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変わらないもののために 変わることなんてない

独ロマ 別れてる 支離滅裂な感じで。
整理して書くと長くなりそうなんで、あえて支離滅裂
いろいろわかんないかもしれない。
各個人で補完してくださいorz

それを欲しがったのは俺だった。
そして、それを手放したのも俺だった。

俺がドイツに別れを告げて52年の月日が経った。
52年の時間を長いと感じるか、それとも長いと感じるかは人によって…いや、国によって様々だろう。
では俺にとっては?と聞かれると…中途半端だと答えよう。
あいつを忘れ去るには短すぎて、やり直すには長い時が経ちすぎていて…中途半端。

俺はまだ…囚われている。

 *

弟からのメールは、『急遽上司から呼び出されて行けなくなった』というもの。
なんだ、人を20分も待たせておいて。
食べたクレープの代金は払わせるつもりだったのに、結局俺が払わなきゃいけないわけか。
ちぇ。
仕方がないので、金を払ってカフェを出る。
弟が見たがった映画だから、俺は一人じゃ見る気がしなくて、さてどうしようかとショーウィンドウを眺めながら歩く。
あぁ、あのマネキンのかぶっている帽子、結構イカす。
でも、似たようなの持ってたし、今回はまぁいいか。
どっからかピザの焼ける香ばしい臭いがする。食欲が刺激されるが、しかしお腹は減っていない。
あの店の壁をつたっているブーゲンビリアいいな。
だけど、あれじゃ家の中に陽の光がはいらないんじゃないかな…?まぁ、それも承知しての事なんだけど…。
「ふぁ」
ちょっと眠くなってきたな。だけどさすがに道端で寝るわけにもいかない。
それにこのあたりはあまり治安がよくない。
まぁ狙われるのは観光客ばっかりで俺みたいな地元の人間は狙われないんだけど…。
あ、あの女の子可愛いな……。
……………。
「そうだ…」
海を見に行こうか。
…なんて言い訳はだめだろうか。
俺は周りの人間に不信に思われない程度に小さく苦笑して、海への…いや、あの部屋への道をたどった。

 *

あの日、あの時…、“ほしいものはあるか?”と聞いたドイツに、俺は部屋を要求した。
ドイツとロマーノではなく、ルートヴィヒとロヴィーノとして会える部屋を。
二人だけの秘密の部屋を。
観光地にある海が見える素敵な部屋を。
彼は喜んでそれを俺に与え、俺達は何度も何度も…長い月日をその部屋で過ごした。
とてもとても幸せな日々を。
その部屋の鍵は…この通り。
まだ俺の財布の中に大事にしまわれている。
まぁ、もう何の役にも経たない鍵ではあるが。

海に、部屋に向かう足が重くなった。

あの部屋に行ったところで何になる?
―だけど、行きたい。
あの部屋で何をしたい?
―なにも。だけど行きたい。
あの部屋には何もない。
―そうだな。
それを確かめて絶望したいのか?
―かもしれないな。

どうでもいい。

行きたい。

希望をつないでいるのか?
―かもしれない。

どうでもいい。どっちでもいい。
ただ、行きたくなった。
この半世紀、一度として近寄ることの無かった場所に。
そこに待ち受けているのは99.99%の絶望。
だが、それでもいいと思った。
俺はきっと、きっと…打ちのめされたいんだ。

そして、また後悔を重ねる。

 *

俺達は上手くいっていたと思う。
そりゃ些細な喧嘩はあったさ、掃除の事とか、料理の事とか、仕事の事とか、弟の事とか…いろいろ。
だから、普通だったら別れるなんて選択肢は出てくるはずがなかった。
だけど…。
政治的な問題。
経済的な問題。
債権問題。
意見の食い違い。
両国間の険悪な雰囲気。
そして、近づいてきた第三国…。

ポキン っと音を立てて何かが折れた。

 *

そこまで回想して、俺は頭を振った。
その先は…半世紀経った今でも思い出すのが辛い。

前方に海が見えてきた。
水平線では、空と海が溶けあっている。
キラキラと反射する海面、ぽつぽつと浮かんでいるサーファーと、ヨット。
ここからでは見えないが、砂浜には水着姿の男女が多数日光浴を楽しんでいることだろう。
海に近づくにつれ、少しずつ洒落た店が増えていく。
そして、いくつも立っているホテル。
その中の一つ…。

「ふ…」

時代錯誤な大きな大きなホテル。
高さはそれほどでもないが、だだっ広い敷地を持つ中世の城を思わせる建物。
屋根にはガーゴイルが乗っていて、海がすぐ間近だというのに大きなプールがあるホテル。
中にはカジノや、劇場だってある。
あの時から時が止まっていたかのような…。

入り口近くで少しだけ迷う。
だけど、結局歩き出す。

マゾヒストなつもりはないんだけれど。

あの頃は、いつだって弾んだ気持ちでこの敷地を歩いていた。
機嫌が悪かった時なんて一度もなかった…なんてことはさすがに言えないけれど…でも、今のような気持ちでフロントに歩いたことは一度として無かった。
エントランス、受付を無視してまっすぐにエレベータの前に立つ。
ホテルの中には、いくつかの施設が入っているし、泊まり客じゃなくても中に入ることはできるから、誰も俺に目をとめるやつなんていない。
みんな楽しそうだ。
俺の心とは対照的に。
箱の中に入って少しの間指を彷徨わせて、目的のボタンを押す。
このホテルは、一部マンションのように販売もされていて、あいつが俺にくれたのはその部屋の中の一室だった。
中はマンションと変わらない。
5LDKで、一つ一つの部屋はかなり広い。
そしてリゾートっぽぃつくりをしているから、かなり贅沢な感じがする。
一時はずっと入り浸っていたこともあった。
そんなだから、スペインや馬鹿弟に何処に行っているのかと心配されたこともあった。
それと…「おかえり」なんてあいつを迎えたこともあったっけ。

箱から出て、俺は部屋に向かう。
もうきっと他の誰かにわたってしまったであろう部屋に。
ふと他の部屋の扉を見ると、もう古い鍵は使われていなくて電子キーがその役目を担っていた。
まぁ、そうか。
あたりまえだよな。
あれから半世紀も経っちまったんだ。
軽いジャブを食らった気分で、突き当たりの部屋に向かう。
部屋には無味乾燥な四桁の数字。
その金文字をじっと見つめて…
「れ?」
視線を落とした時、その扉のキーだけ旧式のものであるのに気づいてドキンとした。
まさか。
だけど。
財布の中で半世紀以上にわたって“肥やし”に身をやつしていた鍵を取り出す。
掌に乗せて、手がぶるぶると震えているのに気づいて握りしめる。
期待するな。
期待は絶望を深くするだけだ。
だけど、もしかしたら、もしかしたら…と思う気持ちを止められない。
握りしめた手をそっと開き、鍵穴へと向かわせる。
鍵は上手く入らずガチガチと神経質な音を立てる。
それでもなんとか入れて、汗ばんだ手で二度滑りそうになって鍵を…回した。
そう、鍵は回ったのだ。
ガチンという音と共に。
俺はもうそれだけで泣き出しそうだった。
目の奥が熱くなって、鼻の奥がツンとして、「はっ」て熱くなった息を吐いて。
もう逃げ出したい。
だけど、あと少しだけ。
怖い物みたさでノブを握り、中に押し開くと…

「うそ…だろ……」

中は、あの日のまんまだった。
ほんとうにあの日のまんま。
時がとまったみたいに。
ここはホテルだけど、個人宅でもあるから、ホテルマンは頼まれない限りは部屋の掃除には入らないはず…。
なのに…どうして…。
そのままに置かれた気に入りのソファと。
使っていた部屋用のスリッパが昔のままに置かれている。
テーブルの上には読みかけの本が伏せてあって…古くなったテレビが待機状態になっていた。
コートラックにはいつかのように背広がかけられていた。
色あせてしまったカーテン、だけどその向こうに見える海はそのままで…そして…
「なんで…」
……コーヒーの香りがする。
あいつの気に入りの豆の香り。
まるでついさっきまであいつがいたみたいに…。

部屋の景色がじわりと歪んだ。
嘘だ。嘘だ。嘘だ。
信じない。信じない。信じない。
こんな都合のいいことがあるはずがない。
これは幻想だ。夢だ。妄想だ。
今に現実が俺の肩を叩いて、そして絶望に突き落とすに違いない。
そうだ。そうに違いない。
だから止まれ、止まれ、止まれ。
涙よ止まれ。
胸の高まりよ、おさまれ…。

頭を抱えてうずくまると、しばらくして背後の扉が開いた。
驚き振り返った俺は、そこにいた人物にまた驚いた。
心臓が止まるかと思うほどに。
そんな俺を彼は見下ろし、美しいブルーの瞳を細めて優しく微笑み、そして口を開いた。

「ずいぶん遅かったな。待ちくたびれたぞ」

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