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甘く魅惑的な欲望 05

ドイツとプロイセンの住む家のリビングには、三人がけのソファが向かい合うようにして置かれている。
その片方に今はプロイセンが難しい顔をして座っており、その正面に「ヴェーーー」と鳴いて(?)いるヴェネチアーノを挟み、彼の左にロマーノ、そして右側にドイツが座っている。
ドイツとロマーノは中央にいるヴェネチアーノから顔を背けるようにそっぽを向いており、どちらも落ち着かない様子だ。
指でしきりにリズムをとっているドイツ…と、しきりに身じろぎをしているロマーノ。
そんな二人を見て「だから言ったろ」とプロイセンは呟やき溜息をついた。
「まぁ…いまが戦時中や恐慌のど真ん中ってわけでもねぇし、このままなら少なくとも半年は特におかしな事にはなりそうにねぇってのが救いといえば救いか…」
後半は独り言になったプロイセンは、またため息をつき前に座る三人を見ると相変わらずそっぽを向いている二人…と…
「ヴェー……」
状況がわかっているのかわからないのか、ぼーっとしているイタリア。
プロイセンはそんなイタリアにそこはかとない癒しを感じつつも…彼が便りにならないなんてことは重々承知だ。しかしそれでも「どうするよ、イタちゃん」と意見を聞くと、ヴェネチアーノは左右を見て彼らの背中にゴツゴツと頭を打ち付けた。
「俺は嬉しいなぁ~、ドイツと兄ちゃんがくっついたら、ドイツが俺の兄ちゃんになるかもしれないってことでしょ?俺、家族が増えるのってうれしいなぁ~」
その発想はなかった。ドイツの恋人がイタちゃんの兄貴ってことは、俺の弟に…とプロイセンは目を輝かせたが、
「馬鹿者!なにを言っている!!」
「お、俺がドイツとどうこうなるわけねぇだろう!!」
すぐに二人から否定の声が上がった。
だが真っ赤になっているのはただの照れ隠し…なんてことが透けて見えてプロイセンはなんだか萎え…いや、プロイセンは冷静になることが出来た。
しかしなにも二人が本当に愛しあって交際をはじめるのならばプロイセンは(ゴネはするだろうが)反対しない。だが、これは発情期がもたらしたもの。二人が本当にひかれ合っているわけではなく、本能的に相手を欲しているだけだ。それで本能に負けてしまえば…きっと二人はボロボロに傷ついてしまうだろう。
プロイセンとしてはそれを黙って見過ごすなんてことは出来ない。ドイツの兄として、そしてドイツの半身としてイタリアという国との外交に亀裂を入れるわけにはいかないのだ。そしてもちろんロマーノを傷つけたくはないという気持ちもある。
プロイセンはメモ帳から二枚の紙を切り離すと、ペンとともにそれを二人に差し出した。
「いいか、二人とも。これからいう言葉を紙にかけ」
「は?」
「なんだよ、それ」
「いいからいう通りにしろ」
プロイセンが急かすと、二人は仕方なしにペンをとった。
「まずはイタちゃんの兄ちゃんだ。イタちゃんの兄ちゃんはそこに『じゃがいも野郎』とかけ」
「なっ」
「兄さん!」
驚くロマーノと、非難の声を上げるドイツ。それを無視してプロイセンは、「そんでヴェスト、お前は『イタリアの兄』と書け」と続けた。
「兄さんっ、これは一体…」
「いいから書け!」
どんとテーブルに拳を打ち付けるプロイセン。二人は仕方なく言われた通りに紙に言葉を書く。
ドイツは内面の几帳面さが出るような少しかたい文字。そしてロマーノの方は流れるような文字で。二人の表情は冴えないが、それは仕方がない。これは彼ら自身が自覚するために必要なことなのだ。
プロイセンは確かにそこに言った言葉と同じものが書かれているのを確かめると、
「いいか、ふたりとも。これがお前らが相手に対して思っている事だ」
二人を交互に見ながら言った。
「今のお前らには酷に聞こえるかもしれないが、あえて言うぞ。お前らが今相手に対して抱いている感情は偽物だ」
プロイセンが断言した瞬間、二人はとても傷ついたような顔をした。
大切な弟、そして個人的にとても気に入っているイタリアの兄の表情に、プロイセンもまた胸が傷んだが表情には一切出さず、心を鬼にして言葉を続けた。
「このまま流されれば、お前らは絶対に後悔する。お前らの間に横たわっているものは…これだ」
プロイセンは2つの紙を指さし、「取れ」と二人に言った。
二人は恐る恐るというように自分が書いた紙を手に取り、複雑な顔でそれを見つめる。
「今はどう思っているかしらないがな。お前らが相手に持っていた認識は間違いなくそれで、それ以上は一切なかった。そうだよな?イタちゃん?」
急に話を振られたヴェネチアーノは「ヴェッ」と驚きながらも、うんうんと頷いた。
「うん。俺は仲良くしてほしいな~って思ってたけどね」
「ほらな。間違いねぇ。だからお前らが今相手に抱いている好意は、完全に発情期特有の熱病にほかならない。わかったら、イタちゃんの兄貴はおとなしく家に帰って熱が覚めるまで此処には…」
「ま、まてよ」
「ん?」
プロイセンがロマーノを見ると、彼はほとんど泣きそうな顔をしていた。
一昔前なら男が泣面なんて…と腹を立てていた彼だが…、今日この時に限ってはむしろ彼こそが泣きたい気分だった。
「無理だ」
「ぁ?何が?」
「だから…は、離れるとか…無理」
そういった途端、ポロポロと涙を流し出す。そんなロマーノに「兄ちゃん…」とヴェネチアーノが心配そうに声をかけ、そんな二人を見たドイツが「兄さんッ!!!」と鬼の形相で怒鳴る。
「見損なったぞ!兄さん!いや、兄貴!」
青い炎をチラチラと燃やすドイツからは確かな殺気が放たれており、
「ちょ、ちょっとまてよ!俺は何も間違ったことはいってねぇぞ!落ち着け!!特にヴェスト!その殺気はしまえ!お兄ちゃんがこえーだろうが!」
プロイセンは慌てて降参と手を挙げた。
「と、とにかく…なんで泣いてんだよ…」
「だ、だって…お前が…わるい!お、俺……」
言葉にならないロマーノに代わって「兄ちゃんね」とヴェネチアーノが口を開いた。
「プロイセンから追い返されてから、昨日ずっと泣いてたんだよ」
「え?」
「兄さんッ!」
再び身に突き刺さった鋭い殺気にプロイセンは身体をすくませる。
仲が良い兄弟とはいえ…これまで何度も喧嘩くらいはしてきた。それでも本気の殺気など、これまで一度として味わったことはなかった。
これは…たしかにフランスが本気でビビるのも頷ける…プロイセンは思った。
「しょ、しょーがねぇだろう!お前だって冷静に考えろよ、ヴェスト。そうするしかねぇじゃねぇか!」
よく考えてみろ。
そう言われて「むッ、しかし…だからといってだな………」上手い反論が見つからないのか黙りこむドイツから殺気が少し弱まった。
それにプロイセンはホッと息をついた。
「ふぅ…っつか、泣き通しだって?」
「そうなんだよ。身体の水分が全部でてっちゃうかもしれないって思って、俺心配したんだよ」
うぇっ、うっっと泣くロマーノの背中をヴェネチアーノは優しく撫でながら言う。
「あーぁ…どっちも重症だなぁ…」
天井を仰ぎつつ…プロイセンも見に覚えが無いこともない…。
彼の場合、その時期に出会ってしまえば最後…どうなるかわかったものじゃないから、避けて避けて避けまくっているが…しかし、出会ってしまったらどうなるだろうか…?うっかり接触してしまおうものなら……背筋が凍る。
一時の感情に流されて、目が覚めた時のことを思うと…ブルリとプロイセンは体を震わせた。
やはり駄目だ。絶対に駄目だ。
「あー…けど理解はしてくれてるよな?お前らが本当は相手を好きじゃないってこと」
プロイセンが確認すると、ドイツは複雑そうな顔をしながらためらいがちにゆっくりと頷き…ロマーノの方もまた嗚咽まじりに「だ、だれが、じゃ、じゃがなんか…」と答えた。
ドイツはやはりロマーノよりは冷静だ。少なくとも表面上は。
そしてロマーノの方も、ドイツと離れるとなると涙がこぼれてしまう…泣き上戸の状態になっているが、一応わかってはいるらしい。
色々と問題はありつつも…それだけはよかったとプロイセンは思った。これで“いや、俺はロマーノを愛している!”“俺だってドイツが好きなんだ!”なんて言い出したときには、それこそ縄で縛ってでも二人を引き離すつもりだったが…そこまではしなくていいらしい。
プロイセンとしてはこのままイタリア兄弟には家に帰ってもらい、発情期が終わるまではおとなしくしておいてもらいたいところだが…
わんわんなくロマーノと…そして、泣いている相手をチラチラと見ながら落ち着きのないドイツ…
ロマーノはきっと家に帰っても泣き続けるだろうし…ドイツももうロマーノ無しでは仕事に集中出来そうにない。
それぞれに取り乱しオロオロとしている三人を見て、どうすればいいのだろうかとプロイセンは頭を抱えた。

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