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冷たき貴方を乞う

パラレル 天使と悪魔
天使:アントン・フランス  悪魔:ルート(出てないけどギル)  元人間:ロヴィ
構想倒れの典型である。 面白く無いよ。 しかも中途半端orz
題名とあっていないのは、当初の計画からずれたからだよ

「いいのか?」
「あぁ…つれていってくれ。記憶もまっさらに消してある」
「そりゃいいけど…魂の形が人の形から逸脱しちゃってるから天使にするしかないよ…?」
「あぁ…」
「アントーニョのやつが弟分が欲しいって言ってたから…」
「頼む。彼なら安心して任せられる」
「もう一度聞くけど本気なんだな?」
「そう言っている。彼は此処にいてはいけない。連れていってくれ」

いつも澄んだ泉のような瞳が、今日ばかりは曇天の灰色に見えた。
俺はまだ小さなその子を抱き上げ、幸せそうに眠る子を見つめた。そしてふとその子が何かをギュッと握りしめているのに気づいた。
項垂れる彼から見えないようにそっと手のひらを開けると、そこには銀の縁取りがある黒い十字架だった。
たしか、彼が『鉄十字』とよんで大事にしていたものだ。
彼が持たせたものだろうか?
自分の代わりになるようにと…?
いや、あれは大切なものだと聞いている。彼が自分から手放すだろうか。
でも、だとしたらこの子が勝手に持ちだしたのか…?
俺は気になりつつも早く行ってくれとばかりの態度を見せる彼に尋ねることができず、少しもやもやとした気持ちを抱えながらも彼に背を向け子供を天界へと運んだ。

 ※

約70年後。
子供はすくすくと育ち、今では立派な青年天使になったと聞いている。
心配した翼の変色もなく、一時、地界で過ごしたとは思えない完璧な天使。
ただあまりにもアントーニョが奔放に育てすぎたせいか素行はあまりよくなく、女の子をナンパするばかりで仕事あまりしないせいで底辺の地位で満足しているらしい。

今回、俺がヴァルハラを離れ、アントーニョの元に久しぶりに足を伸ばしたのは、彼の養い子の様子を見るためだ。
相変わらずなアントーニョとしばし談笑をし、それからトマト畑にいるらしいと聞いて足を伸ばせば、目的の人物はトマト畑から少し離れた木陰で横になっていた。
前に見たときは俺の腰のあたりしか無かったのに…本当に大きくなっている。
羽はしまわれていて見ることはできないが、アントーニョの話によると問題ないそうだ。
腕を枕にして眠りこけているそんな彼の首元には…鉄十字。
それを見た瞬間、俺はドキリとした。
何故これが…?
何故、彼が持っているんだ…?
アントーニョに彼を引き渡した際に、彼が必要ないと奪ってしまったはずなのに。
前に会った時には確かに持っていなかったはずなのに。
ふっとよぎる嫌な予感。
いや…まさか。記憶は戻っては居ないはずだ。
彼が堕天するなど…。
目にかかった前髪を払ってやろうと手を伸ばすと、彼はハッと目をさまし、慌てたように体を起こした。
「な、なんだよ。お前っ」
「なにって、覚えてない?子供の時に何度か会ってるんだけど…」
不審そうな顔を隠そうとしない彼…ロヴィーノに苦笑し、「アントーニョの友人のフランシスだよ」と自己紹介をした。
「フランシス?」
「そう。本当に覚えてない…みたいだね」
俺は肩を落とし、警戒されないように彼から少し距離をとって腰を下ろした。
すると心地のよい風が俺を歓迎してくれた。
「いやぁ、いい風だね」
天界ではいつだって天気が良くていい風が吹いているものだが、この場所はまた格別かもしれない。
大空が一望できる草原では、わかばがそよぎ白い花が揺れる。
木陰に入らずとも太陽の光はそれほど強くはなく心地良さそうだ。
それに
「遠くに見えるのは一角獣の森だね」
警戒心ありありのロヴィーノに独り言のように言う。
「あの森の中には大きな青い湖があって、そこにはピクシーたちが沢山住んでいる。とても綺麗な場所だが、地味な所なんで普段は殆ど誰も足を踏み入れない。だけど小さなお前はやたらとあの湖に行きたがって…」
そこまで言った時、ロヴィーノが「あっ」と声を上げた。
「思い出した?」
そう言って振り返ると、彼は気まずそうな顔をしてコクリと頷いた。
そんな彼の指先は、それでも不安そうに鉄十字に触れている。
俺はその鉄十字に視線が釘付けにされそうになるが、それをなんとかこらえて言う。
「何度も何度も連れてってやったのになぁ~」
忙しくてここのところはずっと足を運ぶこともできなかったのだけれど。
「…あぁ」
「あの湖が好きだったよね。今でも行くの?」
「…時々」
「アントーニョと一緒に?」
「一人で…」
ぽつり、ぽつりという。
少し人見知りな所があるのかもしれない。
「まだ一角獣やピクシーたちはいる?」
「あぁ」
「そうかそうか」
会話が続かずに困っていると、「あの森の湖は…」とロヴィーノが口を開いた。
「好きなんだ…キレイ…だし」
「あぁ、確かにキレイだよね。本当に透き通っていて」
広く大きな湖は本当に美しい。
透明度が高くて、中央の辺りはかなり深いというのに、はっきりと底が見える。
「そうだ!お前はあの青い水を持って帰るといつも瓶に詰めてたっけなぁ。それで詰めた水が思ったような色じゃないって毎回ないてたっけ」
そう言うと、今度こそ本当にロヴィーノの緊張はほぐれたようで、彼は小さな笑みを披露してくれた。
「あの青を見るとなんでかしらねーけど、すごく落ち着くし癒されるんだ」
「まぁたしかにそんな雰囲気はあるよね」
あの青は特別だ。
そう言いながら、近頃はとんと見ていない湖を思い浮かべた俺は、湖と重なるように浮かんできた似た青にハッとしてロヴィーノの指先を見た。
彼の指は相変わらず、首にかけた鉄十字をいじっている。
鉄十字…。
元は、アイツの首元にあった…。
なんだか胸の中がざわざわと波立った。
「その鉄…ネックレスも?」
試すように聞くと、彼は鉄十字をきゅっと握りしめた。
「前はそんなの持ってなかったよね?」
「アントーニョに貰った」
「アントーニョが?」
どうして?
「俺のだって」
「…そう」
アントーニョの意図は不明だが…とにかく、彼は覚えていない。
その事に少しほっとした。
もちろん今さら思い出したとしても、昼間の夢と変わらぬほどに儚いものでしかないだろうが…。
大丈夫。彼はこちらの子だ。
「これも持ってると落ち着く」
彼の言葉に沈みかけていた意識が浮上する。
「アントーニョは詳しくいわねぇけど、多分これは俺が人だった時に持ってたものだと思う」
いとおしげに鉄十字を撫でる彼にまたざわざわと胸が騒いだ。
「そう…かもね」
掠れる声。
不思議そうに首をかしげるロヴィーノに、俺はかろうじて笑顔を見せる。
大丈夫。
なにを焦る必要がある。
アイツは此処には来れない。
アイツはこの子を手放した。
アイツからはあれから一度として接触がない。
何も問題はないはずだ。
大丈夫だ。
何度か自分に言い聞かせると、少し落ち着いてきた。
「でも、黒い十字架ってのは、此処ではあまりいい目で見られないんじゃないか?」
「そう…だな」
ロヴィーノは目を伏せると、さっきからずっと弄っていた鉄十字を服の中に入れた。
「お兄さんは気にしないけど、あんまり人には見られない方がいいよ」
なんて…口ではいいつつ、俺はそれが見えなくなってほっとしていた。
何しろアレは、アイツがいつも首にぶら下げていたものだ。
あの時の様子じゃロヴィーノが持ち出したことにはきづいていないようだが、アイツにとってアレは大事なものであるはず。もし……いや、それはない。探しに来るとすればとっくに来ているはずだ。
またざわざわと波立ち始めた胸に俺は動揺する。
おかしい。
どうしてこんなに焦ってるんだ?
嫌な予感?
そんなものクソ食らえだ。
俺は髪をかきあげ、努めて気持ちを入れ換えるように大きく深呼吸をした。
「顔色が悪いぜ?大丈夫かよ」
「ん、あぁ大丈夫。ちょっと疲れがでちゃったかな。何しろヴァルハラから飛んできたからね」
「ヴァルハラ?へぇ、お前って偉いんだ?」
「そうでもないよ」
なんとか取り繕う事は出来たが、やけに喉の渇きが気になる。
「そういえばお土産があるんだ。アントーニョの家に置いてあるから一緒に戻らないか?」
俺はそういって彼に手を差し出し、立ち上がるのを手伝った。
そうしてみると、彼はまだ成長途上なのか身長に比べて肉付きが悪いのが目立った。
どことなく不安定な…しかし、だからこその美しさを持っている。
「なんだよ」
「いや、さぁいこう」
俺は彼の背を軽く押し出し、彼越しに見た青空とは正反対に胸の中が曇っていくのを感じた。

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