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知りたいような、知りたくもないような 04

(独)にょ仏←英
これでおわり 話が整理ついてない…グチャグチャ
拍手してくださった方、期待に添えずごめんなさい。

フランシーヌが突然の腹痛を訴えて約一時間後…。

彼女の寝室から出たルートヴィヒは、廊下に置かれた椅子に座り項垂れているアーサーを見て顔を強ばらせた。
がっくりと全身の力が抜けたアーサーからは、先程の狂気は去っており、今はただ打ちのめされ、半ば自失している。
ルートヴィヒはアーサーのすぐ前に立ち、彼の頭をじっと睨み手をギュッとにぎりしめたが…やがため息とともに身体の力を抜くとアーサーの隣の席へと腰をおろした。
ルートヴィヒの胸の中では、あらゆる感情がぐるぐると回っていて整理がつかない。
しばらくじっと静かに黙り込んでいたが、やがてゆっくりとルートヴィヒは口を開いた。
「…彼女は無事だ。子供も」
それほど大きくもない声にアーサーはビクンと体を震わした。
「…そうか」
「がっかりか?」
怒りを滲ませるルートヴィヒ。アーサーはゆっくりと首を横に振る。
「……いや」
自嘲を含んで言う彼に、ルートヴィヒはまたぐっと拳を握りしめた。その拳がブルブルと怒りに震える…が、やはりそれは振り上げられる事無く力を失った。
「本当なら…今すぐにでもお前を殴り殺してやりたいところだが…やめておこう」
「何故?」
「今回の件は一概にお前だけが悪いとは言えないからな」

そしてルートヴィヒは話しだした。
アーサーが知るべきこと、そしてルートヴィヒが語るべき事を。

ルートヴィヒは今でこそ医者という一端の肩書きこそ持っているものの、元は孤児。しかも、詳しくは調べていないが、彼が捨てられた事の影には両親の犯罪があった。
それから彼は苦労して…苦労して、努力に努力を重ね…ようやく医者になった。
そんな彼とフランシーヌが出会ったのはさるパーティで気分を悪くした彼女をルートヴィヒが介抱してからのことだ。
それから紆余曲折はあったものの…結局、二人は今の形に落ち着くことにした。
何故、そうなったのか…何故この形でなくてはならなかったのか…
「…そもそも俺の身元が不確かすぎるしな…。お前の言うように彼女の財産だけが目当てだと言われることは重々承知している。それは彼女も分かっていることだろう」
いくら違うと言っても、どれほどの人間がそれを信じるだろう。
身分違いの愛は得てして双方を不幸にする。
それを彼らはわかっていた。
「結婚したいという気持ちはないではなかった」
いや。結婚したいと望んでいた。
だがルートヴィヒ自身が抱える過去やコンプレックス、それに彼女と自分との立場の違い…そんなものが、一緒になることを許さなかった。
「何度か別れようとしたこともあったが…」
それにはお互いに依存しすぎていた。

「あいつらしい」

話の途中でぽつりとアーサーがこぼした言葉にルートヴィヒは振り返った。
アーサーはいつの間にか顔を上げており、泣き出しそうな顔をして彼女の寝室の扉を見ていた。
「あいつは軽そうに見えて…まぁ実際軽いところも多いんだが、本気になったら…一途で…」
「……あぁ」
「あいつは…私生児として産みたい…そういったんだろう?」
「……そうだ」
「あいつらしい」
アーサーはもう一度そう言うと、泣きそうな顔で笑った。
「あいつはどこまでも女だからな…」
アーサーの言葉の意味はルートヴィヒには正確にはつかめない。
だが彼のいう“どこまでも女”であるという言葉は、フランシーヌにどこかしっくりとくる言葉だった。
若い魅力的な男の間を、ひらひらと舞う浮気な蝶。
誰もが手にいれようと手を伸ばすが…彼女は誰の指をもすり抜けて、魅力的なほほえみを浮かべながら信奉者たちを振り回す。
だが、生涯にただ一人彼こそと決めた男に関しては、その態度を一変させ情熱的に自ら近づき、口説き、必要とあれば泣いてすがりついてさえしてみせる。
そんな女だ。
アーサーは涙をこぼしそうになって、眉間をぐっと指で揉んだ。
その情熱を向けられるのが自分であったなら…そうであったなら…。
「……俺は彼女の主治医として彼女の傍にいるということで自分を納得させ…そして、彼女は私生児として子どもを生むことで納得したんだ…」
そうしてつながり続ける事を。
「納得なんてしてねぇだろう」
「…あぁ、だが、それで折り合いをつけたんだ」
結婚しなかったからといって離れるわけではない。
だが結婚という手段を二人は取ることができない。
だから苦肉の索として、そういう手段を取った。
ずるいかもしれないが、そうやってルートヴィヒは自分を守り、また彼女を守った。
そしてまた彼女もそれを分かっていて受け入れ、また彼が離れぬように人質のように子どもを取った。
「……貴方には先に知らせておくべきだったんだろうな…」
そうは言うが、今日の今日までアーサーの存在を知らなかった。
それを言うと、アーサーはやはり悲しそうな顔をしながら小さく笑った。
「だろうな…」
「彼女は妊娠してから忙しくて…」
「いい」
ルートヴィヒのフォローをアーサーは遮る。
「わかってる。あいつは俺に知られたくなかったんだと思う」
認める事は辛いが、それが事実だ。
「仕方ないさ。ただでさえ事態がこんがらがってんだ。そこに俺が出ていけば、ますます事態がこんがらがる…いや、違う。あいつは俺が出て来られると、お前が離れるんじゃないかと思ってたんだな……」
育ちも家柄も彼女には釣り合うアーサー。しかも幼なじみだ。
そんな男が出ていって彼女に求婚すればルートヴィヒはどう動く?
自分は貧しい出、両親はおそらく犯罪者…苦学して医者になったものの、実質的にはなんにも持っていない男と…遡れば有力な貴族にたどり着く、家柄も申し分なく、現在の資産も豊富な幼なじみの男…。
彼女は迷わないだろう。彼女は一度こうと決めてしまうと一途だ。梃子でも動かない。
だが、男の方はどうだ?世間はどう思う?アーサーを含めた彼女の信奉者は…?
保険としての子ども…といってしまえば、言葉が悪いが…籍を入れることが出来なかった彼女はそれでもルートヴィヒを引き止めるには足りないと感じていたに違いない。
だから絶対にアーサーをルートヴィヒに合わせたくなかったんだろう。
彼が自分から離れないという確証が得られない限りは…。
その狂おしいまでの執念を愛おしいと思うか、それとも恐ろしいと感じるかは人ぞれぞれだろうが、アーサーはそれを羨ましいと思った。
自分もそんな気持ちで彼女に思われたかった…。
しかし…フランシーヌは選び、そしてアーサーは選ばれなかった。
「俺が…いくら頼んでもダメなんだな」
アーサーの瞳から涙がツッと流れ、頬を伝った。
「俺なら世間から祝福されることはあっても、攻撃されることはねぇ。昔から知ってる仲だし、生活のレベルも同じだし、親戚連中だってすぐに馴染めるだろうし…上手くやっていく自信はある。お前の子どもってのは許しがたいが…それだって、さっきは興奮してただけで…彼女の子なら愛してやれる。俺は…彼女を…」
ルートヴィヒならば祝福どころか、財産目当てだ、詐欺師だ、彼女は騙されていると後ろ指を指す連中は沢山出てくる。きっと嫌がらせも山ほどあるだろう。彼は町を歩くことすら難しくなる可能性もある。彼女だってチクリチクリと言われて、傷ついていくだろう。
それは彼の過去が暴かれればますます激しくなるだろう。
無人島に逃げふたりきりで暮らしていくならそれでも大丈夫かもしれない。だが人と関わらずには生きていけない現代で、彼らが少しずつ互いを傷つけ、消耗していくのは火を見るよりも明らかな未来だった。
「愛してるんだ…愛してるんだ」
それはアーサーだけではなくルートヴィヒの台詞でもあっただろう。

「少し前なら…」
ルートヴィヒはつぶやくように言った。
「少し前の俺なら…貴方にそう告白されれば、身を引いていたかもしれない。俺と彼女が一緒になったところで、幸せどころかきっと茨の道を歩むことになる。だから…と。……自信のない俺に、彼女は平気だ、それでも不安なら籍は入れなくていいから傍にいて欲しい…と言ってくれていたが、それで彼女の幸せになるとは思えなかった」
むしろ俺といては不幸になる…と。
「だが…、今回の件で俺は腹をくくった…」
もう涙を堪えることが出来ずにぐずぐずと泣くアーサーの横でルートヴィヒははっきりといった。
「彼女が…俺をそれほどまで強く望んでくれているのだとすれば…それに応えてやりたい」
「……クソッ」
アーサーは両手で顔を覆って大粒の涙を流しつつ悪態をついた。
「結婚という制度がどれほど彼女にとって意味の有るものなのかはわからない…だが、彼女が望むなら
…」
「チクショウ…嫌だ、嫌だ、嫌だ…フランシーヌッ!」
「きっとそれをすれば…俺は世間に大手を振って歩くことは出来なくなるだろう。そして、彼女も嫌な事をたくさんたくさん言われるだろう」
「フランシーヌ…」
「それでも彼女が本当にいいというならば…俺はそれに応えてやりたい」
「なんでだ…なんで俺じゃだめなんだ…」
「……そしてその時には、アーサー、貴方にも祝福してもらいたい」
「ふざけるな!!!!」
廊下に響き渡るような大きな声で怒鳴るアーサー。
だがルートヴィヒは穏やかとすらとれる表情で、彼を優しく見ていた。
「祝福してもらいたいんだ…アーサー」
「どの面さげて、惚れた女が他の男のもんになっちまうのを祝福しろっていうんだ!!馬鹿かてめぇ!!!そんなこと出来るわけがねぇじゃねぇか!!!今だって、てめぇの口に銃口つっこんで引き金を引きたくてしょうがねぇっていうのに!!」
なぜ、俺から彼女を奪った男なんか…ッ!!!

「だが…彼女は、きっと誰よりも“貴方”に祝福されたいはずだ。そう望んでいるはずだ」

ルートヴィヒの言葉にアーサーは一瞬言葉をつまらせ、それからしゃくりあげた。
「馬鹿野郎…。俺にそんなことができると思ってるのか?彼女の前で他の男の子なんか流して俺のものになれと言った俺に…そんなことが…」
「祝福してくれ」
「そしてそれをお前が言うのか…。俺から彼女を奪ってしまうお前がッ!」
「そして、これまでのように彼女の支えになってほしい。きっとこれから彼女はひどい事を言われ続けるだろう。家では支えられても、俺では表立って彼女を支えることは出来ない。だから…。」
心からそう言っているらしいルートヴィヒにアーサーは一瞬呆気に取られ…それから「ひどいな」と泣きながら笑った。
「お前、わかってるか?自分がどれだけ残酷な事をいっているか…」
「……あぁ」
「お前は…惚れた女が他の男に取られるのを喜べと、そしてそんな彼女の傍でこれからも親友を演じろといってるんだぞ」
「あぁ」
「それをわかっててお前はそれを俺にやれというのか」
「あぁ。……彼女のために」
フランシーヌ…。
「なんて残酷な野郎だ。てめぇは。やっぱりお前なんかフランシーヌにふさわしくなんかねぇ」
そう口では言いつつも、アーサーは心のどこかできっとそうなってしまうだろうと思っていた。
アーサーにとって彼女は女神だ。
女神が望む事にただの男が逆らえるはずがない。
ここでNoと言ってしまえば…きっと彼女は…ルートヴィヒを選んだ彼女は、きっとあっさりとアーサーを捨ててしまう。
それはアーサーには耐えられそうになかった。
いくら選ばれなかったからといって、彼女を嫌いになれるわけがない。
彼女にとってルートヴィヒが唯一であるならば…アーサーにとっての唯一が彼女なのだ。
「くそったれ…!!クソッ!クソッ!!!わかったよ!!コノヤロウ!チクショウめ!!!」
ルートヴィヒを選んだ彼女が悪いのでも、彼女を愛したルートヴィヒが悪いのでもなく…フランシーヌに惚れてしまった自分が悪い。
フランシーヌに惚れたのが運の尽きだ。
アーサーは泣きながら笑い、そして笑いながら泣いた。
自分の運命を呪って、そしてこれから長く長く続くであろう地獄の日々を思って。
「チクショウ、チクショウ…ッ」
ルートヴィヒはそんなアーサーを一瞬だけ痛ましげな目で見たが…しかしそれは彼を余計に傷つけることにしかならないと気づくと、すぐさまそれは消え去った。
そして未だ泣き止まないアーサーから視線をそらすと、愛しい人の眠る部屋の扉をじっと静かに見続けた。

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