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赤色夜行

吸血鬼パロ 書きたいとこだけ書いてみる。
続きは気が向いたら。 半分くらいしか見直してない。

古い墓地…かつては貴族たちが屠られた…今はもう訪れるものの居ない墓地の地下深く、大きな琥珀の中に眠る子供がいる。
化石のように琥珀に閉じ込められ眠る五歳児ほどの子は、血の気のない真白な肌に、金糸を思わせる髪、将来を期待させるような整った顔をしている。
一見死んでいるように見えるが、彼は時折ぴくりと指先を…そして瞼を動かしている。
陽の下で見るならばどれほど美しいだろうか。
きっと誰もが、彼が陽の下の草原で駆け回る彼を想像しては顔を綻ばせ、彼が目を覚ます事を期待するだろう。
しかし、実際の彼は陽の下どころか夜に浮かぶ月にすら火傷を負い、夜風に肌を切る程に弱い。彼はもう二百年以上こんこんと眠り続けているのだ。
吸血鬼としては未熟児…いや、完全なる欠陥品。
普通ならば生まれ落ちた瞬間に、死を賜るべきはずだった命は…しかし彼の兄の手によって手厚く保護されていた。

欠陥品…ルートヴィヒの兄ギルベルトは吸血鬼の中では特に力が強く、その力はアーサーや王にも並ぶと言われる。
白金の髪に石榴を思わせる赤い瞳、冷たく、しかしその中に激しさを秘めた美貌。
誰よりも強さを求め、弱いものは容赦なく時にそれらを狩っては己の糧にしてきた。猛々しく激しい…そしてなにより美しい。
そんな彼にとって、誰よりも…そう、人の子よりも弱い弟は見るに耐えられるものではなかっただろう。身内として許されるものではなかっただろう。
だが…
何故か彼は弟を庇った。
月に身を焼く彼を癒し、弱い魂を食らおうとやってきた悪鬼たちを払い、三日も放っておけば死んでしまう子の傍に寄り添い、身を削って力を分け与えてきた。
そんな彼を同じ吸血鬼達は気が狂ったと蔑み、あるいは何か企んでいるのではないかと恐れた。

 *

琥珀に縋りつくように眠っていたギルベルトは、自分の縄張りに誰かが踏み込んだことに気づいてそっと目を開けた。
彼は動かずじっとその気配を探っていたが、領域を侵した者が誰であるか気づくと小さく舌打ちをして体を起こした。
「招かれざる客か…それとも…」
彼は琥珀…ルートヴィヒの頬のあたり…をそっとなでると、客を出迎えるために立ち上がった。

「よぉギルベルト、久しぶりだな」

しばらくして彼の地下居城に姿を表したのは古い付き合いのあるアーサーだった。
かたい金の髪にエメラルドの瞳を持った男だ。
彼は時代錯誤と言われてもおかしくないようなシルクハット姿で、ギルベルトに挨拶しいつのまにかあった椅子に腰をかけた。
「招待した覚えはないが?」
「冷たいこというなよ。長い付き合いだろう?」
スッと目を細めるギルベルトを無視し、彼はまたいつのまにやら出現したテーブルの上、ティーポットをとってカップに紅茶を注いだ。
「ローズヒップだ。お前も飲まないか?いい香りだろう」
「…手作りの菓子さえなけりゃな」
「…うるせぇばぁか!」
ギルベルトが“手作りの菓子”とやらの話を持ち出した途端、それまでのシリアスな雰囲気はどこへやら…子供っぽく怒るアーサーを見てギルベルトは少し笑い、笑われたアーサーは繕うように咳をした。
「で、なんだよいきなり。いったい何の用だ?」
「…だいたい予想がついてるんじゃないのか?」
アーサーは言ってギルベルトの向こう側…今はカーテンで仕切られた琥珀のある部屋の方を見透かすようにして見て言った。
「…ルッツがどうかしたか?」
「あぁ…そんな名前だったか」
とぼけるように言うアーサーをギルベルトは睨む。
「200年も放っておいて…今更なんだ?」
「そういきりたつなよ」
「あいつを処分しろとでもいうのか?それとも食わせろと?」
「ギルベルト落ち着けって」
「てめぇらはいつだってロクでもねぇことしか考えつかねぇじゃねぇか!」
ギルベルトがテーブルを叩き、食器が小さく音を立てる。
「ギルベルト…ッ」
「アイツを生かすために俺は力を半分以下にまで落として隠居生活を送る。そういう誓約じゃぁなかったか?あぁ?」
怒りに燃え立つようなギルベルトの目を見て、アーサーは小さく息をついた。
「だから落ち着け。別に悪い話を持ってきたわけじゃねぇ」
「ハッ、どうだかね」
「聞けよ、ギルベルト。俺が持ってきた話は…どちらかというと…お前にとってはいい話だと思うぜ」
「……」
「信用しろよ」
表情を崩さないギルベルトにアーサーが呆れていうと、すかさず「うるせぇ」と文句を言われてアーサーは肩をすくめた。
「まぁ聞くだけは聞いてやる。どんな話だ」
「…ふぅ。じゃぁ話そう。…お前は近頃隠居生活をおくっていてコチラの話にゃ疎いかもしれないが…ここ最近北がきな臭くてな」
「北…?イヴァンか?」
「そう。しばらくおとなしくしてたと思って油断してたんだが…どうやら王と秘密裏に密会を重ねていたらしい」
「密会?内容は?」
「そこまでは…しかしどうもあんまりいい話じゃないことは確かだ」
「根拠は」
「人間の対吸血鬼機関がいくつも襲われている」
「………」
「もちろんイヴァンの領地にある所ばかりだ。それに探ってみたところ、奴らの眷属がやたらと増えているらしい」
「…馬鹿が」
ギルベルトは吐き捨てるように言った。
というのも、吸血鬼は個人においては人と比べ物にならない程に強いが、しかし数の上では圧倒的に不利。また火器を使われては一溜まりもない。
それになにより吸血鬼が人を糧にしているということを考えれば、吸血鬼である彼らが積極的に人を滅ぼそうなどすれば、自分で自分の首を締めることに他ならない。
「家畜にでもするつもりか…?」
「かもしれない」
「だとしても馬鹿だとしか言いようがないな…。俺達は基本的に人に寄生して生きているものだ。人を飼い慣らすことなど出来ない」
ギルベルトの言葉にアーサーははっきりと頷いた。
「同意見だ。俺たちも」
「たち…ってのは?」
「議会の連中さ。まぁ実際には割れてるってのが現状だけどな」
「…ふん…」
ギルベルトは紅茶を無視して、彼は赤ワインの瓶を取り出すとそれをグラスに注ぎ、口につけた。
「まぁ…俺達なんて個人主義者の塊だからな…意見がまとまらないのはいつものことだけどな。それでも今回の件は危険視されている」
「イヴァンと王か…」
「それに本田も…王につきそうだ」
「本田も?」
ギルベルトは黒髪の小柄な青年の姿を思い浮かべ、意外だと思った。
「あいつはイヴァンとは相性がわるかっただろう」
「あぁ、だが、王は本田の兄だからな」
「…ふん…そうか…。で?」
「イヴァンが一週間前に俺達に要求を突きつけてきた」
「要求?」
「あぁ、“始祖の吸血鬼を渡せ”…だ」
「始祖の吸血鬼だと…?」
始祖の吸血鬼とはその言葉の通り、彼ら吸血鬼の始祖の事をいう。
その始祖の吸血鬼とは数人いたといわれるが…
「あぁ、すでに失われて久しい」
「最後の吸血鬼ももう300年は前に居なくなったはずだろう…そんなのはイヴァンだって知っているはずだ」
「あぁ、俺達の意見も同じだ。だが、その要求には続きがあってな…」
「それで俺に関係あるってことか…」
始祖の吸血鬼…それは言うならば純血の吸血鬼という意味だろう。
それで言えば、話がギルベルトに及ぶは理解が出来た。
なぜなら、ギルベルトは現存する吸血鬼の中では特に血の密度が濃く、吸血鬼の両親を持つということだけでも珍しいのに、その上今は亡き両親が二人とも始祖の血を半分引いていたからだ。
だが…それを言うならばルートヴィヒも同じ…。
しかし、彼はギルベルトと同じ血を引いてはいるが…欠陥品だ。
ギルベルトが認めようが認めまいが。
「俺を欲しいと?」
「俺も最初はそうだと思ったんだが…まぁ、続きを言おう。彼の要求にはこうあった。」

「まだ人の血を知らぬ、純血の吸血鬼。同胞を糧として生きる異端の吸血鬼」

アーサーの言葉を聞いた途端、ギルベルトは持っていたグラスを思わず地面に落とし割ってしまった。
「まさか…」
「あぁ、そのまさかだ」
アーサーはギルベルトの後ろに目をやり、ギルベルトもまた後ろを振り返った。
「どういう魂胆かまでは知らないが…あいつはルートヴィヒが欲しくてたまらないらしい…」
ギルベルトは後ろを見たまた動かない。
アーサーはもう一度紅茶を入れなおし、一口をゆっくりと飲みくだした。
「先程も言ったが、イヴァンの目的はしれないが…しかし碌でも無いことであるということくらいの予想はつく」
「それで…ルートヴィヒを俺から取り上げると?」
「そこまでは言っちゃいない。まぁ出来ればこちらの監視下に置きたいところではあるが…」
「断る!」
間髪無く返ってきた言葉に「だろうと思ったよ」とアーサーは呆れ半分に返した。
「だからといってイヴァンに渡す気もない…だろ?」
「当たり前だ」
噛み付くような目にアーサーは軽く肩をすくめた。
「睨むなよ。お前にとってはいい話だと言ったはずだ…。…俺達は別の方法を考えたんだ。つまり…ルートヴィヒを起こすってことだ」
「ルッツを起こす…?」
ルートヴィヒは意味が分からないというようにつぶやいた。
「あぁそうだ。イヴァンは近頃特に力をつけていて危険だし、俺達がつきっきりで守ってやるわけにもいかない。そしてルートヴィヒにかまけっぱなしでお前の力が弱っているのは由々しき状況だ。だからこそ…ルートヴィヒに目覚めて欲しい…というのが結論だ」
「出来るのか?」
「…あるいはな。俺たち同胞が少しずつ力を与え、目覚めを促す…」
本当は殺しちまうのが一番簡単なんだ…その言語をアーサーは口にはしなかったが、そう思っていることはギルベルトにはよくわかった。
そして、この提案を断れば…おそらくイヴァンに狙われるどころかアーサーサイドからも狙われる事になるだろうということも。
ろくに栄養も取れぬまま200年…身を削ってルートヴィヒを養ってきた彼の力はかなり弱っている。
今の状態では…おそらく普通程度の力しか持っていない吸血鬼にすら苦戦する。
だとすれば…彼はもう提案を受け入れるしかなかった。
「…わかった…」
苦々しそうに言うギルベルトに、「利口な判断だ」とアーサーは肩の力を抜いた。

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