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科学反応

捕まえた。
そう思ったのに、あのトム(雄猫)はまた俺の手をすり抜けて行った。

 *

朝起きたとき、隣に寝ていたはずの男の姿はなかった。
俺はすぐに部屋の中を探しまわったが、広くもない部屋の中1分と経たず、彼がもうここにいないことがわかった。
それがわかった俺はむかむかとする。
だけどそれがどういう感情から来たむかむかなのかはよくわからない。
ただ、あぁ、結局変わらなかったんだな…と思った。
でもそれは、怒りから来る「あぁ、結局変わらなかったんだな」なのか、悲しみから来る「あぁ、結局変わらなかったんだな」なのか、諦めから来る「あぁ、結局変わらなかったんだな」なのか、安堵から来る「あぁ、結局変わらなかったんだな」なのか分からない。
ただ、むかむかした。
テーブルの上に残された彼が昨夜飲んだコーヒーのカップを割ってしまいたい衝動にかられ、結局、いつも以上に慎重に流しに運んでしまった。
そして、流しに置きっぱなしになっていた食器に自己嫌悪が募る。

結局、変わらなかった。

泣きたいような気がしたが涙は出なかった。
だから俺は代わりに煙草に火をつけた。
煙を吸い込んだと同時に肺は軽くなった。
だけど、腹のむかむかは収まらなかった。

 *

結局、変わらなかった。

そう思っていたから…気づくのが遅れた。

 *

最初は気にもしなかった。
あいつから一週間ばかし連絡が途絶えることなんてよくあることだし、俺もちょっと連絡しづらい事情があったこともあったから、気づいてなかった。
だから、バイト先のカフェテリアのウェイトレスの子(今は切れてるらしいが、エースの数多くいる元カノの一人)が、
「そいえば、近頃エース見ないよね」
という言葉で気づいたくらい。
いや、違う。
この時だって、気づいてなかった。
俺は、まさかまだこの女とも会ってたのか…と、このときは思っただけだった。
だから、俺が気づいたのはその次。
「まだ会ってるのか?」と苦々しく聞いた俺に、彼女が言った言葉。
そしてそれに続く会話。

「違うよ。あ、知らない?彼、行方不明だって」

『行方不明?』
『そうそう、メグとかユキとかメリーとか探してるんだけど、全然つかまんないって』
『また誰かの家に転がり込んでるんじゃないのか?男か女かしらないけど』
『でも!それでも二日くらいで連絡つくよ、いつもは』
『そう…か。確かに』
『でっしょ、電話掛けてつながんなくても二日くらい経てば普通に通じるし』
『で、誰も見てないのか?』
『そう、みんなで探してんだけどみつからないの。もしかしたら気が狂ったヤツに監禁されてるかもって言ってるよ』

まさか。

真っ青になった顔でひきつりながら笑って否定して、電話をかけるためにバックヤードに駆け込んだ。

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