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011 後ろ姿

セシルがおにゃのこ
微妙にカイン→セシル
原作ベース

「セシル、陛下からのプレゼントだ」

ニヤニヤとしながら手に持ったドレスを差し出すと、書類仕事をしていたらしいセシルは振り返り、ドレスを見ていやぁな顔をつくった。
「僕は暗黒騎士だよ」
「知ってるさ」
俺はな。
口の中で付け加える。
「暗黒騎士は夜会には出席しないものだ」
「それは古い掟だろう?特に意味はないはずだ」
人前では決して顔を晒してはならない…とか、慶事には絶対参加してはならない…とかと同じ物。特に根拠のない掟。
「それでも…彼らは僕が出席することを心良くは思わないだろう。なんたって暗黒騎士なんだからね」
「それでも陛下は出て欲しいみたいだけどな」
俺はゆっくりと彼女の部屋に入り、ベッドに持っていたドレスを置いた。
レースの美しい白い清楚なドレスだ。
暗黒騎士という言葉には全くに合わない。
しかし、彼女にそれがに合わないかと言われるとそれは違う。
悪魔を模した黒い鎧を脱いだ彼女は、透けるような白い肌に白金の髪、どこか儚さを持った美しい女性で、清楚なドレスがとてもよく似合うはずだ。
そう彼女は暗黒騎士こそが似合わないのであって、むしろドレスこそがお似合いだ。
これを着た彼女を見て、誰が暗黒騎士だと思うだろう。
はぁっとため息が聞こえてセシルを見ると、彼女は未練がましくドレスを睨んでいるところだった。
まるで宿敵を睨むみたいに。
「睨んでもドレスは消えないぞ」
小さく笑っていうと、彼女は分かっているといってため息をついた。
「陛下はお前を見せびらかして自慢したいのさ」
「自慢って…」
「バロン一の美女…なんて謳われているローザと張るからな。お前は」
誇張でも何でもなくそれは事実。
だが、セシルは「冗談は止せ」と軽く流す。
俺は彼女に気付かれないように小さくため息をついた。
彼女は自分の容姿にとことん無頓着だ。
普段から完全武装していて肌が少しも見えないような姿だから…というのもあるかもしれないが…。
いや、だとしても彼女は人の視線に無頓着過ぎる。
彼女は親友であるはずの俺だってドキリとするくらいに美しいのだ。きっと彼女が暗黒騎士でさえなければ…彼女には婚姻の話が山ほど舞い込んでいるはずだ。
たとえ、彼女が孤児で何の後ろ盾もないとしても。
「行くだろ?」
「…それが陛下の思し召しならばね…」
「思し召しなんだろう」
ドレスを贈られるくらいなのだから。そう言うと、彼女はまた渋い顔をした。
「会場は8時から。6時には此処に侍女が来る」
「侍女が?何故?」
「お前の準備だよ。風呂とか衣装とか、化粧とか…まぁ、しっかり磨いてもらえ」
「…最悪だ」
彼女は美しい髪をかきあげ、息をついた。
その仕草に俺は思わず目を細める。
「で、その後は俺が迎えに行く」
「カインが?」
「あぁ、お前の今夜のパートナーを陛下から仰せつかったからな」
「カインが」
彼女は驚いたように目を見開いた。
「ローザはどうするんだ?彼女のエスコートじゃないのか?」
「今回は違う。彼女のパートナーはベイガン殿だからな」
「ベイガン殿…」
彼女は少し考えるようにつぶやくと、ため息をついた。
「そうか…カインも気の毒だな」
「何故?」
「何故って…僕のパートナーなんて、気の毒以外の何者でもないだろう」
彼女の言葉に俺は肩をすくめた。
俺が陛下直々に頼まれたのでなければ、彼女のパートナーになりたいという男は山ほどいるに違いない。
だが、そのことを彼女に教えてやる気にはならなかった。
彼女は…知らなくていい。
「それじゃぁ、俺に恥をかかないようにたっぷりと飾り立ててくれ」
「…はぁ…言っておくけど…僕はすぐに具合が悪くなって部屋に戻る予定だよ」
「なんでだよ。折角だから……」
「なんででも」
そう言って彼女は身につけていた鎧の留め金に手を伸ばし…出て行けとばかりに俺を睨んだ。
「はいはい…そのかわり夜会ではちゃんとお嬢様してくれよ」
肩をすくめて彼女に背を向けると、
「もちろんよ。楽しみにしていて」
普段は封印しているらしい女っぽい口調でセシルは言った。
俺がその言語にドキリとして思わず振り返ると、彼女は俺に背を向けて上の鎧を脱ぐところだった。
ほっそりとした白い肩…。
それを確認した瞬間、俺は慌てて彼女に背を向け、逃げるように彼女の部屋を飛び出した。

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