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攻略するつもりは無かった の続きのような感じ
出来上がってから。…と思ったが…どうなんだろう…苦笑

試験が近いらしい。
彼は学校が終わると図書館に直行し、そこで7時の閉館まで勉強をし、家に帰ると部屋に閉じこもってしまう。
家事だってここ一週間は殆ど俺任せ。
でも俺は理解があるし、普段はあいつに世話になりっぱなしだしそれについて文句をいう気はさらさらない。
 *

だけど。

 *

ふと気づくとカレンダーを見ていた。
今月のカレンダーは、水曜日から1が始まって、木曜の30で一ヶ月が終わっている。
今日は8で、俺が睨んでいるのは15。
何故15?
疑問は1秒後に解けて、あぁっと納得するどころかムッとした。
15はあいつの試験が終わる日だ。
ということは…まだ一週間以上ある。
でも、さっきも言ったように別に家事が億劫だからってイラついているわけじゃない。
俺は心の広い男だ。
……そこそこ。

 *

本日の料理

若鶏の狩人風
バジルポテトのサラダ
ワインゼリー

味はめちゃくちゃいい。あたりまえだけど。

 *

料理を作りルートヴィヒの部屋をノックすると、「あぁ」とくぐもった声で返事があり、間もなく参考書を片手に彼は部屋から出てきた。
掛けている薄いメガネは勉強の時のみ使用しているもの。
席についた彼は俺が睨むと参考書を伏せたが、頭の中は政治学の事でいっぱいらしい。
彼は黙々と食事を口に運び、ひたすら噛んで飲み下す。
料理の感想なんて一言もない。
もちろん俺との会話も皆無。
まるで冷え切った夫婦。
だけど俺は心が広いから、まだ許してやる。
ムカつくけど。かなりムカつくけど。熟れきったトマトを顔に押し付けてグリグリしたい程度にはムカついているけど。
まだ我慢してやる。
だって今度の試験ってのは大事なんだろう?
俺にはよくわかんないけど。大事って言ってたからよっぽど重要なんだろう?
夢を叶える為に、いい点とんなきゃいけないんだろう?
あぁ、そうか。だったらわかった。
俺は理解がある男だ。だからまだ我慢してやる。

 *

でも。

 *

「待てコラ」
ジャガイモやろう。

夕食が終わって部屋に帰ろうとする男を呼び止めると、彼は一瞬身体を揺らしてゆっくりとこちらを振り返った。
そして俺の表情を見ると、困ったように眉を八の字にした。
「あぁ…悪い。片付けは…」
「そういうこと言ってんじゃねぇよ」
ぶっきらぼうに言い放つと、彼はますますこまったような顔をして部屋に向かいかけていた身体をまっすぐこちらに向けた。
「明日は俺が…」
「だからそうじゃねぇって」
言いながら俺は空になった皿を重ねてテーブルの端に寄せ、台拭きでテーブルを拭き上げると先ほどルートヴィヒが座っていたソファを指さす。
「おすわり」
犬に命令するように言う。
三人掛けのソファの中央におとなしく座ったルートヴィヒに、もっと向こうだと指事を出し俺は同じソファに席を移した。
「ロヴィーノ?」
「なぁ、ルールだ」
「ん?」
「ルールを二つ追加しようぜ」
これからもルームシェアをしていく上で。
「…あぁ」
何を言われるのかと不安そうな顔。
それを無視して俺は指を二本立て、彼に見せた。
「まず一つ。お前の試験中は、俺が家事は俺が代行する」
意見はあるか?というようにルートヴィヒを見ると、彼は何も無いというように首を横に小さく振った。
「もう一つ。夕食の後、眠るまでの時間は此処で過ごす」
今度は少し戸惑ったような顔をした。
「此処でだって勉強は出来るはずだぜ」
俺の言葉に彼は少し渋るような顔をしたが、やがてわかったと頷いた。
きっとこのテーブルとソファじゃ勉強しづらい…とか考えているんだろう。
ムキムキアホジャガめ。
「じゃぁさっさと勉強道具持って来いよ」
怒鳴りつけたいのをぐぐぐっと我慢して言うと、彼は人質替わりというように参考書をテーブルに置いて部屋へと戻った。
それを見て、俺は食器を流しの方へと運んだ。

辞書に参考書にノートに筆記用具。

ソファに座りなおした彼はまだ俺の言葉の意図に気づいていない。
ほんと…あの鈍感唐変木朴念仁野郎め。
どうせここじゃ勉強の効率が悪いとか、今からでもいいから家事の代わりに二つ目のルールを撤回してもらおうか、何だってこんなルールを持ち出したんだ…嫌がらせか…?…なんて考えてるんだろう。
あの堅物ムキムキジャガイモが!
この俺がここまでお膳立てしてやってんのに…!
これじゃ俺ばっかりが…ッと、そこまで考えて俺は舌打ちしたい気分になった。

あの野郎…。絶対に許さねぇ。

グーーーと握ったスプーンはちっとも曲がらなかったが、それを流しに捨てて俺はソファへと向かった。

ルートヴィヒは案の定、ちょっとだけ苛立ちのオーラをまとって勉強をしていた。
後ろからそっと覗いてみるが、文字が小さすぎて何書いてあんのかわかんねぇ。(っつか、たとえ見えたとしても、内容が分かる自信は1ミリだってないけど。)
振り向かないルートヴィヒを後ろから殴りつけたい気持ちになったけど、それはなんとか我慢して俺はソファを回りこんで彼の横に座る。
俺が座ったことでソファが沈み、いやでも俺の存在に気付かされたであろうにルートヴィヒはちらりともこちらを見ない。
本当にこの男、殺してやろうか…。
なんて思いながら横顔を睨みつける。
だが、お前が熱心に見つめている教科書を取って、そこらに放り投げる…なんて事はしない。
何たって心の広い俺だからな。
お前がそういうのを嫌うなんてことはよーく知ってるからな。
まぁ、そうしたところでお前が俺を嫌うことはないなんてことも知ってるんだけど。
なんて考えてたら、なんか知らねぇけど、眼の奥がじわっと熱くなって慌てて目をそらした。
落ち着け、落ち着け。
なんで俺がこんな変な気持ちになんなきゃいけねーんだよ。チクショウ。
おrは全然わるくねーし。
悪いのはこのデカブツだし。
チクショウ。
思い知れ。コンチクショウ。
俺は勢い良くソファに横になると、頭をルートヴィヒの腿に置いた。
するとルートヴィヒはビクンっと身体を震わせ、「おいっ」と文句を言いながらようやく俺を見た。
そしてそのまま何かいおうとしたようだが…何故か俺の表情を確認した途端、困ったような表情になり、ついで柔らかく微笑んだ。
クソ。
コンチクショウ。ようやく気づきやがったか。
「死ね、ジャガイモ」
思わず…というか、ようやく…というか、それとも、とうとうというか…とにかく悪態をつくと、彼はペンを置いて俺の額に手を置いた。
厚みのある暖かな掌。
腹がたったので腹に一発拳を入れてやったのだが、彼はうめき声一つ上げなかった。
「ロヴィーノ…悪かった」
「…っるせぇ。分かってんだよ」
今度の試験ってやつがめちゃくちゃ重要だって事くらいな。
俺にかまってる暇なんかねぇんだってことくらいな。
だから優しく撫でやがるなコンチクショウ。でも、だからって、撫でるのやめんなよ、コノヤロウ。
「この埋め合わせは…」
「黙れ」
硬い腹に顔を押し付ける。
腹立たしいのに、何故か泣きたい気持ちになる。
「試験が終わったら…」
「うるせぇっていってんだろう」
「どこかに出かけよう」
「………」
「お前が行きたいところへ。何処へでも。考えていておいてくれ」
「………二言はねぇな」
「あぁ」
試験が終わったら、ラスベガスのモンテカルロのスペシャルスィートに泊まってカジノ三昧だ…っていうのはさすがにキツイだろうから、とりあえず…
「温泉にいきてぇ…」
「了解だ」
…クソ。
俺は心が広いからな。
コレで勘弁してやるよ。
とりあえずはな。

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