スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Full throttle 40-5

読み返してないけど…。

ケルベロスを未完成な封印を用いて召喚し、臭いを覚えさせた上で元凶へと遡らさせる。

それが玲治の立てた策だった。
曖昧模糊とした説明に首を傾げるバージルに、彼は「まぁ、大丈夫じゃないかな」と玲治はやはり適当な返事を返したのだが、バージルはそれで納得した。
玲治が“おそらく”大丈夫だと言うならば、“おそらく”大丈夫なのだ。
それで大丈夫でないとすれば、それはバージル自身に不足があったということだろう。
ならば彼の期待…とまではいかないが、それには応えなければならない。
それに「もしもの時は助けるよ」と言う言葉をバージルは信用する。
玲治は悪魔であり、必要とあれば…そしてそれが愉快だと感じればいくらでも“悪魔的”に振る舞うことが出来る男だが、愚弟や自分に対してはかなり誠実で信用が置ける…とバージルは思っている。それをバージルがダンテに言えば、彼は鼻で笑って否定するかもしれないが。
「通路については本当に平気だと思うよ。帰りもケルに任せて大丈夫。ただ…向こうではあまり気を抜かないで」
彼は唇を指でなぞりながら言った。
「ケルもあてにしないで」
「わかった」
ぐいと愛刀の柄を握って見せると、玲治はそれで納得したようだった。
彼はバージルに寄り添うケルベロスにアイコンタクトを送った。

 *

とろりと溶けた足元。
ぱちりと一度だけまたたきをした後、目にしたのは真っ暗な世界をバージルに背を向けてまっすぐに駆けていくケルベロスの姿だった。
硬質なドラゴンを思わせる長い尾をまっすぐに伸ばし、まるで獲物を狙うかの如く、弾丸のように走るケルベロス。
バージルはそれを目にした途端、一歩を踏み出し、その次の一歩で一気に加速した。
周りは真っ暗、足元も見えない。
それなのに、何故かバージル自身とケルベロスだけはスポットライトを浴びているかのようにくっきりと浮かび上がっている。
ぐん…ぐん…っと加速していくケルベロスに、バージルも足を速める。
すると次第に周りの空気が変わってきた。
それまで冷たく乾いていた空気が、じっとりと重みを増し、ねっとりと体に絡みついてくる。
そしてそこに少しずつ交じるのは悪魔独特の気配と…そして、血の香り…。
バージルがその臭いに思わず目を細めたその瞬間…闇の中から、突如血濡れた巨大な触手がバージルを襲った。
「クッ…」
咄嗟に刀に手をやったまではよかったが、抜くことはできない。
無数の触手は瞬く間にバージルを絡めとり、そして連れ去った。

 *

瞬間、気を失っていたバージルが目を覚ますと、彼は土の地面の上に横たわっていた。
ゆっくりと体を起こすと、すぐに引きちぎられた触手が目に入った。
赤黒い液体の上に横たわるそれは、まだ本体から引き離されてそれほど時間が経っているわけではないらしく、ビクンビクンと血溜まりの中で痙攣していた。
それをしばらく見つめて辺りを見渡すと、初めに目に入ったのは少し離れた場所で腹ばいになっているケルベロスの姿だった。
彼の口元は血に濡れており、荒く上下する腹の近くには触手が何本かのたうっていた。
ケルベロスには期待するなと玲治には言われていたが、どうやら世話になったらしい。
「助かった」
そう一言だけ告げて立ち上がると、バージルは改めて辺りを見渡した。

目の前には古い田舎風の家がある。
その背後には黒い森…そして辺りは草原になっていた。
空は雲が立ち込め…しかしどんよりと曇っているわけではなく黄昏時の日差しを反射して黄色い。
全てがセピアに彩られた風景は、一見のどか。だが、おかしなことに雲は天上に張り付いているかのごとく動かず、草原にはまるで生気が感じられない。家もまた、まるで古い墓地に立っているかのようにかび臭く、何者かがじっとバージルの方を伺っているような気配がある。
気味の悪い家をじっとバージルが見ていると、まるで誘いこもうとするように玄関の扉がひとりでギィっと軋んで開いた。
ケルベロスの方を見ると、彼は揃えた前足の上に頭をおいて動く気配はない。
どうやら彼のサポートは此処までのようだ。
バージルは、いってくると口の中だけでつぶやき、幽霊屋敷のようなその家に一歩踏み出した。

コメントの投稿

非公開コメント

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。