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跪く、唯一の存在に

8の後
居ない時、病み沖田(労咳じゃなくて…)
居なくなって一ヶ月ほどかな
丁寧に、丁寧に愛刀の清光を磨き上げる。
汚れ、古い油を綺麗に拭い、打粉を丁寧に掛けて磨き上げていく。
一点のくもりない、ぬらりと光る銀、それは血を求めるかのようにキィンとわずかに音を発しているように沖田には感じられた。
じぃんと心地良いしびれが剣を持った指先から肘のあたりまで走り、とくとくと鼓動が早くなる。
沖田のまぶたの裏をチラチラと横切るもの。
白くなめらかな…

「総司」

声をかけられて振り返ると、いつの間にかそこには土方の姿があった。
剣士が近づく人の気配に気づかないなんてことは失態でしかないが、沖田は気にしなかった。
不機嫌そうな土方の顔を見てニコリとほほえむ。
「何かご用ですか?」
「…ご用ってほどじゃねぇがなぁ…」
そう言いつつ彼は部屋の中に入り、後手に障子をピシャリと締めた。
「原田から様子がおかしいと聞いた」
「誰のですか?」
「誰のって…お前だ。総司」
「僕の?」
「そうだよ」
自分で座布団を引っ張り出し土方は座った。
「お前が、毎日毎日馬鹿みたいに刀ぁ磨いてるってな」
「それがおかしい事ですか?」
「おかしいだろう。…斬り合いもないのに毎日毎日…いや、朝から晩までだ。お前、隊士たちになんてぇ言われてるか知ってるか?」
「あんまり知りたくないですねぇ」
立てた刀をうっとりと見つめ言う。

「一番隊組長は血に飢えてる」

土方の言葉にきょとんとした沖田だったが、彼の言葉を飲み下すと途端にくつくつと肩を震わせて笑い出した。
「そりゃ面白い」
「面白くねぇよ!ったく…お前は殺人狂じゃねぇだろう」
「あぁ、それはもちろん否定したいですね」
「だったらそう刀ばっかり磨いてねぇで…」
「でもね」
土方の声を遮るように沖田は口を開いた。
「斬りたいものがあるんです。」
その言語に危ういものを感じて土方が沖田を見ると、彼は先程の笑みを消してまっすぐに刀を見ていた。

「斬りたくて、斬りたくてしょうがないもの…」

「斎藤さんの腕」

「斎藤の腕だ?」
「えぇ、約束したんです。言ったんです。くれるって」
「は?」
沖田の目には狂気の光がちらちらとまたたいていた。
「彼の左腕をね、もらうんです。約束したんです…彼の腕を、肩口からばっさり斬るって。そうしたら僕はゴトリと落ちたそれを蝋につけて…」
「約束ってのはなんだ?」
話の腰をおられた沖田は少しムッとしたような顔をしたが、斎藤との約束の事を土方に教えてやった。

“ねぇ、斎藤さん。もし、もし・・・僕を失望させたら、その左手を頂きますよ”

“ “その時” がきたら・・・・好きな部位を差し上げますよ。”

「斎藤さん、どこでも好きなところをくれるっていうんです」

“左手でも右手でも、足でも、目でも、舌でも”

「でも、やっぱり僕は左腕がいいなって思うんですよ。だって斎藤さんの左腕は特別だから」
とっても強くて、綺麗で…
「だから…」
「総司、残念ながらそりゃ無理だ」
土方はまた話の途中に口を挟んだ。
「え?」
「果たされねぇよ。それはな」
「どうしてですか?」
「どうして?そんなこたぁわかってんだろう?」
土方は火のついていない煙管を咥え、ニヤリと笑った。

「あいつが俺を裏切らねぇからだよ。考えりゃわかるだろう?」

沖田はじっと土方を見つめた。
土方の言葉を吟味するようにじっくりと黙って見つめた後、沖田は安堵とも失望ともつかぬため息をついた。
「なんだ…そうなんですか」
「…あぁ。そういうことだ。だが、他の奴らには内緒だぜ」
「……そうなんだ」
まっすぐに持っていた刀を沖田はゆっくりと水平に下ろす。

「はじめちゃんの左腕…欲しかったのになぁ」

そら恐ろしい事をいう沖田。
だが彼の目には先程までの狂気はすでに姿をけしている。
土方はそれを確かめると、詰めていた息をフッと吐き出し「そういや、**から貰ったまんじゅうがあるんだが…」と普段の調子に戻って弟分に声をかけた。

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