スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ゼロの夜想曲 06

廊下に出た途端、大きなあくびをしたルイズ。
眠いのかと聞くと、とろんとした目で見上げられた。
彼女は何も岩なったが、かなり“おねむ”らしい。
心なしか行きよりもゆっくり歩くルイズの隣を歩きながら、俺は何気なく窓を見て驚いた。
「月が・・・ふたつ・・・?」
そう・・・とっぷりと暮れた夜の空。
浮かんでいるのは半月、それも一つではなく・・・二つ。
「何いってるのよ・・・・昨日もその前も、私が生まれる前から月はずっと二つじゃない」
「そう・・・なのか?」
「そうよ。それより早く部屋に帰りましょうよ」
月が二つ。
そういえば・・・・青空を見るのも久しぶりだったが・・・月を見るのも久しぶりだ。
二つ・・・という時点で、俺が救えなかった世界とは別物だということはわかったが・・・
それでもうっすらと黄味を帯びた月には胸にくるものがあった。
「玲治?」
「あ・・・悪い」
歩き出したルイズに、俺はもう一度だけ対になった月を見上げて従った。

部屋の前まで着き、ルイズがノブに手をかけたとき玲治は彼女の名を呼んだ。
「ルイズ」
「何?」
「もう、今日は寝るだけだろう?」
「そうだけど・・・?」
不審気なルイズに、玲治はフードの中から金色の瞳を見せて無表情に言う。
「外に出たい。かまわないな?」
「外?」
どうして?っというように、ルイズは首を傾げるが、玲治は何も答えない。
ルイズはその態度に、ふぅっと息をつき腰に手を当ててまっすぐに玲治に対して言った。
「別に、いいんじゃない?悪いことしないなら。私にはとやかくいう権利ないもの」
眉を鋭角に上げ、口を尖らせて言うルイズ。
文句はあるが、いえないといったところか。
玲治はそれに僅かに苦笑して、また頭を撫でてやりたいような衝動が沸いた。
「朝には戻る。ゆっくり休んでくれ」
それだけを言って、黒いローブを翻した玲治。
ルイズは離れていく背中をしばらく見つめた後、小さく「おやすみなさい」と告げたが、それは誰の耳に届くこともなく消えていった。

屋上へ出ようと思っていた。
屋根の上ならば、月もよく見えるし気分が良いだろう。
俺は上へと続く階段をよどみなく歩き、そしてその階段が途切れたところで立ち止まった。
それは行き止まりの扉・・・ではなく、普通のフロア。
どうやら・・・屋上と呼ばれるものはこの建物にはないらしい。
屋根の上にでるか・・・。
小さく呟いて、俺は廊下の窓を開け桟に足をかけて体重を乗せた。
半身を外に躍らせ、上を見る。
それほど距離があるわけではないが・・・手は届かない。
何か支えになるものはあるかと辺りを見ると、雨水を通す管に気付いた。
手を伸ばし体重をかける。ギシギシと音はするが・・持つだろう。
俺はそれを手で握ると、小さな掛け声とともに体を完全に外へと躍らせた。

危なげなく上った屋根の上。
斜めになったそこに腰を降ろし月を見上げる。
半月の月が・・・二つ。
頭にかぶったままだったフードをはずし、風を浴びる。
さわやかな風だ。
血の香りも、腐敗の匂いも、惨劇の悲鳴もそこには含まれていない。
目を細める俺。
心に浮かぶ感情の名を考えた。
懐かしさ?それとも、物足りなさ?
しばらく月を眺めて考えたが、答えは出ない。
どこまでも平和な光景。
大きく息をついた。
この平和を麗しく思っているのか・・・それとも煩わしく思っているのか・・・その判断が付かない。
ローブの裾から覗く俺の手には、黒い紋様とそれを縁取る青白い光。
人でさえあれば・・・こんなこと考えることもなかったのだろう。
「・・・まぁいいさ」
俺は目を閉じて独白する。
「気に食わなければ・・・壊してしまえばいい」
あの世界のように。

俺は伸ばしていた足を引寄せ、膝に額を付くと本来の目的を果たすために意識を深く沈ませた。
ストックという、俺が内包するもう一つの世界。
ざわざわと仲魔たちが闇の中でうごめいたような気がした。

コメントの投稿

非公開コメント

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。