スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

手折った花は

普通に創世
でもやさぐれた。 悪魔です。
ダンテは元の世界にいるよ。

気がつくと霧の中に立っていた。
よくわからないままに一歩進むと、ざくりと足が沈みそこが砂地で有ることに気づいた。
此処は…と考え、すぐに答えが出た。
俺はつい先程まで、事務所にいたはずだ。
そこで急激な眠気を感じ…

「夢か」

眠りに落ちた。

つぶやくと、

「夢だよ」

誰かが答えた。
いや、誰かじゃない。
「玲治」
後ろを振り返ると、予想通り、そこにはかつての相棒が立っていた。
彼はあの時のように上半身裸にハーフパンツといった姿ではなく、白い半袖の開襟シャツに黒いスラックスを履いていた。
「その格好は?」
「学生服ってやつだよ」
「へぇ」
あれからどれくらい経ったのか…夢のなかだということもあるだろうが上手く思い出せない。
俺は彼から視線をそらし周りを見るが、彼以外は白い霧に覆われていて何も見えない。
「夢の中だって言うなら、美女の一人や二人用意しといてくれてもよさそうなもんだがな」
気がきないと言えば、彼はくすぐったそうに笑った。
「そりゃ悪かった。呼びたいなら呼ぶけど?」
リリム、サッキュバス、リリス、ティターニャ…と上げられて俺は首を横に振った。
「そんな凶暴な女は要らない」
しかも悪魔だし…。
ケチをつけると彼はまた笑い、パチンっと指を鳴らした。
すると、座り心地の良さそうなソファが二つと、その間にテーブルが現れた。
そして玲治がもう一度指を鳴らすと、テーブルの上には酒瓶が並んだ。
「へぇ。お前も飲めるようになったのか?」
ソファに座り、ずらりと並んだ銘柄を見ていう。
これはバランタイン、こっちはレモンハート…ざっと10本以上ある。
「まぁね、バーで働いてたこともあるし」
それで覚えたんだ。
「学生じゃぁなかったのか?」
遠慮無く口を開けさせてもらうことにして、グラスに注がないまま呷った。
「まぁ、学生でもあるね」
「うぅ…きくな。いい酒だ」
「夢で酔っ払うなよ」
「で?アルバイトってやつか?」
「生活のためってやつかな」
玲治は向かいの席に座り、ワインの瓶の口を手刀で切り落とした。
「ほら、俺、こんなんでももう40超えてるし。多分」
その言語に俺は思わず口に含んだ酒を吹き出しそうになって、咳き込んだ。
「よ、四十?」
「あれ?驚いた?」
「驚くも何も…」
その姿は偽物なのかと目を瞬かせると、彼は「馬鹿」と笑った。
「これは本物だぜ。だけど、ほら、俺純血だから」
「純血?」
「そ、純血の悪魔ってこと」
時の呪縛から解放。
「まぁそれを言えば、俺はまだ生まれていないし、俺はもう100年以上生きてるわけなんだけど」
「……あぁ」
返事が一拍遅れたのは、あの時、あの場所で、彼は自分が悪魔であるということを絶対に認めようとはしなかったからだ。
それを…あっさりと認めるなんて、なんだか信じられなかった。
「…まぁ月日が経ったってことだよ。そっちはどうかしらないけど」
「……そう、か」
「結局、どう足掻いても、俺は今の俺でしかありえないことがわかったからね」
「やさぐれてるな」
「まぁ」
「で、今日は愚痴りに来たのか?」
「ってわけでもないんだけど…」
彼は自分の座っていた椅子を消すと、そのまま後ろに転がり大の字になった。
「弱ってるのか?」
「かもね」
「平和になって張り合いがないか」
「ってわけでもないんだけど…」
「じゃぁ、俺が居なくて寂しいか」
ニヤリと笑うと、彼は首を少し起こして「かもね」と返した。
「だって、つまらないんだよ。本当に…。失敗しちゃったかなぁ」
「……それは、俺にはなんとも言えないな」
俺の世界と彼の世界は根本的に違う。俺は彼の世界の欠片をみたことはあるが、それが全てではないし…今の彼の世界がどんなものかも知りようがない。
「だが、お前が選んだんだろう?」
それに間違いは無いはずだ。
だが、
「だといいね」
玲治の返事は芳しくない。
彼は後頭部を砂にすりつけるように頭を動かし、ゆっくりと目を閉じた。
「俺は俺でしかありえないけど、俺はどこにでも居る。だから…」
「だから?」
「なんでもない」
なんでもない…なんてことはないだろう。
だが、その先を聞きたいとも思わなかった。
「玲治」
「ん」
「お前が何を悩んでいるのかはしらないが…一つだけわかることがある」
「何?」
彼は興味を覚えたのか、上半身を起こして俺を見た。
俺はそんな彼をじっと見つめ、たっぷりと間を置いて言った。

「おまえのその悩みは、“あいつ”の思うつぼだ」

玲治は俺の言葉にハッとしたように目を見開き、「なるほどね」とにんまり笑った。
俺はその笑顔に不穏なものを感じる。
そして、それは…
「それは面白そうだ」
的中する。
彼は一瞬にして砂と霧だけだった世界を、きらびやかな大都会の上空へと変えた。
夜空に輝く満天の星空のように…高層ビルが輝いている。
空にあっても落ちるということはないが…それでも、ちょっとした恐怖は感じた。
「お、おい」
「これが今の東京だよ。つまらない世界だ…けど…ちょっと楽しくなりそうかな」
「何をする気だ?」
「さぁ」
彼は悪魔らしく微笑むと、
「ただ…あいつがいつまでも俺を掌のコマだと思っているのは不快だよね」
東京へと真っ逆さまに落ちて行った。
それと同時に俺は目覚めの気配を感じる。
その眠りの最後の瞬間…俺は、また近いうちに玲治に会うだろうというような予感を抱いた。

コメントの投稿

非公開コメント

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。