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糖度1%

独ロマ つきあっちゃいない。
実質的には、ロマとスペインの話

季節はもう夏。
太陽の国と謳われるスペインは、熱く、そして一番美しい季節を迎えている
その熱くギラギラとした太陽が頂点から少し傾き、心なしか日差しが柔らかくなった頃、スペインの家のドアをロマーノがノックした。
事前連絡のない訪問だったが、スペインは昔から子分としてかわいがっているロマーノをよく来たと笑顔で迎え入れた。そして彼を庭の見える…大きく茂った木のおかげで影が落ちているベランダへと案内した。(湿気が少ないので、日陰に入るだけでずいぶんと涼しいのだ)
そしてスペインはよく冷えたサングリアと、小さなイカをトマトソースで炒めたものをテーブルへと並べる。
ロマーノは出されたものをちらりと一瞥し、サングリアの注がれたグラスを手にとった。どうやらこのもてなしは気に入ってくれたらしい。(彼は気に入らなければ容赦なく文句をいうのだ)
スペインは優しげに目を細め、自分もグラスを持ってカチンとロマーノのそれに軽くぶつけた。
それから、何か用だったのか…とスペインは持ち出すことなく、話が止めどなく始まる。
彼がこんな風に唐突に現れることはよくあることであったし、その訪問目的が今日のようにただおしゃべりに来ただけ…というのもまたよくあることだった。
最初は庭に咲いたヒナゲシの話題、それからサッカーの話題になって、料理の話になって…それからツマミにエビのマリネが追加され、スペインの悪友であるフランスとギルベルトが話題にのぼり、フランスが持ってきたワインの話になって、そして…

「あのムキムキ野郎、近頃ムカツクんだよ」

突然そんなことをロマーノが言った。
「えっ?」
まさか彼の名前がロマーノから出てくるとは思わず、ふいを突かれたスペインが間の抜けた声を出すと、ロマーノがギロリと彼を睨みつけた。
なんといっても、彼とドイツとは犬猿仲といっていいほど、仲がわるかったはずなのだから。
スペインにはロマーノが彼の話題を持ってくることがとても意外に思えた。
「ジャガイモムキムキ野郎の事だよ!」
「お、おん、それはわかっとる…けど、ロマーノがあいつにムカついとるのはいつものことやろ?」
スペインの言葉に、ロマーノは一瞬気まずそうな顔をして、それから「うるせぇ!」と怒鳴り、「とにかくムカツクんだ」とグラスを一気に干した。
「相当あれとるなぁ~…」
スペインは少々呆れつつ、ロマーノのグラスに新たな一杯を注いでやる。
ちなみにスペインが用意したサングリアはオレンジの風味をつけたもので、アルコール度数はとても低い。
「またイタちゃんがドイツにべったりなん?」
「ちげーよ、あいつは関係ねー」
「ほな、なんなん?」
首をかしげて先を促すと、ロマーノは口を尖らせて目を泳がせ…「パスタが…」と小さくつぶやいた。
「パスタ?」
「そう、パスタだ」
「パスタがどないしてん?」
「だから…あいつの作るパスタが…」
あいつの作るパスタ?
ますますわからないという風に首を逆の方に傾げると、ロマーノは察しの悪いやつだとでも言うように大きく舌打ちをした。
「だから、あいつのパスタが近頃…なんか美味くなってんだよ!」
「は?」
スペインの頭からクエスチョンマークが無数に飛び出した。
「むかつくだろ!あいつが俺んちの料理上手くなってるとか!前は茹で過ぎたり固すぎたりしてたのに!ばっちりアルデンテに仕上げてきやがるし、塩加減も申し分ないし、オリーブオイルの絡め方もまずまずだし…!」
よっぽど腹に据えかねるのかポコポコ湯気を上げるロマーノに、しかしスペインは「へぇ、そうなん」としか言いようがなかった。
「それに、近頃じゃソースにも力をいれやがって!!バジルとジャガイモのクリームソースなんて、俺より上手いくらいでものすっっごくむかつく!」
憤慨するロマーノを見ながら、少しずつ事態の概要が分かってきたスペインはのほほんと微笑んでエビを一匹口に放り込んだ。
つまり…そういうことか…と。
まさかそんなことになっているとは思わなかったが…案外お似合いなのかもしれない…とスペインは思う。
「しかも、今度はピザを焼くための専用オーブンを入れようなんていうんだぜ、しんじらんねぇ!あんなムキムキしたやつに生地をこねさせたら、イースト菌が死んじまうじゃねぇか!」
「あはは」
「あははじゃねーよ!馬鹿!」
「んー、でも、それだけドイツが努力してくれてるってことやんなぁ~、めっちゃ健気やん」
きっとロマーノに認めてもらおうと必死なのだろう。
「はぁ?」
「それに、ロマーノかて“近頃上手くなった”っていうのがわかるくらいにはドイツの家に通っとるわけやん?なんや、知らん間に上手くいっとったんやなぁ」
可愛いロマーノが自分の手を離れてしまうのは寂しいが……
「お前なにいってんだ?」
「ほんまごちそうさんってかんじやなぁ」
口の中に残っていたエビをゴクンと飲み下し、日本がするように手を合わせるスペイン。
そんなスペインをロマーノは不審者を見るような目で見て、「頭大丈夫か、お前」と言った。
「何が“ごちそうさん”だよ、意味わかんねぇし」
「え?だって、“そういう”事なんやろう?」
「なんだよ“そういう”事って…きもちわりぃなぁ」
若干身体すら引いてみせるロマーノに、スペインは目をパチパチと瞬き「あれ?」と首をかしいだ。
だが、話の内容から言ってまさか勘違いとも思えない。
「…もしかして、ロマーノ無意識なん?」
「は?何がだよ」
「あらら…その反応は…ほんまもんみたいやなぁ…」
他人の事には目端が利くくせに…とスペインは目を丸くした。
「はぁ?だからお前さっきからなにいってんだ?」
「あぁ~…えぇえぇ、こっちの話や。しかし、それやと意外とドイツも…っていうか、十分ありうるやんなぁ…」
ぶつぶつ言うスペイン。
彼はやがてはぁとため息を付くと、次は真剣な目をしてロマーノを見ながら口を開いた。
「はぁ…まぁ、なんや道は長そうやけど、応援しとるで。ロマーノ。なんかあったら親分に相談するんやで」
親分はいつやってロマーノの味方や。
そのセリフを聞いたロマーノはゾゾゾッと背中が粟立った。
真剣なスペインなど気持ち悪くてたまらないといった様子のロマーノに、少々スペインはちょっとばかり傷つくが、ロマーノは本気でスペインが気味悪かったらしく、
「て、てめぇ、なんか今日、気持ちワリィんだよ!!!」
と、一言言い捨てると、大慌てでスペインの家を逃げ出した。
気持ち悪がられ、また子分に逃げられたスペインはというと…ちょっぴり傷つきながらも、誰もいなくなった向いの席を見ながら「春やなぁ」と呟いていた。
…もちろん、季節は冒頭に言ったようにもう夏をむかえているのだが。

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