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25時(イレギュラー発生!)

枢軸
王道怪談ネタ。 怪談ラストもテンプレ的。
怪談本文はないです。

東洋の島国の夏。
昼間は抜けるような青空に大きな入道雲、ギラギラと輝く太陽、うるさいほどの蝉の声に風鈴の音。
夕方から夜にかけて少し涼しげな風が吹き始めるものの湿気は高い。
日本の家の庭にある草木の間からは虫の声、そしてすぐ近くにある公園の池からは蛙の鳴き声が聴こえるてくる。
日本の家に、ドイツとその兄、イタリア兄弟とともに滞在を初めて三日。湯上がりに浴衣を着るのにも少し馴れた頃。
ドイツが縁側に座り、板張りでぐでっとしている兄に団扇で風を送っており、その後にある居間ではイタリア兄弟が言葉のわからないテレビ番組についてあぁだこうだと文句(?)を言っている。
日本は…とドイツがふと視線を泳がせた時、ちょうど台所の方から日本がお盆を手にやってきた。
盆の上にはグラスに入った麦茶が人数分。そして、
「日本?それは?」
ドイツの目を引いたのは、真ん中あたりにくびれのある蝋燭と、蝋燭立てだ。
「なんだなんだ」
興味をしめして起き出したプロイセンに日本はやんわりと微笑み、イタリア兄弟にテレビを消すようにと言った。

「ねぇ何?何をするの?」
「皆様に私の家の風情を味わっていただこうかと…、さぁ、皆さん、向かい側に座ってください。あぁもちろん足は崩してくださって結構ですよ」
日本は横長の机の向こう側、縁側を背にする場所に四人を並べて座らせた。
ごく自然に並んだ位置は、日本から見て左からプロイセン、イタリア弟、イタリア兄、ドイツの順だ。
日本は四人が席につくと蝋燭立てに蝋燭をたてて、机に五つ立て口を開いた。
「日本では夏には怖い話をするのが習わしなんですよ」
「怖い話?」
「なんでだ?」
「怖い話をして涼をとるんです」
日本の言葉に四人は不思議そうに目を瞬いた。
「え?どうして怖い話で涼しくなるの?」
「怖い話をしても暑いものは暑いだろうに…」
「まぁそうおっしゃらずに。お付き合いください」
日本は四人に向け扇風機を回すと、蝋燭に火をつけ、障子を閉じ、電気をけした。
「わぁ、なんだかクリスマスみたいだね!」
「ふむ。これが風流ってやつか」
「あちぃぜ日本」
「本当に涼しくなんのかよ」
口々に言う彼らに、日本は百物語の説明を簡単にした。
「もちろん、百も話を知るわけはありませんし、今回は私が知り合いの稲川さんから仕入れてきたお話を五つだけいたしましょう」
「話が終わるごとに一つずつ蝋燭の火を消すんだな?」
「はい、すべての火が消えた時にはこの世にあらざるものが現れるそうですよ」
「そんな非科学的な…」
「いいじゃねぇか!楽しそうじゃねぇか!ケセセ」
「うん!楽しそう!日本早くやろう!」
「はぁ?まじかよ…」
乗り気なのが二人。そうでないのが二人。
日本は四人を一人ずつみやり、それからコホンと小さく咳をした。

「先ほども申しましたように、これは稲川さん…いえ、このようなお話の権威である稲川先生からお聞きしたお話です。ですが『お話』とは言いましてもこれは本当のお話。現実にあったことだとご承知ください」

日本の口上に部屋の雰囲気が明るく朗らかなものから一気に真剣なものへと変わった。
日本が声量をわざと落としたということもあるだろうが、四人はそれぞれ彼の声を聞き取ろうと身をわずかに乗り出し日本に集中した。

「まずは大学生四人組が夏のキャンプで遭遇した、ある奇怪な出来事についてのお話です。」

 ※

話の詳細については省略するが、日本の話は内容も去ることながら、日本の卓越した話術もあってまさに鬼気迫るものがあった。
ひたり…ひたり…と廊下を裸足で歩く何かの気配。
墓場から吹く生ぬるい風と線香の香り。
ぽたん…ぽたん…と天井からしたたるる水滴。
自分以外に誰もいないはずの部屋でシクシクと悲しく泣く女の声。
古い廊下を踏みしめるギィ…ギィ…という音。
闇の中からすぅっと浮かび上がる老婆。
ニィと鳴く黒猫の輝く金の目。
こっちにおいでと手招く老人のしなびた手。
打ち上げられた遺体にびっしりとついたフジツボ…。
そのどれものが恐ろしく、その光景はそれぞれの頭の中で何倍、何十倍にも膨らむ。
そして気温は変わらぬはずであるのに、蝋燭の火を一つ消すごとに体感気温はぐっと下がっていく。

日本が四つの話を消化したころには、気の弱いイタリア兄弟は寒気すら感じて震えており、非科学的なことは信用しないドイツやプロイセンですら表情を固くしていた。
4つ目の火を消し終えた日本は視線を伏せるようにして少しの間をおいた。
ちなみにたった一つになってしまった蝋燭は、もう半分以下に背を小さくさせている。
そして最後の話をする前に「いかがですか?」と四人に話しかけた。
「こ、ここ、怖いよ、日本~~~」
「こ、これくらいで怖がる俺じゃないぞッ!!!」
「っつか、日本話上手すぎだぜ、なぁヴェスト」
「あ、あぁ…日本にこれほどの話術があるとは知らなかった」
「ねぇ、二番目のおばあさんの話とかッ!」
「いうんじゃねぇ!馬鹿弟!!」
「俺はやっぱりさっきのが一番やばかったぜ!!」
「こら、兄さんも。まだ話の途中だ…」
四人の反応に、日本は薄明かりを浴びながらひっそりとほほえむ。
「気に入っていただけているようでよかったです。…では、最後のお話をいたしましょう」
日本の言葉にまたぐっと緊張感が増す。
そしてそれを煽るように日本は間を開け…それからふと日本は四人の背後に目を向けた。
「それはそうと…先程から聞こうと思っていたのですが……」


「貴方がたの後ろにおられる方…あれはどなたなのですか?」


日本の言葉とともにフッと最後の明かりが消え…

「ぎゃーーーーーーー!!!」
ドゴッ!
「ぎゃっ!!!」
「ちぎいぃぃぃいいい!!!」
バキッ!
「ぐぉっ!!!」

四つの大きな悲鳴が上がった。
脅かそうと思ってのことではあったが、あまりに反応の大きさに日本は慌てて立ち上がり、
「大丈夫ですか!!!」
部屋の電気をつけ…
「おや…?」
明るくなった部屋に両手を握り合ってブルブル震えるイタリア兄弟と、その両側で伸びているゲルマン兄弟を見て首をかしげた。
「え…?これは一体…?」
「え、ええええッ!プロイセン、ドイツ?!どうしちゃったの?!」
「っつーか…頭いてぇぞッ!!チギィ!!」
「そういえば、俺も頭がいたいッ!」
そんなことを言って自分の頭をさする二人を見て、日本はなんとなく事情を察した。
つまり…驚いた二人は同時に飛び上がり(?)その拍子に両隣のゲルマン兄弟に強烈な頭突きを食らわせたのだろう…。
「わーーー、ドイツゥ~、プロイセン、しんじゃやだーーーー!」
「ほ、本物の死体!こ、こえーーぞチギィィィ!!!」
大騒ぎをする二人を見て、日本は…まさかイタリア兄弟がゲルマン兄弟をノックアウトするなんて…と衝撃を受け、衝撃から覚めると同時に懐からカメラを取り出すとパシャパシャとシャッターを切り始めた。

ノックアウトされて目を回すゲルマン二人。二人を交互にゆすりながら泣きわめくイタリア弟、その近くでチギチギ泣くイタリア兄…とそんな四人をパシャパシャ怒涛の勢いでメモリに収める日本。
まさにカオス。
しかし、それはある意味…とても日本らしい夏の光景だった。

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