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純粋な光

フリッツ親父と東西兄弟
人間親子設定で。

まったく長男のギルベルトときたら、本当にどうしようもない悪童だ。
こないだはハウマンさんちの羊を全部逃がしてしまったし、神父にバケツの水をひっくり返したり、図書館で戦争ごっこをしたり、町にお嫁にきたお嬢さんを川につきおとしたり、ルドルフさんちの鶏を盗んだり…隣の家の女の子を泣かすのなんて日課といってもいい。

「本当に!お前はどうしてそうなんだ!」

叱りつけると、ひどく反省したようにしょげてみせるのだが、殊勝な態度に騙されてはいけない。
彼は反省しろと納屋に閉じ込めた矢先、すぐにどうやってか抜け出し豚を追いかけ回していた前科があるのだから。
「どうして授業を抜け出したりしたんだ!先生に聞いたら日に二度はいなくなるそうじゃないか!」
「だって…」
「だって?だってなんだというんだ!」
「アントーニョとフランシスのやつが…」
アントーニョにフランシス!
私は自分の顔をパシンと叩きたくなった。
アントーニョもフランシスはギルベルトの幼なじみにして悪友、ギルベルトに負けず劣らずの悪童どもだ。
彼らは、あまり私の家で悪さをすることはないのだが、それでも三人が池の鯉を追いかけ回していたのは記憶にあたらしい。
「彼らと付き合うなとはいわないが、もう少し考えなさい!何故、お前たちはそんなに悪さばかりするんだ!!大体聞いたぞ!ギルベルト!悪さの大半はお前が言い出しっぺだそうじゃないか!」
先生の話によると、学校ではギルベルトは不良で通っているらしく、3つ上になる最上級生まで痛め付けて、ガキ大将を気取っているらしい。
学校で彼らに逆らえるものはおらず、生徒たちはみな彼らに服従していて、先生たちの中にも彼らを怖がり何も言えないものがいるのだという。
私自身…確かに子供の頃は何一ついたずらをしなかったとは言わないが、どう考えてもギルベルトのそれは目に余る。
ギルベルトに比べれば私のやったいたずらなんて可愛いもの…
「まったく嘆かわしい!そんなことではすぐに警察に捕まって銃殺刑にされるぞ!」
「子供は死刑になんねーもん」
「ギルベルト!!!」

今日の今日こそは彼に心を入れ換えさせねばならないと私は腰を据えて彼を説教することにした。
何故いたずらをするのか、人を困らせるのか、泣かせるのか。
自分がされたらどう思うか…いや、倍返しの話をしているのではない!目には目を!?一体誰の受け売りだ!!!
大体、もし誰もがやられたらやり返すなんてことを繰り返したなら世界はどうなるか考えてみろ。
それこそあっという間に戦争になってしまうぞ!
だいたいお前には聖書を読んで聞かせたはずだぞ。教会にも通わせていたというのに!
イエスはなんとおっしゃったか覚えてはいないのか!シスターはお前になんとおっしゃっていた!
 …うんぬん。

そんなことを半時間ばかりやっていたか。
ふと私はギルベルトの向こうにある扉が小さく開いているのに気づいた。
そしてそこから顔を見せているのは…まだ三歳の次男ルートヴィヒだ。まだ小さな彼は泣きそうな顔をして兄の背中を見ている。
そんな姿を見てしまうと、どうにも怒りを持続させるのが難しくなる。
ルートヴィヒは兄のギルベルトとは違ってとてもいいこだ。
とても純心で天使のように清らかだ。言葉も丁寧で、お手伝いも進んでやりたがり、近所の人にも可愛がられている。いたずらなんて一つだってやったことがないし、何か失敗するとすぐに「ごめんなさい」と頭を下げる。
そんな彼の事が粗暴なギルベルトも気に入っているのか、ルートヴィヒの事をギルベルトはひどくかわいがっており、彼は一度としてギルベルトはルートヴィヒを怒ったことはないし、泣かせたこともない。
しかもルートヴィヒの前ではギルベルトは大きな猫をかぶっているので、頭の痛い事にルートヴィヒは兄が聖人とでも思っている節がある。(ルートヴィヒは兄が不良などということは夢にも思っていないだろう…。本当に頭の痛いことに…。)
心配そうなルートヴィヒをなるべく見ないようにしながらギルベルトを叱りつけるのだが…だんだん勢いが落ち、言葉が詰まり…そしてしまいにはため息が出た。
私はとにかく反省するようにとつげ、それからルートヴィヒを側に呼んだ。
ルートヴィヒがいると知らなかったギルベルトは驚いたように目を見開き、弟の泣き出しそうな顔を見ると、私の説教を聞いていた時よりもよっぽど自分の悪さを反省する顔をした。
「にいちゃ…」
「ルッツ…」
「さぁギルベルト。ルートヴィヒに誓いなさい。もう二度と悪さはしない。授業にもまじめに出ると」
私の言葉に一瞬逆らうような表情を見せたギルベルトだが、それもほんの一瞬。
ギルベルトはルートヴィヒの視線に気づくと、眉を八の字にして弟のすぐそばにひざまずいた。
そしてルートヴィヒの手を取ると「俺、ギルベルト=バイルシュミットは、これから悪戯をせず、授業にもちゃんと出る事をルッツに誓うぜ!」と言ってその手にちゅっとキスをした。
事の次第がよくわかっていないルートヴィヒはそんな兄の姿に目をまるくし、すぐに遊びとでも思ったのかきゃっきゃっとはしゃいで笑った。
「よし、まぁいいだろう」
どうせギルベルトが大人しくしていられるのは一週間かそこいらだろうが…だが、どんなにしかっても私では三日が限度なのだから、一週間ももてば立派なもんだ。
「ではギルベルト、ルートヴィヒを連れて遊びにいっておいで。もちろん、危ないことはするんじゃないよ」
「あぁ、了解だ。親父!よーし!行くぞ!ルッツ!」
「あぁい!いきます!」
可愛らしく手を上げたルートヴィヒは、ギルベルトをキラキラした目で見つめ、ギルベルトはそれに照れたように鼻を掻く。
「ほら、裏の野原まで競争だぞ!」
よーい、ドン!
「あぁ、にーーちゃ、ずるいー!」
「あはは、早く来ないと置いて行くぞ!」
ルートヴィヒと手加減をしたギルベルトが駆け出して行くのをみながら、私はほっと息をついた。
あぁやっていれば、本当にいいお兄ちゃんなんだが…。

「…さて…じゃぁ、ブルーメさんのところに謝罪の電話をかけるか…」

私は部屋の隅に置かれた電話を見て、肩を落とした。

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