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亀裂

なんだか悩んでいるようだったので「どうした?」と話しかけると、彼は難しい顔をしたまま俺を見た。
そして、
「俺、あんたのせいで日本語能力おかしくなったみたいだ」
と、変な言いがかりを言ってきた。
たしかに俺は日本語なんてわざわざ覚える気がなくて、母国語で終始通していて…で、玲治もいつの間にか俺の国の言葉を悠長に話す様になったが…
「マネカタどもとは普通に日本語でしゃべってるんだろう?」
そう、マネカタどもとは日本語で彼は会話をしていた。(ちなみに悪魔たちは、悪魔語としかいいようの無い言葉で、日本語でも俺の国の言葉でも普通に通じる)
言いがかりをつけるな、と言ってやると彼は不満そうな顔をした。
「だってさ…なんか話が通じないんだよ」
「マネカタとか?」
あいつらは不完全なやつらだからそういう事もあるだろうと言うと、彼は違うと首を振った。
「じゃなくて、祐子先生だよ」
「ユウコ…?」
誰だったか…と考えて、間もなく思い出したのは氷川の片棒を担いで、東京を受胎させた女の事だ。
「話したのか?」
「うん、少し前にね」
「なんだって?」
「だからわかんない」
彼は首をかしげた。
「多分日本語なんだけど、わかんなかった」
「はぁ?」
どういう意味かと聞いてみるが、彼にもよくわからないらしい。
「聖との会話も、ちょこちょこわからなかったんだけど…祐子先生のは全くわからなかったんだよね」
「日本語…だったんだよな」
「多分」
多分っていうのが分からない。
詳しく聞いてみると、単語がバラバラに聞こえていて…そして、時々テープを逆回転させたような感じの音が聞こえたんだそうだ。
「狂ってんじゃないか?その女…」
まぁこんな世界じゃしょうがないかもしれないが…というと、玲治はそれは違うというように首を横に振った。
「多分違う…なんていうか…本当に理解できないんだ」
「だから狂ってるんだろう?」
「違う…そうじゃなくて…」
えっと…と言いながら、彼は言葉を探すように視線を泳がせた。
「なんていうか…違うんだ。たしかに同じ土俵にたってるんだけど…触れられない…みたいな」
「幽霊か?」
「そういうんじゃなくて…えーっと…ベクトルが違う?みたいな?」
疑問形で言われても俺がわかるわけがない。
俺は肩をすくめた。
大体ベクトルってなんだ?
どういう意味で使っているんだ?
俺には玲治の言葉こそ意味不明だった。
彼はそれで俺に伝えることを諦めたようで、苦笑しながら「まぁいいや」と言った。
そして、「多分煌天が近かったから…その影響だと思うよ」と結論を出した。
それはたしかに有り得そうな事だったので俺は納得し、それから別の話になってしまったのですぐに“日本語がわからない”なんて話は忘れてしまった。

それは後々にずいぶんと後悔することになるのだが…もちろんこの時の俺はそんなこと分かるはずもなかった。

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