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馬鹿な取り引き

吸血鬼ものがかきたくなった
とりあえず書きたい分だけ。

フランシスはゆっくりと女から離れ、ほんのついさっき命を失った彼女を見つめた。
もともと肌が白く儚いような女だったが、死んでしまった彼女はさらに白く透けるようだった。
首元の噛み後が痛々しい。苦悶に歪んだ顔を穏やかなものへと整え、そうして大木に寄りかかるように寝かす。
するとそれまで黙って様子を見ていたアーサーが気づけとばかりに気配を高めた。
「終わったか?」
「あぁ終わったよ」
フランシスが返事をすると、アーサーはどこかへ電話を掛け始めた。
きっと部下たちに死体の処理をさせるのだろう。
フランシスが胸元からハンカチを取りだし、スカーフ変わりに細い首に巻いてやる…と、
「フランシス兄ちゃん、アーサー!」
草木をがさがさと掻き分けて、彼らの弟分であるフェリシアーノがやってきた。
その瞬間、重く立ち込めていたそこに涼風が吹いたようで、フランシスは少しだけ胸が軽くなった。
「フェリシアーノ」
フランシスが声をかける横で、電話をかけていたアーサーは五月蝿いとばかりに背を向けた。
「大丈夫?フランシス兄ちゃん」
「ん?あぁ、平気だ」
そうしてわずかにフランシスがほほえみを浮かべると、心配そうな顔をしていたフェリシアーノの顔が安堵するように微笑んだ。
「よかった」
「そっちはどうなんだ?フェリシアーノ」
「うん。今、兄ちゃんとアントーニョ兄ちゃんが説明してくれてる。混乱してるみたいだけど、大丈夫だよ」
「そ…か」
男にしては長めの髪を耳にかけるフランシスをフェリシアーノはじっと見つめ何か言いたげな顔をした。
「あ…の…ねぇ」
「ん?」
「やっぱり…今回のも……?」
震える声で問うフェリシアーノにフランシスはそっとうなづいた。
「あぁ…」
「どうしてこんなことになっちゃったんだろう」
「それを俺達が今一生懸命調べてるんだろう」
話を終わらせたらしいアーサーが、腕にかけていたコートを羽織りながら言った。
「ったく、面倒ばっか掛けさせやがって…」
苦々しくアーサーの目には怒りが燃えている。
「おかげで上じゃアルフレッドとマシューの処分まで考えてるって話だ…ったく、ふざけんじゃねぇよ!」
ガツンっと大木に腕を叩きつけたアーサーは、死んだ女をチラリと一瞥した後、チッと舌打ちをするとまたどこかに電話を掛けながらその場を去った。
「ねぇ…フランシス兄ちゃん」
「ん?」
「きっと…きっと訳があるんだよね?だからこんなことするんだよね?俺達が嫌いだからこんなことしてるんじゃないよね?欲望にまけちゃったからこんなことしてるんじゃないよね?」
必死に言葉を紡ぐフェリシアーノ。フランシスは手を伸ばして彼の頭をくしゃくしゃっと撫でた。
「…あぁ、そうだろうな。でもな、フェリシアーノ。わかるだろう?どんな訳があったってこんなことは許されることじゃない」
「だけど……ねぇ、一体どうしてこんな風になっちゃったのかなぁ?」
べそっと泣き出したフェリシアーノをフランシスは優しくだきよせ、「そうだな」と悲しくつぶやいた。

 *

翌日。
彼らの本部にある第会議室には、ほぼ全ての職員が集められていた。
正面には大きなスクリーンが張られており、前の方にはアーサーをはじめフランシス、アントーニョといった階級の高い捜査員が腰をおろしている。
そうして時間になると、アーサーがまず簡単に挨拶し、次に本田にマイクを譲った。
年齢不詳の小柄な東洋人は、ひょこひょこっとした特徴的な歩き方でマイクの前に立つと、部屋の入口のあたりにいる職員に目配せし部屋の照明を落とさせると、パソコンの画面をスクリーンに映した。
「すでにご存知とは思いますが、昨夜、****街の***邸の庭で被害者が出ました」
本田が言うと、画面には生前のころにとられた昨夜の被害者の写真が映される。
「被害者の名前は、アイリーン・クラマー。年齢は24歳…」
本田は淡々と被害者の情報を確認していく。
それが終わると、次にスクリーンには死んだ彼女の姿が映った。
木を背にした彼女の首にはフランシスのハンカチが巻かれている。
「こちらに話が来たことからもお分かりとはおもいますが、彼女には吸血痕があり、直接の死因は失血によるショック死です」
画面が切り替わり、今度はハンカチがとられた彼女の痛ましい首もとがアップに映される。
その瞬間、捜査員たちからざわつきが起きたが、目をそらすものはいなかった。
「吸血痕から見ての通り、かなり手慣れたものだと思われ…フランシスさん、私の鑑定の結果…加害者は…ギルベルト=バイルシュミットと断定しました」
ギルベルトの名前が出ると、捜査員たちから先程よりもいっそう大きなざわめきが起きた。
そのざわめきの間に本田は何度も自分を落ち着かせるように息をつき、唾をゴクリと飲み込んだ。
「…これにより…ギルベルト=バイルシュミットによる犯行は7件目となります…。前回の犯行から一週間と経過しておらず、明らかに…」

本田の報告が続く中、アーサーは隣に座ったフランシスの様子がおかしいことに気づいて「おい」と声をかけた。
「大丈夫か?」
「…ん?あ、あぁ…」
フランシスは微笑んでみせたが、それはなんとも頼りないものでアーサーは眉を潜めた。
「昨日“潜った”のが響いてるんじゃねぇか?」
「…あぁ。少し…ね」
「お前…報告に上がってたの以外に妙なもんみてんじゃねぇだろうな?」
「妙なものって?」
極自然に帰された言葉。
だがフランシスとは付き合いの長いアーサーはそこにほんの少しの違和感を嗅ぎとる。
「ふぅん…まぁいい。とにかく顔色が最低だ。お前は部屋に戻って寝てろ」
「えっ、いいの?」
心底驚いて見せるフランシスにアーサーは舌打ちをした。
「あぁ、今のうちに休んどけ」
「今のうちってのが気になるけど…ありがたく休ませてもらうよ」
本田の報告の邪魔にならぬようにフランシスは静かに席をたち、隣の席に座っていたアントーニョの肩をぽんっと叩いて挨拶をすると部屋を出て行った。
アーサーはスクリーンに向き直り、そこに映った赤い目の元同僚を見てペンをガリッと齧った。

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