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わたしのこえをうばわないで

金子みすゞさんの詩からインスピレーションを得ています。
独×にょロマ ロヴィーナ パラレル
駄文だ~~~><

新緑の色をしたドレスを着たフェリシアーナ王女と、真っ赤なトマト色のドレスを着たロヴィーナ王女は、無事、勇気のある王子さまの力で悪いドラゴンから助けられました。
その知らせに毎日をドラゴンに怯えながら暮らしていた人々は大騒ぎ!
飲めや歌えの大宴会が連日のように開催され、そんな中執り行われた王子とフェリシアーナ姫の結婚式に、みんなの喜びは最高潮に達しました。

こうして人々はもうドラゴンに怯えることなくいつまでもいつまでも幸せに健やかに過ごしましたとさ。

 *

そして物語が終わり、現実(リアル)がはじめる。

 *

ロヴィーナは与えられた部屋で一人ぼんやりと空を見上げていた。
青い空、白い雲、優しい日差し、小鳥の声…
いつドラゴンに食われるかと精神をすり減らす日々と比べると夢のように平和な日々。だけど彼女の胸にはぽっかりと大きな穴が空いている。
豪華なドレスで気飾っても、騎士たちにかしずかれても、娘たちに羨望の眼差しを向けられても決して塞ぐことのできない大きな穴が。
妹のフェリシアーナはたすけてくれた王子と恋に落ち、結婚して今は新婚旅行をかねて領地を回っている。妹は幸せいっぱいである。きっとこれからもずっと。
それはとても喜ばしい事。
だけど…

―だけど私は…?

自分を省みてロヴィーナはため息をつく。
彼女たち姉妹はそもそもはお姫様でも何でもないただの町娘だった。
幼くして両親を亡くし、小さな畑で野菜を作り、近所の酪農を手伝って生計を立てていた、ごくごく普通の貧しい町娘。それがいつの日か飛来したドラゴンに拐われ、そして何がなんだかわからない内に王女様に祭り上げられ…
ふぅっとまたため息が出る。
フェリシアーナは明るく人に好かれ適応力もあるから、昔から此処にいたかのように城に馴染んでいる。しかし妹と違ってどちらかというと保守的なロヴィーナは馴染めない。
彼女の元には素敵な王子様は現れなかった。
妹しか頼るものがいないのに、その妹ももう彼女一人のものではない。
気を許せるような友人も一人としてできない。
彼女の心はとても空虚だった。

―帰りたい…。

貧しくとも充実していた日々に。
しかしもう元の家はとっくに意地悪な親戚に処分されているだろうし…、離れると言えば妹は泣いていやがるだろう。

…帰る家はもうない。
そして此処に居場所も見つけられない。

王子はいい人だし、王様も城の人たちもよくしてくれる。
きれいなドレスに、素敵な宝飾品、大きなベッド、細かな細工の入った舶来の家具、豪華な食事…
それでも足りない。
心が寒い。
どうしようもなく寂しい。

はぁ…

もう一度ため息をついたロヴィーナは、新品の緑色のドレスを引きずりながら歩き出した。
「お姫様、何処へ?」
すかさずお付きの侍女が言うのへロヴィーナは「ただの散歩よ、ついてこないで」といなし部屋を出た。

 *

はじめは展覧の間に行こうかと思ったロヴィーナだが途中で気が変わり、庭へと出てみることにした。
いくつかある庭の内、一番質素な庭。天使の噴水が中央に据えられた庭はロヴィーナのお気に入りだ。そこに行けば少しなりとも気晴らしができるかもしれない。

彼女を見るたびに嬉々としてお供につこうとする騎士たちをその都度追い払い庭へとやってきたロヴィーナは、噴水の縁に誰かが座っているのを見て少しだけ身構えた。
この城に出入りしている人間全員を知っているというわけではないが、見たこと無い男だ。
本を読んでいるがっしりとして体格のいい…金髪の男は、このあたりでは見ないような服装をしている。
彼女はせっかくの休息が邪魔されたような気分になり、そのまま立ち去ってしまおうかと思ったが、見たこともない男に遠慮をするのも癪だと一歩踏み出した。
庭は円形をしていて中央にこじんまりとした噴水があり、その周りをバラが囲んでいる。
座れるような場所は彼が座っている噴水の縁か、二人がけの丸テーブルのみ。彼女がくテーブルの方へと歩き出すと、本に目を落としていた男がふと顔を上げた。
端正といってもいい顔立ち。彼はなんとも美しいブルーの瞳をしていて、それと目があった瞬間ドキリと彼女の胸は高なった。
彼女はブルーの瞳に射すくめられたように立ちすくんだが、なんとか視線を引き剥がすと覚束ない足取りで椅子に座った。
そして速る胸に何事かというように手を当てる。
すると、
「失礼ですが」
男から声をかけられ、彼女はまた大きく胸をならした。
ロヴィーナはゆっくりと…彼と不用意に視線を合わせないように注意しながら振り返る。
「なんですか?」
「その緑のドレス…もしかして貴女がロヴィーナ姫ですか?」
ロヴィーナ姫。
この城にやってきてから誰もが彼女をそう呼ぶ。だが、彼女は未だにそれに慣れず、姫と呼ばれる度に“偽物”と揶揄されているようで胸が痛い。
「えぇ…ロヴィーナです…。貴方は?」
彼女が聞くと、男は傍に本を置き立ち上がると彼女の傍で片膝をついて跪いた。
「ご挨拶が遅れて申し訳ありません。私は隣国、ドイッチュラントのルートヴィヒというものです」
そうして彼女の手を取ると手袋の上からそっとくちづける。
「ドイッチュラントの?」
瞠目した彼女は、もしかしたら彼は国の賓客なのかもしれないと慌ててとなりの椅子を進めた。
彼女の勧めに従って正面の椅子に座ったルートヴィヒはちょうど通りかかった侍女にお茶を入れてくるように申し付けた。
その動作や物言いがまた堂々としたものだったので、やはり貴族かそれ以上の地位の人に違いないとロヴィーナは思い、町娘の時のような不躾が無いようにと心構えをした。
「是非あいたいと思っていました」
「私に…?」
「えぇ。ドラゴンに囚われながら決して希望を捨てなかった強く美しい女性だと聞きましたから、どんなに素晴らしい人なのかと」
「…そんな、一体誰がそんなことを…ッ」
カッと赤くなる頬を手で隠し「そんなのデマです」とロヴィーナは言い、それから「どうぞ敬語はよして下さい」と彼に申し出た。
「私はえらくもなんともないんです。ただこの城で養ってもらっているだけですから。どうぞ普通の言葉でお話になって下さい」
「ですが…」
「いいえ、是非そうしてください」
敬語をつかわれると、居心地が悪いのだというような事をロヴィーナが口にするとルートヴィヒは頷き、ちょうどやってきた侍女から紅茶のセットを受け取ると手ずからそれをカップに注ぎ入れた。
「では、どうか姫も俺に対しては普通に話して欲しい」
「それは…」
「“できませんか?”」
わざとらしく戻された敬語に困惑し、
「いえ…いい…わ。だけど、姫というのもやめて。私は姫じゃないもの」
つい拗ねたような言い方になるロヴィーナ。彼女を不思議そうに見やりながらルートヴィヒは紅茶の入ったカップを彼女の傍に置いた。
「どうしてだ?」
「どうしてって…」
彼女は問われてなぜか泣きたいような気持ちになった。
「どうしてって…姫じゃないから…」
ロヴィーナは目頭を抑えたい衝動をこらえ、カップを手にとった。
「何か事情があるようだな」
「…そうね」
本当はろヴィーナたち姉妹が姫でもなんでもなくただの町娘であるということは。知っているものは知っているが、一般的には隠されている。彼女は表立っては領内にある旧国の姫君だ。
ロヴィーナもそれとなく真実を口にすることを口止めをされていている。
その秘密を、この時…なぜか彼に言ってしまいたいような気持ちになった。
いや、なぜか…ではない。彼女はもう限界が近かったのだ。
一方的にお姫様に祭り上げられ、誰一人…妹にすら悩みを打ち明けることが出来ずにただ空虚に過ごす日々に限界を感じていたのだ。
だがだからといって何故初対面のこの男に…。
彼女自身がひどく動揺し、
「ごめん…なさい」
謝罪を口にして、滲んだ涙をこらえるように指を目頭に当てた。
「姫…ロヴィーナ?」
「ちょっとゴミが目に…」
彼女はルートヴィヒから差し出されたハンカチを目に当てると、ひどく乱れた胸の内を落ち着けるようにゆっくりと何度も息をする。すると彼のハンカチからは焚き染められたのであろう花の香りがわずかに香って、それが彼女の心を落ち着かせるのを手伝った。
「ドラゴンにさらわれてからずっと…情緒が不安定で…」
言い繕う彼女をルートヴィヒはじっと見つめ、「俺は…」と彼は重く口を開いた。
「この国には留学…というか、人質として滞在しているんだ」
「え」
「このとおり自由にさせてもらっているし、不自由はないが……監視下にあることは間違いなく、事があれば、俺は処刑される立場にある」
「…」
「だから…というのはおかしいかもしれないが、この国の人間には語れないような悩みがあるのならいつでも聴こう。…何もアドバイスできないかもしれないし、ただ聞くことしか出来ないかもしれないが…それでもよければ」
生真面目な様子でそう言った彼は、ロヴィーナと目を合わせると恥ずかしそうに目を泳がせコホンと小さく空咳をした。
「口はかたいほうだし…あー…無理にとは言わないし…もちろん自分の国に情報を渡すような愚行は…」
そう言いかけて、言葉を重ねれば重ねるほど野暮だと気づいたのか急に黙りこむと頭を掻き、「忘れてくれ」と頬を赤らめて言った。
ぽかんとあっけに取られていたロヴィーナだったが、彼の必死な様子、そして恥ずかしげに顔を赤らめる様子が、あまりにも可愛らしく思わずクスクスと笑ってしまった。
それは本当に久しぶりに自然に沸き起こる笑いで、それに気づいた途端、また涙がこぼれた。そんな彼女を見てまた慌てるルートヴィヒを見て、ロヴィーナは泣きながら笑った。

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