垣間見てしまったというのなら今が話す時なのだろう」
私は居住まいを正して、耳を澄ませた。

「アレは…人修羅と呼ばれるモノだ」

「人修羅?」
「さよう、人にして修羅に落ち、修羅にして人である…いや、あったもの」
「それは…悪魔…ですか?」
「そうだ…。ライドウよ。14代目のことはもちろん知っているな?」
「はい。もちろんです。14代目ライドウは歴代葛葉の中でも最強と呼ばれるデビルサマナー…。彼の時代、世は大いに乱れましたが、彼の活躍のおかげで最悪の事態を逃れることが出来たと…」
私の尊敬する人でもあります。
私の言葉に先生は重々しく頷いた。
「そのとおり。だがライドウよ。かの14代目がどうして引退したかはしっておるか?」
「……。力衰え、現役を引かれたのでは…?」
私は少し間を置き答えた。
死んだとも聞かない。
きっとそうなのだろうと思っていたが…先生は私の答えに首を横に振った。
「では、死んだのですか?」
その答えにもまた首を横にする。
「でも彼は…」
年齢的にはもちろん生きていてもおかしくはない。
おかしくはないが…
「彼は現在、失踪中という扱いになっている」
「失踪ですか…」
「そうだ。14代目が、一時行方不明になった事件は知っているな?」
「はい…たしか一週間程姿を消したとか」
「表向きには異界において事件解決のために動いていたとされているが…実際には違う。彼は異界は異界でも、我々が普段異界と呼んでいる場所とは全く別の場所にいたらしい」
「別の場所?」
「端的に言えば未来…。だが、我々の未来ではなく…そう、並行世界、パラレルワールドのような場所であったらしい」
「パラレル…」
話の大きさに目を白黒させる私に先生は微笑んでみせた。
「驚くのも無理はない。当時、彼の報告を受けたものもにわかには信じなかったそうだからな」
「そう…でしょうね」
「だが、実際はそうであったと認めざるを得なかった…。それというのも、彼はその世界からあるものを持ち帰ったからだ」
「あるもの…?まさか…」
ある予感に身を震わせる私に、先生は頷いた。

「そう、お前の見た“アレ”だ」

先生の声はお堂の中にやけに響き、肌寒さを感じた。
「…それで?」
私は続きを促すのに随分勇気を使ったのだが、先生の返事は「さて」という曖昧なものだった。
「わからないのですか?」
「いや、断片的なところなら分かる。その悪魔が人修羅と呼ばれていたこと。その他にも人としての名前を持っていたらしいこと。そして彼らは上手くやっていたらしいこと」
「人修羅は14代目の仲魔だったのですか」
「そう言って構わんだろう」
「そういえば…」
ふと噂に聞いた話を思い出した。
聞いたときにはそんな事があるものかと半信半疑であったのだが…
「14代目にはただ一つの悪魔しか持っていなかったとか?」
恐る恐る聞いた私は
「いや、それはない」
きっぱりと先生に否定され恥じ入るとともに安心したのだが…
「彼を慕い、仲魔になった悪魔はたくさんいた。数こそ歴代ライドウの中には彼を上回るものもいたが、けして少なくはない。しかし最盛期に彼が仲魔に持っていたのはお前のいうとおりただ一つ。人修羅しかいない」
「それは…それほどの力の持ち主であったと?」
「そうだ。一説には世界を一度壊し、混沌から世界を創世する力すら持っていたと言われる」
私はその途方もない力に息をのみ、同時に14代目を畏怖せずにはおれなかった。
「それほどの力を…」
「あぁ。だが…それ以上は残念ながらわからない」
「え」
驚く私に先生は小さく笑い、そして首を振った。
「その先は誰にもわからない。ただ忽然と14代目は姿を消し、そして管に人修羅が残された」
私は先生の言葉に今度こそ絶句し口を開けてしまった。
「驚いたか」
「それは…はい、もちろんです。人修羅が…いるのですか?」
「あぁいる。この地下の、何重にも張られた結界の中に…“14代目”の管に閉じ込められてな」
私はもう喘ぐことしかできなかった。
一体…それはどういうことなのだ?
「アレについては本当にほとんど何もわからない。誰かは時折哭いているという。誰かは時折実態を現すという。誰かは時折人を食うという。どれもデマなようで、しかし完全に否定するべき根拠はない。」
何しろ、アレのことを誰も殆ど知らぬのだから…!
先生は叫ぶように言って、力が抜けたように項垂れた。
「ただ…お前の見た夢…それには気を付けたほうがいいような気がする」
「…はい」
「正確には、見せられた…覗き見てしまったというのが正しいだろうが…だがそれは波長があってしまったということにほかならぬ…」
先生は殆ど独り言のように言う。
「これまでそんな話は聞いたことがなかった…だが、お前は近代稀に見る逸材…どうにも嫌な予感がしてならぬ。しかも、夢の中の彼は正気を失いつつあるようではないか…恐ろしいこと…」
先生はぶるぶると震え、喉を大きくならして唾を飲み込んだ。
ただならぬ様子に、私が誰か呼ぼうかと考えていると「ライドウよ」はっきりとした言葉で先生は私を呼んだ。
「はい」
「これからヤタガラスの使いに会いに行くがいい。あれは、私たちが知らぬ知識を知っている可能性が高い。ヤタガラスの使いに教えを乞いなさい」
「はっ」
私は畏まって頭を下げた。
「お前を帝都に遣わせるにはまだ早いと思っていたが…どうやらそうも言っていられないようだ。お前の夢はあまりにも危険な臭いがする」
先生は立ち上がると、壁際の棚の中から一振りの刀を取り出し、私に持たせた。
ずしりとした重みが、鞘から抜くまでもなくそれが真剣であると教えている。
「お前が帝都に向かう際に持たせんと用意していたものだ。今は名も無き刀だが、お前がふさわしい功績を上げれば、その刀にもまたふさわしい名がつくだろう」
「はい」

「ではゆきなさい、まずは志乃田、名も無き神社に向かうがいい」

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