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ゼロの夜想曲 13

決闘場だと指定されたそこは、ヴェストリの広場というらしい。
二つの塔の中央にあるこの中庭は昼間でもその塔が落とす影のために薄暗い。
普段は肌寒く人気がある場所ではないようだが、今日ばかりは違う。
決闘が行われるという噂を聞きつけたらしい、貴族どもがわんさと押しかけ熱気を帯びている。
中央に空いた円形の中に入ると、歓声だか罵声だかが周囲から浴びせられる。
あまり上品だとはいえないようなヤジには少々うんざりさせられる。
貴族というやつは、歴史の中でも、そしてここでも大概退屈しているらしい。
ローマ人だかが娯楽のために猛獣と奴隷を戦わせていたというが・・・その猛獣役に俺は選ばれた気分だ。
いや、観衆から見れば俺のほうが奴隷か。
ローブを取れだの、顔を見せろだののヤジ。
チラリと横に立っているルイズにどうするっというように目できいてみたが、彼女はそんなことには全く気付いた様子が無い。
真剣な顔で何事かを考えていて、ふいに目があったと思えば、
「やっぱり、謝っちゃいなさいよ」
等という。
何でそんなことをしなきゃいけないのだ。
冷たい目で見てやると、彼女はおどおどしたように視線を逸らす。
俺は彼女の背を小さく叩き、安心しろと言ってやった。

「とりあえず、逃げずに来たことは褒めてやろう!」
ギーシュの長い口上が始まった。
曰く、自分の実力も知らずに、このギーシュ様に、レディたちに恥を・・・
「なぁ、ルイズ、こいつアホなのか・・・?」
ボソリと隣に立つルイズに聞くと、彼女は疲れたような顔で言った。
「かなりね」
「あぁ、そうだ。一つ聞いていいか?」
「何?」
「決闘っていうのは、相手が死んだら終わるのか?」
「え?」
驚いたような顔。
「いや、だから、死ぬまで戦うのか?」
聞きなおすと、彼女はとんでもないというように首を振った。
「そんなことしたら、あんたも死刑になっちゃうじゃない!降参した方が負けよ!」
「なるほどね」
っと最大の疑問が解決すると同時に、ギーシュが挑発的な言葉を俺に浴びせたらしくワッと場が盛り上がった。
残念ながらその口上は聞き逃してしまったが・・・ま、いいか。
俺はルイズの肩を軽く後ろに押しやり、変わりに一歩を出た。

片手で薔薇の花を弄りながら余裕かます貴族。
「達者なのは口だけか?」
嘲笑うように言うと、思ったとおり、ギーシュは怒りに顔を赤く染めた。
「何・・・?」
「知ってるか?“弱い犬ほどよく吠える”って言葉を」
「・・・ッ!貴様!」
顔を真っ赤にして怒る。
トマトみたいだと笑ってやれば、彼はますます憤慨する。
飛び掛ってくるかっと思ったが、そうではなく彼は何を思ったか持っていた薔薇の花を掲げたのだ。
こいつダメダ・・・と一度は思ったものの、フイに風が吹き空気がざわついたことに僅かに俺は緊張した。
そうか・・・こいつ、魔法を使うんだっけ?
大きな力を持つようになってから少々俺は油断癖が出来ている。
いけないっと小さく自分をたしなめ、彼が何をするつもりなのかじっと見つめた。

男の掲げた薔薇の花。
まるで作り物のように綺麗な大輪の薔薇だ。
その花から一粒の滴・・・いや、花びらが一枚零れ落ちる。
ひらひらと舞う花びら。
それはゆっくりと重力に引かれ、落ちてゆき・・・・地面につく前に、突然甲冑を来た女戦士へと姿を変えた。
青銅の肌を持った女戦士。
召喚・・・ではない。
おそらく創造物だ。そう思っていると、ギーシュ本人がその正体を教えてくれた。
「言い忘れていたけど、僕の二つ名は『青銅』。青銅のギーシュだ」
まんまじゃねーか。
「従って、青銅の『ワルキューレ』がお相手するよ」
気障にウィンクしてみせるギーシュ。
それを合図に、ワルキューレと紹介されたそいつが俺に向かって突進してきた。

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