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2-1=0(比翼連理) 06

午後にはドイツが屋敷に戻る。
そんな知らせを持って馬に乗りやってきた使者は、しかし屋敷に入る前に昏倒してしまい、役目を果たすことはできなかった。
倒れた使者の額には大きなたんこぶが出来ており、その傍には黄色い積み木のおもちゃが落ちている。
その積み木を小さな手が持ち上げ、そして使者は狼を思わせる真っ黒な犬によって屋敷の裏…人気のない倉庫の裏へと人知れず運ばれた。



いつもは屋敷に入ると待ち構えているはずの馬丁の姿が今日はない。
それどころか、主人を迎える為にそわそわとしているはずの屋敷もしんとしている。
ドイツは一緒に帰ってきた使用人に馬を渡し首を傾いだ。
もしかして使者の知らせが届いていないのだろうか…?…だとすれば、帰るとしばらくはバタバタするのか…。
そう思うとドイツは少し憂鬱になった…が、屋敷のすぐ前まで来て玄関先にちょこんと座っている白いものを見て表情を変えた。
白いワンピースの服をきた見事な銀の髪に紅玉の瞳を持つ小さな子ども…言わずもがなドイツの弟であるギルベルトだ。
「ギルベルト!」
ドイツが駆け寄り、すくいとるようにギルベルトを抱き上げると、彼は赤い目をきらきらと輝かせ嬉しそうに笑った。
「あたったー!」
「あぁ、ただいま、ギルベルト。いいこにしていたか?」
ドイツが額にキスをして尋ねると、ギルベルトはもちろんだというように(ぬけぬけと)コクコク頷いた。
「それにしても…玄関に勢揃いしろ…とまでは言わないが…出迎えはお前だけか」
ドイツが苦笑すると、そのドイツの服の裾を何かがツンツンと引っ張った。ドイツが視線を下げると、そこに居たのはドイツの…いやドイツとギルベルトの忠実な犬であるシュヴァルツが自分を忘れるなというように尻尾を振っていた。
「そうか、お前もいたか」
ドイツが嬉しそうに目を細め、シュヴァルツの頭を撫でてやると、シュヴァルツはキューンと可愛らしく喉をならした。
「いい子だ。ギルベルトの面倒を見てくれたのだろう?お前にはいい肉をやらないとな」
そう言いながら玄関の扉を開けると…やはり、というか当然のように使用人たちの姿はない。それぞれ思い思いの場所で仕事をしているのだろう。
誰か…と人を呼ぼうとしたドイツだが、その前に首のスカーフをギルベルトがくんと引っ張って彼の注意を引いた。
「ん?」
ドイツがギルベルトを見ると、彼はなんだか恥ずかしそうにもじもじとしている。
こんな仕草はとても珍しい。
「どうした?あぁ…もしかして俺が汗臭いからか?それともトイレにでも行きたいか?」
「あ、あー…うー…」
近頃、ようやく言葉らしきものの断片を覚えだしたらしいギルベルトは、何か言葉をだそうというように口を動かし、そして…
「あー…た?」
発音を確認するように声を出す。
「ん?」
「あーた!」
「何だ?」
「ふあーーた!」
「ふぁ…」
ふあーた…ふぁーた…ファーター…お父さん?!
「なっ……」
ドイツはギルベルトの言葉に驚いた。
「それは俺のことか?」
恐る恐る聞くドイツに、ギルベルトは「ふぁーた、ふぁーた」と言いながらバシバシとドイツのたくましい胸を叩く。
「俺は…お前の兄のつもりだったんだが…」
少しばかり困惑するドイツだったが、
「ふぁーた!ふぁーた!」
目に入れても痛くないと思っているギルベルトに父と呼ばれて嬉しくないわけはない。
「ふぁーたぁ!」
褒めてくれというように「ふぁーた」を繰り返す子に「よく出来たな」と言い、額にキスを送ると、ギルベルトは「きゃーー」と甲高い歓声を上げて手をパチパチと叩いた。

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