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神様が邪魔をする 03

見切り発車です。展開考えてない。

いい大人のくせにどんだけ泣いてんだよ。

自分で自分にドン引きする。

泣きすぎて腫れ上がってしまった重たいまぶたに冷やしたタオルを当て、リビングに行くと簡単な食事(朝食か昼食か迷うところだ)が用意されていた。
薄切りにしたベーコンとジャガイモもスープ、それから少し固くなったパン。
カプチーノも新しく入れ直されていた。
スープは以前にも彼が作ってくれたことのある料理で懐かしさを感じた。
「悪いな」
「いや」
彼は近くにホテルをとっているとの事だったが、俺がこの部屋に滞在すればいいと言うと彼は簡単にそれを了承し、しばらくはこの部屋にいることになった。
「ギルベルト…兄貴とは一緒じゃないのか?」
スープにスプーンを入れながら聞くと、彼は「あぁ」と答えた。
「兄さんは別口だ」
「その…今もまだ同じ仕事してるのか?」
聞きづらかったが、どうしても聞いておかなきゃならないと尋ねると、彼は少し間を置いて頷いた。
「そうか」
それは俺だって調べていたのだから承知の事だったとはいえ…ショックが無いとは言えない。やっぱり、彼は人殺しを生業にしているのか…。辞めろというのは簡単だが…。
「だが前のように派手なのは少ない。知ってるだろう?」
「…あぁ」
それは知っている。だが、それは名前が売れすぎたせい…もしくは上手くカモフラージュをしているのだと思っていたのだが…。
「兄さんと話し合ったんだ。もう少ししたらこの稼業からは足を洗うと…」
「本当か?」
驚く俺に、彼は嬉しそうに微笑んだ。
「あぁ。といってもまだ先の話だ。俺と兄さんはメジャーになりすぎてしまったからな。今すぐきっぱりとはいかない」
「あぁそうだろうな」
「俺にまともな生活をする権利はないかもしれないが…もう…」
「もう…なんだ?」
「いや、何でもない」
彼は後半を曖昧にごまかし、俺の仕事について尋ねてきた。
「俺は…あんまり変わっていない。相変わらず情報屋の端くれ…いや、端くれからはいくらか脱却したかな」
「それはかなりの自虐だな。お前の評価はすこぶるだと聞いたぞ。知りたい情報があると知り合いに聞いたら、一も二もなくお前の名が出てきた」
「誉めすぎだ」
「そんなことはない。だが、お前の名前が出て心配もした」
彼はそう言って表情を曇らせた。
「狙われることも多いんじゃないか?…こう言っては何だがここのセキュリティはザルだし…大丈夫なのか?」
「あぁ、そこらは平気だ」
全く問題はないというと、彼は不思議そうな顔をしたが、
「俺が死んで喜ぶ奴より、困る奴のほうが多いんだ」
そう言ってやると、彼はひどく感心したような顔をして頷いた。
「なるほど…」
中途半端な情報屋じゃ無理だが…まぁ多少なりとも自惚れていいというなら、俺はこの世界じゃグルと呼ばれる腕前だ。
俺が狙われたとしても、俺が殺されては困る連中が率先して守ってくれる。
俺を狙う奴は近くにはやってこないし、守ってくれるやつだって目立つことはしたくないのか近づいてこない。(ネットワーク上で俺に接触しようとしてくる蠅を除けばだが、それは自衛できる)
俺の近くは本当に平和だ。
「そこにお前がいれば鬼に金棒だ」
「それは確かに安心そうだな」
彼は苦笑してコーヒーを飲み、部屋を見渡した。
「仕事は此処で?」
「まぁ簡単なのはな。それで手が足りないときは“ケイ・ラボ”に行く」
「ケイ・ラボ?」
「あぁ、スパコンを使わせてくれる会社だ」
「へぇ。しかしそういうのは費用がすごいんじゃないか?」
「まぁな。だが俺は無期限利用の特等席があるから大丈夫だ」
「…すごいな」
驚く彼に俺は少し気分がいい。
確かにこれはちょっとした自慢だ。ケイ・ラボのスパコンは世界一を誇っている。
そこには6つの部屋があって(それぞれスパコンをつかえるようになっている)、そのうち3つが貸し出しされている。1時間の使用量は100万円。その内の1つ…ではなく、秘密の7室目が俺の専属のコンピュータルームになっている。何故そうなっているか…というのは、詳しくは説明しないがケイ・ラボと俺とは浅はかならぬ付き合いがあるのだ。
「今度見せてやるよ」
「いいのか?」
「コンピュータは使えるようになったのか?」
携帯すらろくに使えなかった三年前を揶揄ってやると、彼は「あぁ、まぁ」と額を掻いた。
「いや、無理だな」
「携帯くらいはつかえるんだろう?」
「あの時だって携帯くらいは使えた」
少しムッとして言うのがなんだか可笑しくて笑うと、彼は照れくさそうにそっぽを向いた。

 *

早速、ケイ・ラボにルートヴィヒを連れて行ってやりたいところだが、今日は目が腫れている上、彼からの頼みを聞く前に受けていた依頼を処理しなくてはならない。
空調の効いた部屋でマシンを立ち上げる。モニタは3台。目の疲れを軽減してくれる度の入っていないメガネをかけて仕事の開始だ。
ケイ・ラボにある俺の“枠”にアクセスし、同時に国立図書館へもつなぐ。
そして欲しい情報を虱潰しにリストアップさせ、ある程度はパソコン上にある仮想のエージェント(自作)に取捨選択させた後、あとは俺の目でチェック、めぼしいものはその場でまた再検索に入らせる。
何度も何度もふるいに掛け、そうして出てきた物を目を凝らして浚い、そうして此処からが俺のうでの見せ場だ。
「さーて、どうやってコマしてやろうか」
クラッキングは身持ちの固い女を懐柔するのに似ている。
俺は彼女から魅力的に見えるように精一杯おしゃれをして、言葉巧みに彼女の衣服をはぎ取るのだ。
ロールスロイスに、アルマーニのスーツに、フェラガモの靴。
甘い言葉に、甘いお菓子、甘い香水を嗅がせ、優しくボディタッチ。そうすれば…ほら。
彼女はもう丸裸。
股ぐら開いて「もう好きにして」と俺をお待ちだ。

いい気分でキーを叩いていると、ふと香ばしいコーヒーの香りが鼻をくすぐった。
「ん」と視線を動かすと、そこには三年間途絶えていたルートヴィヒからの差し入れがあった。
それを見た途端、俺はまた泣きそうになって…全くどれほど涙もろいんだと慌てて唇を噛んだ。

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