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2-1=0(比翼連理) 03

赤ちゃん 完全捏造のバイエルンがいる

『はいはい』を覚えてから機動力がぐんと増したギルベルトは、今や絶好調だった。
「ぷっ、ぷっ、ぷっ、ぷっ」と、おかしな調子をつけながらおしりをフリフリ広い屋敷中を歩いて回る。
本当に一体どこからそんな体力が湧いてくるのか不思議なくらいで、使用人が目を離した隙に、ある時は調理場に、ある時は厩に、ある時は洗濯場にと屋敷のあらゆる場所に入り込んでしまう。
そして絨毯の上で粗相をしたり、花瓶を倒したり、階段からゴロゴロ落ちてみたり、犬の尻尾を引っ張ってみたり、使用人のズボンを引っ張ってこけさせたり、ミルクをひっくり返したり、迷い猫と喧嘩をして勝ったり、大事な地図を破いたり…大活躍。ついこの間はオーストリアが大切にしていた楽譜を破り、ヴァイオリンの上で粗相し、オーストリアを泣かせるという武勲まであげている。

そんな、なかなかに将来有望に思えるギルベルトだが、今は腰あたりにベルトを通されている。ベルトにはリード変わりのヒモを通され、その端はオーク材の大きなテーブルの足に結ばれている。
つまり犬のようにつながれており、行動が著しく制限されている。
現在彼が動ける範囲は半径が1メートル半。それが気に入らないのか、先程から「ぷっ、ぷっ、ぷっ」となんとか大きなテーブルを引きずろうとするのだが、残念ながら彼の力ではピクリとも動かない。
無駄な努力を重ねるギルベルトの近くの椅子には男が一人座っており、本を読んでいた。
貴族の正装をしたなかなかに見目麗しい青年、彼の名はバイエルンという。
ドイツにギルベルトの面倒を見て欲しいと頼まれたバイエルンは、一目でギルベルトの凶暴さを見抜き、使用人はその立場から出来なかった"リードをつけておく"という手段を容赦なく行使したのだ。
優雅に本を読む青年は、しかし…
「ぷっぷ、ぷっぷ、うるせぇな!!!」
見た目ほど穏やかな性格ではなく、ぷっぷっぷっとずっと言っているギルベルトにしびれを切らして本を床に叩きつけた。
すると…
「ぐへッ!」
すかさずギルベルトの手から放たれたおもちゃのブロックが、彼の額に命中した。
額を押さえてバイエルンがキリキリと目尻を上げて、ギルベルトの方を見ると…彼はまた「ぷっぷっ」と言いながらおしりをフリフリしているところだった。
そのおむつで膨れた尻を蹴っ飛ばしてやろうかと衝動的に思ったが、バイエルンはなんとかその衝動を大人の自制心で抑えこむ。
まだコイツは生まれたてなんだ、そんなやつの挑発になんかのるなんてバイエルンの名が泣く…云々。
じっと自分の心を落ち着かせようとするバイエルンの耳に聞こえてくる「ぷっぷっぷっ」。
バイエルンは「ぐあっ」と頭を抱えて叫んだ。
「うっっっせぇぇぇんだよ!このガキ!なんなんだよそのプープーっていうのは!てめぇはプープー星人か!」
…かなり大人げない。
完全に挑発にのっている。
「ぷっぷっ!」
「ハッ!てめぇの言葉なんかわかんねーんだよ!悔しかったら人間の言葉しゃべってみやがれ!」
「ぷっ」
すかさず投げられるアヒルのおもちゃ。
それをすかさず避けたバイエルンだったが…
「そんな手に二度もひっかか…ぐぁっ!」
その時にはすでに第二投がギルベルトによって放たれていた。
狙いもバッチリ。
同じ場所に二度も打撃をくらったバイエルンの額は赤くなっており、それを見てギルベルトは手を叩いて喜ぶ。
「こ…の、クソガキ!!!マジぶっころす!!!」
頭が沸騰したバイエルンはギルベルトの腰辺りを抱え上げ、そのまま窓から放り捨てようとして…
「うぉ…ッガッ!!!」
ギルベルトからのびたリードを忘れていたせいで、つんのめり…体勢を崩すと窓の枠にしたたかに額を叩きつけた。
目の前にはきんきんきらきらお星様…。
「い、いってぇぇぇぇぇぇえええ!!!」
そのままギルベルトを放り出し、あまりの痛さにゴロゴロと床で悶えるバイエルン。
その間抜けな事態にきゃらきゃらと笑ったギルベルトは、すかさず止めをさすべく三角の積み木を手にとったが…

「…ずいぶん仲良くなったんだな」

唐突に掛けられた声にはたと動きを止めた。
ギルベルトがゆっくりと振り返ると…そこには、数日家を開けていたルートヴィヒの姿が。
ギルベルトは保護者の姿をたしかめると「ふぁ」とおかしな声をだし、積み木を放り出し、そして今までピクリとも動かせなかったはずの大きなテーブルを引きずってルートヴィヒに突進していった。

…ちなみに、ギルベルトの放り出した積み木は、当初の予定通り見事にバイエルンに止めをさしており、バイエルンは夕飯の時間までたっぷり眠ることが出来たという。

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