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激戦ポジション 02

俺は何故こんなところで、こんな事をしてるんだろう?

ドイツはアメリカに…ルートヴィヒはアルフレッドに片腕を取られてそれをふりあげて、若者たちの歓声を浴びながらぼんやりと考えた。
明日は会議。
特に重要なことを決めるわけでは無いが、前回の会議で決められた事の確認をしなくてはいけないのに…。
なんだって自分は、裏通りに作られたストリートファイトのステージで、若い男相手に五戦も喧嘩して、そして勝利を祝われているのか…。ドイツには我が事ながらさっぱりわからなかった。
連日のハードスケジュールで凝り固まっていた体はほぐれ、気分もすっきりしたような気がするが…。
「ほら!君も歓声に応えなよ!」
ニコニコと楽しげに微笑み手を振るアルフレッドに顔がひきつる。
「おい、アルフレ…」
「イェーイ!どうだい!俺の友達は強いだろう!?でも、俺が一番強いんだぞ!」
「おい…」
「なんたって俺はヒーローだからね!」
「話を…」
「でも試合には出ないんだ!だってヒーローは普段は実力を隠しているものだろう!」
アルフレッドのスピーチに若者達はますますボルテージを上げる。
獣めいた歓声が耳をつんざき、これは警察がくるのでは…とルートヴィヒが心配を始めた頃、
「じゃあ、次はレースにいくんだぞ!!」
とアルフレッドがルートヴィヒを完全に置き去りにしたまま宣言した。

「おい、レースってなんのことだ?」
車に戻ったルートヴィヒが聞くと「レースはレースさ!」とほほえみ、ギュンっとタイヤをきしませるような乱暴な運転で車を出すと他の車と一緒に走りだした。
「お、おい!アルフレッド!」
「だからレースだよ!公道レース!知らないのかい?」
「…そんなものになぜ…」
「楽しいからに決まってるじゃないか!あ、でも今回、君は助手席でおとなしくしてるんだぞ!今度は俺が主役だからね!」
「なっ…おまえ、今が何時かわかってるのか!」
「ん?あぁ、もうすぐ1時になっちゃうね!でも大丈夫さ!」
「何が大丈夫だと言うんだ!」
「この車はこれでもレース仕様のエンジンを積んでるんだ!」
「だれがそんな心配をしている!」
「あぁ、お腹の心配かい?そうか、君は運動をしたからね!だったら…あ!ちょうどいいんだぞ!」
「うわっ!」
アルフレッドは道端に24時間営業のバーガーショップを見つけた途端、ハンドルを乱暴に切った。
おかげでタイヤが縁石に乗り上げ、ゴトンと凄い音と共に揺れて、ルートヴィヒはシートベルトをつけているにも関わらず窓に頭を打ち付けるはめになった。
「アルフレッド!」
「DDDD!細かいことは気にしないんだぞ!さ、適当に買ってくるからちょっと待ってるんだぞ!」
アメリカは上機嫌に言ってギッとブレーキを踏み車を停めると、さっさと車を降りると店の方へと歩いて行った。
その背中を見送り、ルートヴィヒはため息をついた。
もともと話を聞かない、唯我独尊で傍若無人なところがある男だが、今日のそれはいつも以上だ。
アルコールの臭いはしなかったから酒によっているというわけでもないだろうに…。
所謂ナチュラルハイというやつだろうかと考えるルートヴィヒには、国の中でも比較的年齢の近い“ドイツ”と遊べるということでアルフレッドが張り切っている…などということはもちろん分からない。
実の所、一方的に…ではあるが、アルフレッドは同じように頭が不幸な兄が居ることや年齢が近い事から、ルートヴィヒに対して親しみを持っているのだ。
そして出来るならば、仲良くなりたいと常々思っていたのだ。

しばらくして戻ってきたアルフレッドは大きな袋を抱えていた。
中身は油がギトギトのフライドポテトがたっぷりと、ハンバーガーが山ほど。そしてLLサイズのコーラが二つはいっていた。
アルフレッドが車に乗り込んだ途端、チープな臭いが車内を満たす。
受け取った紙袋の中身を見て
「見ただけで腹がたまるな…」
うんざりとルートヴィヒは言った。
「それはすごいな!なんて便利な体をしてるんだい!君は!」
「お前は比喩というものを…」
「おっと、のんびりしてる場合じゃないんだぞ!」
早くいかないと、レースに間に合わない。
そんなことを言ってアメリカはまた乱暴に車をスタートさせ、縁石をゴットンにゴットンと乗りあげて通りへと出た。
そして通りに出た途端、ぐんとアクセルを踏み込みスピードを上げる。
「お前は…もう少しおとなしく運転できないのか…!こんな運転ではタイヤが…」
「おっと、そうだ!BGMを忘れていたんだぞ!」
そういってカーオーディオに手を伸ばすアルフレッド。
途端、爆音で流れだしたのは所謂ロックだ。
腹に響く重低音、嵐のようなドラム、疾走するギターに、がなるように歌うヴォーカル。
そのあまりにも乱暴な音楽に、ルートヴィヒは呆れた。
そして音楽に文句をいうきは無いが、さすがにこの時間にこのボリュームは…と思ったのだが…
「この曲いいと思わないかい!まだインディーズだけど絶対売れると思ってるんだぞ!俺のオススメさ!」
君には特別に聞かせてあげるんだぞ!
頬を興奮に赤らめ、自慢げに胸を反らすアルフレッドを見ていると文句が言えなくなった。
ルートヴィヒはフーっと長く息をつくと、背中をシートに完全に預け文句の代わりに「そうだな…」と返した。
その言語は音楽にかき消されてしまい、「なんて言ったんだい?!」と聞き返されたが、
「だから……仕方ないから今日はとことん付き合うといったんだ!」
声を張り上げてルートヴィヒが答えると、アルフレッドはクククっと肩を震わせ「いい答えなんだぞ!」と本当に嬉しそうに笑った。
そして、
「さぁ、今夜は寝かせないぞ!!」
というアルフレッドの…当たり前なのだが…色気もへったくれもないそんな台詞に、ルートヴィヒもまた思わず笑ってしまった。

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