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甘く魅惑的な欲望 04

二階にある執務室ではドイツだけでなく、普段はデスク仕事にはほとんど手を出さないプロイセンも書類を手に机に向かっていた。
二人とも公私混同を避けるためにスーツを着用しているせいか、いつになく緊張感を醸し出しているように感じる。
いや事実プロイセンは大事な弟が“発情期”に入ったらしいとわかった時からずっとピリピリしている。ドイツがまだ幼く、他国に狙われ、また身内にも狙われていた頃と同じか、同程度に彼は弟を家に閉じ込め、一歩足りとも外へはだそうとはしない。
そんなピリピリとしたプロイセンとは逆に、ドイツは普段に比べれば少しだけ熱に浮かされたようにぼうっとしているのだが、それはプロイセン以外に気づかれるような変化ではない。

「おい、おわったぜ」
持っていた書類の束を放ったプロイセンは、ひたすらキーを打ち続ける真面目な弟を見てふっとため息をついた。
「おーい、ヴェストォ?終わったぜ~」
もう一度声をかけるとようやくドイツは顔をあげ、兄と放り出された書類を見て「あぁ」と言った。
「では次はこちらの報告書に…」
「って、ちょっと待てよ。その前に10分休憩だぜー」
話を遮られたドイツは少しムッとしたような顔をしたが、時計を見て思っていたよりも針が進んでいたのを確かめると「そうだな」と表情を緩めた。
「よーし!…ところで、調子はどうだ?ヴェスト?」
「ん?あぁまぁ大丈夫だ」
そう言ったドイツは、兄がいまいち納得していないのを見て取ると「そうだな」と言葉を続けた。
「まだ少し熱っぽいが、そういうものだと納得してしまえばさほどでもない。まぁ、兄さんが大量に持ち帰ってくれた仕事のお陰で、意識する暇もないというのが一番近いが」
苦笑するドイツにプロイセンはけせっと笑って返し、コーヒーを入れるために席を立って…
「あいつら…」
ふと目を向けた窓の外の光景に小さく呟く。
「どうしたんだ?」
不思議そうに聞くドイツにプロイセンは何でもないと返し、「少し日が入ってきたな」と窓に薄いカーテンを引いた。

 *

「俺は、来るなって言ったよな…?」

玄関先、壁に寄りかかるようにして立ったプロイセンはひどく不機嫌そうな顔で言う。
もともとイタリア達には弱い彼の表情には困惑も深く滲んでいるのだが…ビビリまくっている二人にはそれは伝わらない。
チロリと睨まれたロヴィーノはビクンと震え、ヴェネチアーノの腕を掴んだ。
腕を掴まれたヴェネチアーノもいつになく不機嫌そうなプロイセンの表情に怯えながら、しかし昨日兄が盛大に泣いたことや今腕を掴まれ頼られているということがあるのだろう。上半身は後に引きながらも、なんとか逃げずに踏みとどまった。
「あのなぁ…俺は何も意地悪で言ってんじゃないんだぜ?」
プロイセンが軽くついたため息。それだけでも吹き飛ばされそうな程に二人が震えるものだから、プロイセンは非常に居心地が悪かった。
「いい子だからしばらくはうちには近寄るな」
「ヴェ…ど、ドイツは?」
「だから…ドイツには会わせられねぇって…」
「ド、ドイツに会わせてよ!お、俺たち、ドイツに会いに来たんだよ!」
「そ、そーだぞ、あわせろ!」
明らかに虚勢を張っているヴェネチアーノと、その影に隠れて吠えるロヴィーノ。
プロイセンはうぅっと喉の奥で唸って頭を掻いた。
「参ったな…だから…無理なんだよ」
「お、俺たちはドイツに用事があるんだから、ぷ、プロイセンは引っ込んでてよ!」
「そ、そーだぞコンチクショウ」
弱いものいじめをしているような気分にプロイセンは内心がっくりと落ち込む。

「俺はお前らのことを考えて言ってやってんだぜ?」
そそういいながらプロイセンは、おそらくだがロマーノが発情期を迎えていること…そして、その相手がドイツでかもしれないという予測を口にしようかしまいかを悩んだ。
プロイセンが知る限り、ロマーノはドイツのことをひどく嫌っている。(ドイツはロマーノの事を困ったやつ程度にしか思っていないようだから、今のところロマーノの一人相撲ではあるが…)
そんな彼に発情期で否応なくドイツがパートナーになった…などと言ったら彼はどう思うだろう?
それは今はいい。
お互い、相手をメロメロにするフェロモン全開状態だ。
内心では戸惑いながらも、発情期を迎えているロマーノはドイツに惹かれずにはいられないはずだ(逆も然り)。だが、ひとたび発情期が終わってしまえば(普通は、一度相手が決まると、割りと穏やかな関係が続くのだが…)…もともとドイツを嫌っていた彼は、今以上にドイツを嫌い、そして自分自身に嫌悪感を覚えるのではないか。
取り敢えず、現状二国の経済は安定しており、関係も良好であることから足を引っ張り合うようにして果ては滅びる…なんてことはありそうにない。しかし、表面上はともかく、今後において二人の間に決定的な亀裂が走るのは兄としても、イタリアを気に入っているプロイセンとしても楽しい展開ではない。

 ― やはり何も言わずにしばらくは会わせない方が無難だよな…。

そう結論付けると、プロイセンはズキズキ痛む胸に気づかないふりをして言葉を続けた。
「だからな、ヴぇストは今仕事が立て込んでんだよ。ほら、アメリカのやつが経済でちょっとやっちまっただろ?おかげでうちも大変なんだよ。俺だってほら、スーツきてるだろ?朝から手伝ってたんだぜ?」
「そ、そんなことしらないもん!」
「そ、そーだそーだ!」
「ドイツに、あ、会わせてよ!会わせてくれるまで帰らないんだから!」
「お、俺もだぞ!」
「だぁかぁらぁ…」
どういえばわかってくれるんだよ…。そうプロイセンが頭を抱えた時だ。
ヴェネチアーノが息をスッと吸い込み…そして…
「ドイツー!ドイツー!助けてドイツーーー!」
大きな声でドイツに助けを求めはじめた。
「ちょ、イタちゃ…」
「ドイツーーー!!ドイツーーー!!!助けてーーー!!」
近所中に轟くような大きな声。
それは昔からドイツが一度として逆らえた試しのない救援要請である。
プロイセンは慌てて止めようとしたが、時すでに遅し。
プロイセンが背にした扉の向こう、二階からドタバタとドイツがかけ降りてくる気配とともに「どうした!イタリアぁ~~!」という声が聞こえ、彼は顔を盛大にひきつらせた。

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