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思わず愛してみたくなる

「ロマーノ」

後ろから俺の名を呼ぶ声に、俺はギクリとして足を止めた。
ゆっくりと振り返ると、こちらに向かって手を上げたドイツと目があった。
「なんで…」
驚く俺に、
「上司がこちらに来るというので同行だ」
彼はそういって目を細める。嬉しそうに。
そんな彼を見て、俺はなんだかいたたまれないような気持ちになって目を泳がせた。
「お前は何をしてるんだ?」
「お…れは…別に…服を買いに…」
「服か。俺も一緒に行っていいか?」
「え」
「こちらの服は趣味がいいからな。一緒に選んでくれないか」
「な、なんで…俺が」
そんなことしなきゃいけないんだよ、コノヤロウ…という言葉が、何故か喉に絡みついてこない。
言葉につまる俺を見て、
「駄目だろうか」
彼は悲しげな顔を作った。
そんな顔を見ると、俺は胸がぎゅっと掴まれるように痛くなって、突っぱねることができずに「別に…」と小さくつぶやいた。
「か、勝手についてくれば…いいだろ」
邪魔だけはするなよ…と付け加えたのが精一杯の強がりだ。

近頃…というか、大戦が終わって少ししてからドイツの様子がおかしい。
おかしいといっても…別にフランスとかイギリスみたいに変なんじゃなくて…なんというか違う意味でおかしい。
なんかやたらと俺に優しい…というか、俺に構いたがる…というか。
つまり、好意を寄せられている…ような気がする。
別に俺はアイツに気に入られるような何かをした覚えはない…んだけど。
っつか、むしろ嫌われるような事を山ほどしてきたような気がする…んだけど…。
よくわからない。
でも、あいつが俺にやたらと構ってくるのは本当だ。今日のように。
それで俺は…なんか…そんなドイツにどうしていいか分からない。
なんかムズムズして仕方ない。
どうしようもなく逃げたくなる…んだけど…逃げることができない。

「いい感じの店だな」
「…たりまえだろ」
「そうだな」
店についてもドイツは俺から離れずに、俺の隣について服を見る。
そして別に聞いてもいないのに、お前に似合いそうだ…とか、さすがに趣味がいいんだな…とかってコメントをくれる。
なんなんだよ、コイツは。
俺は「うるせぇよ、コノヤロウ…」て、心の中でだけ悪態をついて服を選ぶ。
なんか…もぅ、俺はコイツに調子を狂わされっぱなしで…。
「こういった柄はどうやって着こなせばいいんだ?」
「え…あぁ…それは、例えば……」
近頃は悪態すらまともにつけなくて、頭の中がぐしゃぐしゃだ。
「あぁ…なるほど。これ単品だと派手に視えるが…確かにこの色のジャケットを合わせると落ち着いて見えるな」
「…ん」
素直に感心するドイツに胸がざわざわして、頬が熱くなる。
「こういう服は俺には似合わないだろうな」
「…んなこと…ねーんじゃねぇか」
「そうか?」
少しだけ肯定的な言葉を口にしてやると、彼は嬉しそうな顔をした。
…ますます頬が熱くなる。
チクショウ…こいつ一体俺をどうしたいんだよ。
「おま…えは…体格いいし…その…」
その先は上手く言葉にできなかったので、俺は一つの服を選んでドイツに押し付けた。
「こ、これか。だ、ダンケ」
チクショウ。
なんだってそれだけでめちゃくちゃ嬉しそうな顔してんだよ…。
意味…わかんねーし…。
「こんな感じの服はこれまで選んだことが無かったが、お前が選んでくれたんだから間違いないだろうな」
「……」
しらねーよ、ばか、ちくしょう。
「あぁ、ついでにジャケットも選んでもらえないだろうか…この服に合わせるものを…」
「……」
くそ、そんなもの自分で選べよ!俺はお前の洋服とかどうでもいいし…クソォ…。
「……ん」
「あぁ…。さすがだな…これならフランスにも馬鹿にされないだろうな」
だからなんでそんなに嬉しそうにするんだよ…。
俺が意地悪で適当なジャケットを選んでるとかおもわねぇのかよ…。
なんで信用しきってんだよ。
「早速購入してくる」
って…それ、値段みたのかよ!ブランド物だし、めちゃくちゃ…べ、別にアイツの金だからどうでもいいんだけど…。
クソ…本当に調子狂われっぱなしだし…。
頭がぐしゃぐしゃだ。
「ロマーノ、お前は何か買わないのか?」
「俺は別に…」
「そうか…?」
「今日は別に見るだけだった…し」
なんか…まともにドイツの顔が見れない…。
ま…それは、今日に限ってってことじゃない…ん…だけ…ど。
………
………
………っつか…なんか言えよ。コンチクショウ…。
「ロ、ロマーノ」
「な、なんだよ」
上ずったような声にドイツを見ると、彼は緊張しているのか難しい顔をしていた。
「そ、その…だな。も、もし暇ならば…で、いいんだが」
「お、おう」
…ドイツの緊張が伝染ったのか、俺もまたドキドキしてきた。
「その…む、無理にとは言わないんだが…」
「おう…」
なんなんだよ、この雰囲気は…。
「ゆ、夕食なんだが…もし…よければ…一緒に行かないか?」
よし、言い切ったぞ…っというような顔をしたドイツに俺はカッと顔が赤くなったのがわかった。
だって…っつか、えっと…。
なんで俺がドイツなんかと飯食わなきゃいけないっ…っつか…馬鹿弟は一緒じゃなくていいのか…っていうか…お前は俺が嫌いだったはずじゃねぇか…ってか…俺と一緒に食ってもとか…
「…奢り…だよな?」
違うだろ、俺…っとか思ったけど、「もちろんだ」と本当に嬉しそうに言われて、俺は何も言えなくなってしまった。
…くそぉ…。
飼い主の前で尻尾振ってる犬みたいにしやがって…。
俺の調子を狂わせやがって。
顔は熱いし、心臓は痛いし、まともにドイツの顔みれねぇし、なんか口まで回んないし…。
「お前のせいだ」
小さく呻くように言った言葉は、残念ながらドイツに届くことは無かったようで…。
ドイツはただ嬉しそうな顔で俺を見ていた。

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