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知りたいような、知りたくもないような 02

(独)にょ仏←英
よくわかんなくなってきたorz

腹に新たな命を宿したフランシーヌが身をよせているのは、彼女の知り合いで信用のおけるさる名士の別宅だ。
とある無人島にある豪邸で、かつては某国の王子がお忍びの恋を楽しんだ場所としても知られるが…しかし、それも人々の記憶から薄れてしまっているのかもしれない。
その場所に彼女は執事やメイド、専属のコックやら医者などを一切合切を引き連れて移り住んだのだ。
連れてきたものは誰も口の固いものばかり、また食料などを運ぶにも近場の土地ではなく、わざわざ専用セスナを遠くに飛ばしているから、マスコミがここを嗅ぎ付けることはできないだろう。
彼女はここで、世間の目から隠れ静かに子を生むつもりだった。
彼女は賑やかな事が好きで、たくさんの人に囲まれたり注目されたりすることが好きな人間だ。
だから、移り住むことを決めた当初はすぐに寂しくなってトンボ帰りしてしまうのではないか…と思っていたものだが、意外に静かな島は彼女の体にあったのか、それとも腹の子が影響したのか彼女は存外にこの島がとても気に入ってしまった。
毎日たっぷりと眠り、医師の指導のもとに適切な運動を行い、庭にちょっとした菜園を作り、気が向けば自ら料理を作り、テラスのカウチで本を読み、地下のシアターで映画を見、またいつか出したいなどと考えている自叙伝を執筆し…静かな毎日に彼女はとても満足していた。

そんな彼女のもとに客が訪れたのは、彼女が島で生活をはじめてから二週間がたった頃だ。
彼女は来客の知らせにあらかさまに眉を潜めたが、それが誰かを知ると、追い返せとは言わず自分の居るテラスへと客を通すように言った。
彼女は去っていった執事の背中を見て、じっと何かを考え、そして小さくため息をついた。

まもなくやってきたのは、彼女の古くからの友人であるアーサーだ。
「嗅ぎ付けてきたわね」
いたずらっぽく微笑みながらフランシーヌが言うと、アーサーは片方の口角を引き上げるようにニヤリとした。そして彼の視線は下…つまり、彼女の腹部へと降りた。
彼女はそれに気づくと、右手を腹部に当てて優しく撫でた。
「……本当…なんだな?」
「もちろん」
フランシーヌはアーサーの声が複雑に揺らいでいるのに気づいていながら、それを知らぬふりをして幸せそうに言った。
「まだ見た目には殆どわからないけど」
たしかに育まれている命。
すでに母親の表情をしている彼女にアーサーは愕然とし、崩れ落ちるように向いのカウチに腰を下ろした。
頭を鈍器で殴られたような衝撃。
ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな……そんな言葉が彼の頭の中でぐるぐると回る。
「仕事が忙しいの?」
額に手をやったアーサーを気遣うようにフランシーヌが言う。
「いや…そうじゃなくて…」
彼は首をゆるく振り、出されたアプリコットティーを口に運んだ。
幸せそう…?まさか、そんなはずがあるわけがない。
騙されているだけだ。騙されているだけだ。騙されているだけだ。
彼女が俺を抜きで幸せになれるはずが…ない。
「それにしてもよく此処がわかったわね。どうやって…」
「そんなことより…」
「なに?」
「一体、相手は誰なんだ?」
「それは秘密よ」
「秘密?言えないような相手ってことか」
「まぁ…そうとも言えるわね」
「フランシーヌ」
じっと睨みつけるように見つめられ、フランシーヌはアーサーの狂気にゴクリと唾を飲み込む。
「あの…アーサー?もし、心配してるっていうなら大丈夫よ。相手はちゃんとした人だから。ただ内緒っていうのは…つまり、私と彼、そして子供に与える影響が大きすぎることを考慮して、彼の身を隠すことにしただけよ」
「都合よくそう思わされてるんじゃないのか?」
「何を言いたいのかわからないわ」
不機嫌そうな顔をするフランシーヌにアーサーは皮肉に笑った。
「身を隠したいのは、そいつが身元を探られたくないだけじゃないのかって言ってんだよ」
「アーサー…何も知らないのに…勝手なこと言わないで」
「何も知らない…ね」
その言語はアーサーをひどく苛立たせた。
「それだ。何だってお前は俺にまで秘密にしてたんだ?恋人の存在、子供の存在、そしてこの場所までも。俺はお前の親友のポジションくらいにはついているつもりだったんだがな」
「親友…そうよ、貴方は親友だと思っているわ」
だけど…というその言語の続きをフランシーヌは奥歯で噛み殺した。
フランシーヌは彼を間違いなく親友だと思っている。
何でも相談できる、何でも口に出せる、何も体裁を繕わなくていい相手…だが…何故だろう。
フランシーヌは愛する人が出来た時、そして身ごもった時、彼にだけはどうしても隠し通さなければいけないと感じたのだ。
どうしてかはわからない…いや、分かっている。だが、それを明確な言葉にすることを彼女は拒んでいた。
「アーサー…貴方、私に相手の男の事を聞きにきたの?」
「いや、それもあるが一番は…そのガキだ」
「え?」
「どうせその男はもうお前の側から姿を消しちまってんじゃねぇのか?…いや、別にいてもいいけどな、まぁどっちにしろ…ガキさえいなけりゃ男なんて何の関係もねぇしなぁ」
「アーサー…?」
身の危険を感じてフランシーヌがカウチの上で身じろいだ。
「おいおい、そんなに怖がることねぇだろう」
「………」
「別に手荒なことをしようってんじゃねぇ…、俺はお前に傷をつけるはずねぇだろう?」
ニッコリとほほえむ男に、フランシーヌは引きつる…。
「子供の頃はカエルを持って追いかけてきたり、髪を引っ張ったりしてきたこともあったと思うけど…?」
「ガキのころの話だ」
「そう…ね」
そうであってほしいものだ。フランシーヌは両手をぎゅっと膝の上で握りしめ、ちらりと出入口の扉の方を見やる。
「大丈夫だ。俺に任せてくれりゃぁいい。中絶なんてあっという間だ。世間だって気にすることはねぇさ。“俺”が上手く話をするしな」
「………貴方と結婚するって?」
「察しがいいな」
悠然とほほえむアーサーに、フランシーヌはますます危機感を強くする。
「そんなの……」
「大丈夫だって。子どもが流れた事くらい、俺と一緒になるってニュースにすぐに上書きされて忘れしまうさ」
「待ってよ、アーサー…私は…」
「その方が幸せだ。そうだろう?」
昔から俺達は一緒にいたんだ。
お前がまだ両親の庇護の元で楽しく暮らしていた時も、お前の両親が突然死んでしまって絶望に打ちひしがれていた時も、莫大な遺産を引き継いでメディアに注目された時も、心を置き去りに派手な日常ばかりを押し付けられた時も、人なんて薄っぺらで何も信じられないと笑っいた時も、立ち直り人生を楽しめるようになった時も…………
「お前を理解出来るのは俺だけなんだよ。……ったくガキまでつくりやがって」
そうだよ。そうなんだよな…俺がもうちょっと早く……ブツブツと呟くアーサー。
完全に気が触れている。
フランシーヌが立ち上がり、部屋の外へ逃げるタイミングを測っていた時…まさにその扉が外からノックされた。

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