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025. クソ暑い季節とクソ熱い体育教師

カインは連日の暑さに完全にやられてしまったみたいだ。
セシルは後ろの席でぐっだぐだになっている親友を振り返り、下敷きで扇いでやりながらそんな風に思った。
そしてまた、そんな風になってしまっている親友の面倒を見ている自分がとても誇らしくなった。
「無理、もう暑い、死ぬ」
そんな風に言うカインに「死なないで」と声をかけ、近くの席から水筒をかっぱらって冷たいお茶をいれてやる。
するとカインはお茶を口に運び飲んでしまってから「違うんだよ」と言う。
「なぁわかるか?俺はあちぃんだよ、なぁ、血液が沸騰しかけてんだよ」
「うん。僕はどうしたらいい?」
「そりゃ決まってんだろ…あーあれだ」
あれあれ…そういいながら、カインはまたぐでんとなる。
「そっかー」
セシルは小さい子をあやすように言ってカインの髪を撫でる。
そんな事をすれば、いつもならすぐに払い落とされる…のだが、今日は元気が無さすぎるのか、手がぴくんと動いただけで手が払われる事はなかった。
それで調子に乗ってセシルはカインをごねごねと撫でまくるのだが、反応が返らない事にすぐに飽きてしまう。
こういうのは嫌がられるからこそ楽しいのだ。
カインにつられるようにシュンとしてしまったセシルは、しばらく飼い主にかまってもらえない子犬のようにカインを伺っていたが、それでも構ってもらえないとカインの腕をぐいぐい揺すり始めた。
その時点できっと彼はカインの世話をするという自分自身に課していた重要任務をポーンと投げ捨てている。
「カイン、カイン」
お願い起きて…いや、死なないで…とでもいうように肩をゆするカイン。
カインは「あー…うー…」と言いながらされるがまま…。
どうやら本当に参ってしまっているらしい。
「カイン、カインッ!」
「あぁ…ううぅ…」
遠巻きに彼らの様子を見ていたクラスメート達は、そろそろ止めたほうがいいのではないか…と心配そうにしている。
「カインってばッ!」
悲しげな顔をしたセシルが一際大きく親友の名前を読んだ時…
「若いくせに夏に負けるなッ!」
突然教室の入口からばかでかい声。
カイン以外の全員が声の方を振り返ると、真冬でも暑苦しいが、夏となると更に暑苦しい角刈りの体育教師が、無駄に白い歯をキランと輝かせて立っていた。
うえっとした顔をする面々に気づかず、「夏はうなぎを食うといいぞ!」とやかましく言った。
「冷たいもんを食い過ぎるからそんなことになるんだ!それにクーラーもだぞ!夏は暑いものだと決まってるんだから…」
「先生!」
セシルが言葉を遮って手をビシッと上げた。
「ん?なんだ?」
「先生、カインがぐでんぐでんになっちゃってるんです!」
セシルは哀れっぽく胸のあたりで両手を組み合わせて言った。
「どうしたらいいんでしょう?」
迷える子羊が真摯に助けをもとめている…と言った雰囲気に教師は一瞬魅入られるようにセシルを見、それからセシルに負けぬキラキラとした目を浮かべて「それはな!」と口を開いた。
「それは?」
「それは、マラソンだ!!!」
「「「はぁあああ???」」」
周りからは悲鳴が沸き起こるが、二人と若干一名は全く反応をしなかった。
「マラソンですか?」
「そうだ!こういう時こそマラソンをして、汗を出し、新陳代謝を促すんだ!!」
「凄い!!!」
「だろう?…ん?次の次はこのクラスは体育だな!じゃぁ、プールはやめて今日はマラソンにしよう!!!」
「「「はああああ???!!!!」」」
「素晴らしいです!先生!」
「だろうだろう!!!」
いつもならストップをかけるはずのカインは沈黙を守ったまま。
クラスメートたちは互いに顔を見合わせ、何か言えよと視線を送っているが…結局誰も口を開くことができず…

「嘘だろ…」
「まじかよ…」
「真夏にマラソンって…死ぬだろ」
「無理…絶対無理…」
「プールは?!ねぇ、プールは?!」

体育教師が出て行った後、それぞれ自分の境遇について嘆き叫んでいた彼らは…

「やったね!カイン!」
「…俺、具合悪いから帰るわ」
「あ、じゃ、僕も付き添うよ!」

約1時間後、理不尽という言葉の意味を骨の髄まで知ることになる。

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