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酷薄タイム

米と独をなんとか仲良くさせてみたいのだが、上手くいかない。
今回も同じく。 駄文

「君のお兄さんはちょっとアホなのかい?」

すたすたと寄ってきたと思ったらアメリカは挨拶もなしにいきなりそんなことを言った。
一瞬ムッとしたドイツだが、特に返す言葉が見つからずに愕然とした。ドイツは兄の事を尊敬している。愛している。だが、ちょっとアホか…と聞かれると…そうかもしれないと思ってしまったのだ。
何も返さないドイツを不思議そうに見ながらアメリカは言葉を続ける。
「君のお兄さん、さっきエントランスのところで喧嘩をしてたんだぞ」
「……は?」
「ホテルの従業員とか上司とか、そのSPとかが大慌てしてたんだぞ!」
「なッ…そ、それは本当か!?」
「俺は時々嘘をつくけど、今度は本当なんだぞ!」
えへんと胸を張るアメリカ。
それを無視してドイツはエントランスの方へと駈け出した。

「おぉい、待ってくれよ」
追ってきたアメリカを従えてエントランスにやってきたのは、部屋を出た5分後。
大理石でつくられた天井の高いエントランスに二人がついたとき、まだその場は騒然としていた。
スーツ姿の何人かが立ち話をしている。その中に不機嫌そうなオーストリアの顔を見つけてドイツは彼の方へと向かった。
「オーストリア、兄さんは?」
「ドイツ…。あなたがついていながら、なんという醜態ですか」
「す…すまない。おとなしくしていると約束したから連れてきたんだが…」
「全く、彼は隠居の身とはいえ、他の人々にはあなたの半身だと思われているのですよ。分かっているんですか」
「わ、分かっている」
なぜ説教されなきゃいけないんだ。
そう思いながらも、小さい頃から何かと面倒を見てもらった覚えのあるオーストリアにはドイツは強いことは言えない。
これは長くなりそうだ…と思ったとき、
「で、彼らはしょっぴかれちゃったのかい?」
アメリカが空気を読まず発言した。
オーストリアはその言葉で初めてアメリカがいる事に気づいたらしく、柳眉を潜めそれから「あなたも人事じゃないでしょう」と厳しい口調で言った。
えっ…とドイツはアメリカの方を見るが、彼は特に何も反応を示さない。
「あなた自身が否定していても、歴史的にあなたとあの男は関係が深いんですよ。だから…」
「ちょ、ちょっとまて。なぜアメリカも関係があるんだ?」
思わずドイツが聞くと、二度も話の腰を折られたオーストリアは不機嫌そうな顔をしたあとため息をついた。
「ドイツ。あなた何も知らないんですか」
だから様子を見に来たんだ…とは、賢いドイツは言わない。じっと黙ってオーストリアの言葉を待つ。
「あのオバカさん、イギリスと喧嘩をしたんですよ」
「イギリス…とか」
それを聞いて、ドイツはお前の兄こそアホじゃないのかっというような視線をアメリカに送ったのだが、彼はそれを綺麗に無視する。
「えぇ。まったくいい年をして。反抗期の高校生じゃないんですから…」
ポコポコと怒るオーストリアの回りくどい話によると、原因が何かまではしらないが彼らはここで大立ち回りを演じたらしい。
大声で怒鳴りあい、それはすぐに殴り合いに変わった。
お互い指一本で人殺しが出来るように鍛えられた元軍人。
それはそれは壮絶な喧嘩であったらしい。
被害は大きな花瓶がひとつと、運悪く彼らに突き飛ばされてヒールを折った女性が一人、そして彼ら自身。
「全く何をしているんだ…あの人は…」
「ハハハ。全くしょうがない奴らなんだぞ!」
「アメリカ、言っておくが騒ぎの片割れはお前の兄でもあるんだからな?」
ジロリとドイツが睨むと、アメリカはひょいと肩をすくめた。
「ちょっと、貴方達まで喧嘩しないでくださいよ」
「するわけないじゃないか!俺とドイツは友達だからね!」
「…そうありたいものだな」
「もちろんさ!」
さぁ握手だ!っと手を出すアメリカにドイツは頭痛を覚えながら、とりあえず手を握ってやる。
イタリアと長く付き合ってきたからこそできる大人な対応かもしれない。
ドイツは妙な疲れを感じる。
「それで…兄さんとイギリスはどこにいるんだ?」
「…迎えに行くつもりですか?」
「…一応な」
お前もそうだろう?というようにドイツはアメリカに視線を流すと、先程の握手がよかったのかアメリカは今度は無視をせずにコクンと頷いた。
「別に俺はイギリスを兄なんかだとは認めちゃいないけどね!」
「そうですか…。まぁいいでしょう。彼らは先ほど警備員たちに引っ張られてスタッフルームだとかに行きましたよ」
「スタッフルーム?」
「えぇ、ほら、あのカウンターの向こうの部屋ですよ。…さすがに今は反省しているでしょうが…ちゃんと説教はしてあげなさい」
「あぁ」
「それから…会議には遅れないように」
「わかった」
すこしばかり小煩いオーストリアの言葉にドイツはいちいち律儀に返事をすると、アメリカを連れて教えられた部屋の方へと向かった。

「俺達がみもとひきうけにんってやつだろう?」
アメリカが弾んだ足取りで言う。
「…身元引受人だな。全く…お互い手のかかる身内を持つと大変だな」
「俺は別にイギリスのことは身内だとは思ってないんだぞ」
「だが、向こうは思っているみたいだ」
ドイツが少しだけからかうように言うと、アメリカは怒ったような…それでいて照れたような顔をして「迷惑な話しさ」と返した。
「出来の悪い兄を持つと、弟が苦労をする」
半分冗談、半分本気で言うと、
「まぁそれには同意してやってもいいんだぞ、何しろ君は俺の友達だからね」
と、アメリカはいたずらっぽく返した。
絡みあう二人の視線にこれまでにない連帯意識のようなものが芽生えた。
なんというか、同志とまではいかないが、同じような境遇をもつ仲間というか…。

そしてその連帯意識は、スタッフルームとやらに入った途端に発揮されることになる。

件の二人はすでに反省してしょぼくれているだろう…というのがドイツとアメリカの予想だったのだが、それはいとも簡単に裏切られた。
それというのもスタッフルームの二人は、半ば男達に羽交い絞めにされながらも相手に向かって口汚い言葉を唾を飛ばしながら吐きつけていて、今にも男達を降りきって殴り合いを始めようというような具合だったのだ。
スーツはボロボロだし、顔にはアザが出来ているのが見える…。
例えるならば、首輪から伸びる鎖をギンギンに引っ張って吠え合う猛犬二匹。

「なぁドイツ。やっぱり俺はこんな兄を持った覚えはないんだぞ」
「……奇遇だな…、俺も兄が居たような気がしたのは気のせいだったようだと思ったところだ」

彼らは苦々しい顔を見合わせ、同時に踵を返し部屋を出た。
そして、寄ってきたホテルの従業員に遠慮無く警察を呼んでくれてかまわないとつげると、二人は会議室へと足を向けた。

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