スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ゼロの夜想曲 10

インパクトの後、立っていたのは俺一人だった。
そして、チリっと走った頬の痛みに驚いて指をあて・・・その指に赤い滴を見た俺は驚きのあまり一瞬息をするのを忘れた。

朝食が終わって案内されたのは、いわゆる階段教室というやつだった。
一番下に教卓があり、階段状に生徒の席が並べてある。
集まっている生徒は誰も彼もルイズと同じくらい。そして、奇妙な動物を横につれているやつらばかり。
そいつらは黒ずくめの俺にぎょっとしたような視線を向け、それからヒソヒソと話し始める。言いたいことがあるなら言え、喧嘩なら借金してでも買うぜ・・・そう言ってやりたい気もしたが・・・ルイズに免じてそれはナシにしといてやる。
そして、ふと朝あったキュルケとかいう女が男どもに囲まれているのが見えた。
さすがは夜魔。
そう感心していると、視線を感じたらしいキュルケが男たちの間からこちらを見、意味ありげに片目を瞑ってみせる。
俺はそれに小さく苦笑し、それからルイズの椅子を引いてやった。

まもなくして入ってきたのは、中年のふくよかな女性教師だった。
名前はミセス・シュヴルーズ。何となく覚えにくい名前だ。
彼女は、卓の前につくと優しげなまなざしで教室を見渡し、生徒たちの使い魔を見るのが楽しみなのだといった。
一人一人の顔を見、それから傍に控える使い魔を見やる。
そして、その目がルイズに止まり・・・そして俺へと映る。
ローブの奥に隠れた俺の目と彼女の目がかち合う、途端、女教師は顔を凍りつかせた・・・が、それも一瞬、すぐに柔和な顔に戻り他の生徒たちを見渡した。
そして、授業。
授業の内容はもちろん、魔法に関すること。
この世界での魔法の系統は火・水・土・風そして、失われた系統といわれる虚無の5つで校正されているらしい。
ボルテスクでは、火炎・氷結・電撃・衝撃・万能が主の攻撃魔法系統だ。
その他に、破魔・呪殺・魔力・神経・精神・回復・補助・・・などがある。
ボルテスクが細かく分けすぎているせいか、それともこちらが大雑把な分け方なのか、それとも、魔法の質が全く違うのかは今のところ保留。
そして、こちらの魔法というものはどうやら攻撃魔法意外にもいろいろなことが出来るらしい。
教師が例に挙げたところで言うと、土を練成して貴重な金属をつくったり、石を切り出して家を建てるなんてこともできるらしい。
ボルテスクじゃ全く役に立たないような魔法だが、戦わなくてもかまわない日常であればこちらのほうが勝手がいいのだろうと思う。
そして、魔法を使うやつらには階級分けがされているらしい。
齧った言葉をルイズに聞けば、詳しく聞かせてくれた。
つまり、系統をいくつ使えるか・・・によっての階級が分かれるらしく、二系統を使えれば『ライン』、三つなら『トライアングル』、四つなら『スクウェア』となるらしい。
ちなみに、教師役はトライアングル。系統は土・土・火らしい。
何故同じ系統が二つ来るのかと聞くと、土の系統をより高めるためのものらしい。
高揚系なのだろうと俺は納得する。
ルイズは・・・と聞こうとして俺は口を閉じる。
コイツは・・・そう、ゼロだった。

っと、その時、シュヴエールがルイズを指し、前に出てくるように指示した。
ルイズがちらりとこちらを見たので、俺もまた彼女のあとについて教卓へと向う。
教卓の上には一つの石ころがあり、それを指差して教師は言った。
「ここにある石ころを、望む金属に変えてごらんなさい」
その言葉に俺は小さく驚き・・・ついで、教室全体がざわつく。
生徒たちの方を見るとキュルケが遠慮がちに立ちあがり、やめたほうがいいと言っている。
そして、危険だと。
どうしてかと困惑する教師だが、失敗を恐れてはいけないと尚もルイズに優しく言った。
ますます顔を青くするキュルケ。
魔法は・・・使えないんじゃなかったのか?
一体、何を恐れているのか分からない。
ルイズに目をうつせば、彼女は再度教師に説得されコクリと頷いたところだった。

彼女は、手に持っていた杖を振り上げなにやら呪文のようなものをもごもごと口の中で呟く。
なるほど・・・此処の魔法には詠唱が必要らしい。
その点もボルテスクとは違う。向こうでこんな風にモゴモゴやってたらその間に殺されてしまう。こちらの魔法はもしかしたら戦闘には殆ど向いていないのかもしれない。
そう思っていると、彼女の長い髪が風もないのにふわりと動いたような気がした。
彼女の精神がゆっくりと石に向かって収縮していくのが分かる。
なんだ・・?魔法、使えるんじゃないか?
そう思ったとき、彼女は短くルーンを唱え、そして杖を振り下ろした。
その次の瞬間・・・

石は、内側にダイナマイトでも仕込んでいたかのように爆散した。
強烈な光。
石は、小さな弾丸となって四方に飛び散る。
女教師とルイズは黒板にたたきつけられ、生徒たちからは悲鳴が上がる。
それに一瞬だけ送れて、今度は使い魔たちが暴れだし、教室の中は阿鼻叫喚、地獄絵図へとはやがわりした。
飛べる動物は窓ガラスを叩き割って外へと飛び出し、大きなやつはドアを蹴破って外へとでる。
それを追って、使い魔の主人が外へと飛び出し・・・

そして・・・俺は頬から血を流していた。
俺は・・・驚いた。
俺が今、腹に収めているのはマサカドゥスというマガタマだ。
このマガタマはきわめて防御性が高く、万能以外の属性はことごとく無効化してしまう。
つまり・・・万能でなければ俺に傷をつけることなどできるわけもなく・・・。
そして・・・俺はその万能属性すら殆ど無効化できるほどに鍛えてきた。
その俺が・・・血を流している。
血を流したのは・・・一体どれくらいぶりだ・・・?
それを思うと、腹が立つよりも先に喜びが湧き上がった。
テレビのコントシーンのようにすすだらけになったルイズが、照れたように笑う。
「失敗したみたいね」
そう言うルイズに、生徒たちから反感の声が上がるが・・・俺は、それとは反対に彼女に笑って言った。
「すごいじゃないか。ルイズ。ちょっと見直した」

コメントの投稿

非公開コメント

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。