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最果てにも日は昇る

マニクロ 駄

尻尾の先を焦がしたゴウトを見て、ライドウは小さく笑った。
きっと真面目な彼は、なんだかんだ理由をつけつつカグツチ塔に登ろうとしない玲治に何か忠信めいた事を言って、彼の不快を買ったのだろう。
ゴウトは未だ気が立っているのか、毛が少しばかり逆立っているように見える。
ライドウはしばらく毛づくろいをするゴウトの姿を見た後、少し離れた場所でピクシーとケルベロスがじゃれる様を見ている玲治の方へと足を運んだ。

「ライドウも説教?」

ライドウが近づくと、玲治は振り返らずに言った。
その言語からはどのような感情も読み取れなかったが、なんとなく怒っているような気がした。
「いえ、そういうつもりはありません。隣、いいですか?」
「勝手にすれば」
腰をおろしそっと横顔を伺えば、感情の消え失せた灰色の瞳が目に入った。
その灰色の目が時折金色に輝く事を知っているライドウは、その横顔に胸が苦しくなる。
よっぽど、ライドウに何を言われたのかを訊こうかと思ったが、しかしそれをすれば彼の嫌がる説教になりそうでライドウはそれを聞く事を我慢した。
目の前ではピクシーとケルベロスが、跳ね回って遊んでいる。
「無邪気なものですね」
と、ライドウが言うと「うん」と玲治はどこか上の空に言った。
そしてじゃれる二匹(?)から目を離すと、その視線はゆっくりとカグツチ塔へと向かった。
カグツチに向かって伸びる白い塔…。
根本からゆっくりと視線を上げ、そして冴え冴えと光るカグツチに玲治は目を細める。
カグツチの声を聞いたことがある…。
少し前に玲治がそう言っていた事をライドウは思い出した。
偉そうな口調でムカツイた…そう言っていた彼は、自嘲するような笑みを浮かべていた。
あの時…もう少しちゃんと話を聞いておけば…と今ライドウは後悔した。
あの時にはまだ…ライドウはそれほど玲治に対して興味をもっていなかったのだ。
ちょっと変わった悪魔程度の認識しかなかった。
その態度を隠そうとしなかった自分に玲治はどれほど傷ついていただろうかと考えると、ライドウは胸がチクリと傷んだ。

「登るよ」

ふと聞こえた玲治の声にライドウはハッと彼を振り返った。
すると先程までの無表情はどこかへ消え去り、彼は人間の子らしい穏やかな微笑を浮かべていた。
「ちゃんと、登るよ」
「玲治…」
「登る…だけどもうちょっとまって欲しいんだ」
ゴウトと同じように登る事を促しに来たのだと玲治は勘違いしたのかもしれない。そう思ったが、ライドウは何もいうことができなかった。
ただ、「登るから…」と、塔を見ながら繰り返す玲治に、胸が締め付けられるような痛みを感じた。

彼の決断は大きい。
きっとゴウトやライドウが感じているものよりずっと。
なにしろ彼は世界を背負っているのだ。
その細い両肩に世界を。
彼と彼の世界に通じる全ての命運を。

「ゆっくり…考えていいと思いますよ」

あえぐように何とか言葉を紡いだライドウに、玲治は苦しそうな笑顔で「ありがとう」と言った。

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