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甘く魅惑的な欲望 03

俺の涙腺はばかになってしまったらしい。

「兄ちゃん…」

ポロポロ、ポロポロと涙が溢れてこぼれる。
「泣かないで、兄ちゃん」
ベッドの上でサッカーボールみたいに丸くなった俺は、雨に打たれた子猫みたいに震えながらもう一時間くらい泣き続けてる。
「ほら、冷たいレモネード持ってきたよ。ねぇ、飲んで」
ずっと俺の背中をなで続ける馬鹿弟。
そんなことされても涙は止まんないのに。
「ふ、うぅ」
「兄ちゃん、ほら一口だけでも…ね」
体の中がからからになっちゃうよ。
再度促されて、俺は嗚咽にひっくひっく言いながらゆっくりと顔を上げた。
情けない顔は重々承知だけど、バカ弟しかいないから…。
「はい、兄ちゃん」
差し出された汗を掻いたグラスを受け取り、一気にあおると…それはすぐに涙になってまたポロポロと頬を流れた。
「兄ちゃん、もう一杯いる?」
心配そうな弟がうざいが、喉は確かに乾いていたからこくんと素直に頷く。すると弟は持っていた大きな水差しから持っていたグラスにレモネードをそっと注いだ。
俺はすぐさまそれをゴクゴクと飲み干し、今度はもういらないとベッドサイドテーブルに置いた。
「兄ちゃん、お腹いたいの?」
「ちがう」
「じゃぁ具合悪いの?お医者さんよぶ?」
「ちがう、いらない」
「どこか痛いの?」
「痛くねぇ」
「俺、なんかした?」
ふるふると首を横に振る。
「じゃぁ、どうしちゃったの?」

「ドイツの家に行ってから変だよ?」

― ドイツ

その名前を弟の口から聞いたとたん、涙は勢いをまして自分自身でも収拾がつかなくなった。
「ふぁ…うぁあぁああぁ」
「ヴェ、に、兄ちゃん?!どうしたの!」
「うわぁあぁん、ドイツが…」
「ドイツがどうしたの!?」
ドイツが、ドイツが…と言って泣く俺に馬鹿弟は“その先”を聞き出そうとするのだが、言える訳がなかった。
俺だってその先が何なのかわからないんだから。
だけど、わかった。
原因はドイツだ。
何がなんだかわからないが、とにかくドイツのせいだ。
「ドイツ、ドイツ…」
「兄ちゃん、お願い、泣かないでッ」
バカ弟は自分まで涙目になって言う。
「兄ちゃん…」
ふえっと聞こえたかと思うと、彼の目からも涙がコロンと落ちた。
そして「ドイツ、ドイツ…」と泣く。
俺たちはしばらく「ドイツ、ドイツ」とムキムキ野郎の名前を互いに呼びながら泣いた。
ドイツ、ドイツ、ドイツ…なんで、なんで…なんで…?なんで…なんだろう?
その先の言葉が見つからない。
だけどドイツが悪い。
とにかくドイツのせいだ。
ドイツが、ドイツが…ドイツが全部悪い。
ひどい。俺はなんにもしてないのに、なんで、なんで、…なんで?…チクショウ。
「兄ちゃん…」
ドイツのバカヤロウ、ドイツのジャガイモ野郎…ドイツの…
「ねぇ、明日、もう一回ドイツの家に行ってみよう?」
「ふぁ…?」
顔を上げると、ぐずぐずな顔をしながらも強い意志を込めてバカ弟が俺を見ていた。
「ドイツが兄ちゃんに何したのか知らないけど…ドイツはいいやつだもん、きっと仲直りできるよ!」
「なんだよ…それ」
別に俺、何もされてねぇし…ドイツと喧嘩したわけでもねぇし…。
なんにもねぇし…っつか、しばらく会ってなかったくらいだし……違う、会ってなかったっていうか…今日も会え…会えなかった…し…
それに…

― ロマーノ、お前、しばらく此処にはくるんじゃねぇぞ

耳に蘇ったプロイセンの言葉に、さっと血の気が引いたような気がした。

「どうしたの?兄ちゃん…?」
弟は様子がおかしい事に気づいたのか、俺の顔を心配そうに覗き込んだ。
「じゃ、ジャガ一号が…」
どうしよう…また…涙が止まらない。
「ヴェ、プロイセンがどうかしたの?」
「あ、あいつが……」
それ以上言葉にならなくてヒックヒックと喉を鳴らして涙をこぼすと、バカ弟は俺の頭をよしよしと撫でた。
「うん、ひどいよね。プロイセン、ドイツに会わせてくれなかったもんね」
そんな言い方はないだろう。
「ば…そ、れじゃ…俺…」
俺が、ドイツに会いたかったみたいじゃないか。
そんなはずないのに。
そんなはず…
「ひ…ぐ…う、うわぁああぁあぁぁぁん!!」
「ヴェ、兄ちゃ~ん」

「「ドイツ、ドイツ、ドイツー…ッ!」」

俺たちはその日は疲れて眠ってしまうまで、ドイツを呼びながら泣いた。

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