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ゼロの夜想曲 12

その事件(?)は、教室の片づけを終え遅い昼食を取った後に起こった。

食堂に現れたのが遅すぎたせいか一食分しか残っていなかった食事をルイズに譲り、その間暇だからと厨房を覗いていたらシエスタとかいう(平民の)メイドと知り合いになった。
ふと漏らした食事がとれなかったとの言葉に、彼女は親切にもまかない料理だというシチューを俺のために出してくれた。
それは・・・残念ながら俺の舌には何の味もしない、どろどろとした液体でしかなかったがとりあえずそれを腹に収め、その礼にと食事の終わった貴族どもにデザートを配ることにした。
大き目の皿にちんまりと載ったラズベリー色のケーキ。
昔とったナントカというやつで、何枚もの皿を一度に持ち上げるとシエスタが凄いと褒めてくれた。
単純に楽しそうに微笑む彼女に俺はほんの少し照れくさくなる。
こんなに単純に嬉しそうに微笑まれるのは久しぶりのことだ。
受胎前にバイトしていたホテルの給仕よろしく、客の後ろから丁寧に手を伸ばして子女たちの前にそれを並べていく・・・と、ある一角で貴族のガキどもがわいわいと喋っているのに気付いた。
話題は、金髪の気障ったらしい男の色恋について。
声がでかいので聞きたくなくても耳に入ってくる。
そいつは、やたらとフリルのついた時代がかった服を着ていて、胸のポケットには真っ赤な薔薇まで挿している。
きっと頭が悪いのだろうと思う。
かつての友人の一人にもやたらファッションに気遣う奴がいたが、金髪の男に比べれば随分とましだった。
そんなことを思いながら、もう一度厨房に引き返しかけたとき・・・
金髪の男のポケットから何かが零れ落ちた。
彼はそれに気付くことなく友人たちと喋っている。
落ちたものは、小さなガラスの小瓶。
中にはスミレ色の液体が入っていて・・・おそらく香水だと思う。
「おい、落としたぞ」
後ろから声をかけた・・・が、奴は気付かない。
いや、気付かないわけはないだろう。
彼の正面に座っていた友人はこちらを向いているのだから・・・とすれば無視しているのか?
その態度に俺はイラッときた。
無視されるのは嫌いだ。
俺は二度目に声をかけるを諦め、男の後ろで小瓶の蓋を開けた。
そして、何事かを喋っている男の頭の上でそれを逆さにしてやった。

「あ、その臭い!」
「なるほど!お前が付き合ってるのはモンモランシーか!」
「ははは、なるほどな!」
友人たちがはやしたて、それを金髪の男(ギーシュというらしい)が慌てて諌める。
すると、何処から現れたのかケティという女や、先ほど話に出てきたモンモランシーという女が出てきて・・・
なんだかよく分からないうちに、ギーシュは窮地に立たされたらしくしどろもどろしている。
はっきりしない態度に女二人の方がじれたのか、モンモランシーという女はワインの瓶を掴むと、俺を真似るように男の頭の上でそれをひっくり返し、ケティという女は“うそつき!”という台詞と共に去っていった。
残されたのは俺を含め男ばかり・・・ブツブツとなにやら言っていたギーシュはその腹いせというように俺を睨みつけ、そして指を突きつけて言った。

「決闘だ!」

途端、ワッと食堂が沸いた。
俺は突きつけられた指をまじまじと見つめ、まぁいいかと頷いた。
ギーシュはそれに満足したように鷹揚に頷き食堂を出て行く。
それに続く友人たち・・・と野次馬。
見送っていると、誰かが俺の腕を掴んだ。振り返るとそこにいたのはルイズで、困惑したような顔をしている。
「何だ?」
「何だ・・・じゃないわよ!何やってるのよ!」
「何って・・・なんだろうな?」
俺にさっぱりわからない。肩をすくめる。
「喧嘩売ったの?」
「そんなわけないだろう。」
多分。香水を頭の上に振りかけたのは喧嘩を売ったことにはならないはずだ。
「決闘なんて・・・・あなた・・・大丈夫なの?」
揺れるような瞳。
「心配してるのか?」
っと聞けば、きつい目でバカっと怒鳴られた。
やれやれ、この俺に馬鹿なんていうのはルイズくらいのものだ。
まぁいいさ。俺はなかなかに彼女を気に入っているのだから。
「ま、俺様の実力を見せてやるよ」
実力全てといわけにはいかないが・・・。
にやりと笑って見せるが、彼女はまだ止めるべきかどうかを考えているような顔をしていた。
もう少し信用してくれてもいいと思うんだがな。
俺は小さく息をついて、肩をすくめた。

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