スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

攻略するつもりは無かった 07

今日は俺が料理をつくる番だ。といっても、別に当番が決まっているわけじゃないけど。
黒のエプロンをつけ、キッチンでラビオリを使った料理(手作りラビオリの特性トマトソース添え+ふわふわ卵+サラダ)を作り、リビングへと持っていくと…
「お待たせ…って、真剣な顔でなにを見てるかと思えば、動物かよ」
ルートヴィヒはソファに座り、顎に手を当て真剣な顔で…アニマル番組を見ていた。
今はペットの投稿コーナーなのか家の中を駆け回る子犬が映っている。
ピクリとも動かないもんだから、報道番組でもみているのかと思えば…かわいいわんちゃん?
ギャップありすぎだろう。
あ、けど…
「そういや、犬飼ってるって言ってたっけ?」
なんかいつだったかそんな話が出た気がする。
「あぁ。三匹な」
「どんな犬?」
「ロットワイラーと、混血のシェパードと同じく混血のドーベルマンだ」
俺はそれらの犬種を頭に浮かべ、それから隣にいる男とその兄を思い浮かべ微妙な気持ちになる。
「なんつーか…」
ムサイというか…。
「華がないな」
ラビオリを口にしながらいうと、彼は意味がわからないのか不思議そうな顔をした。
「ロマーノ、お前は何か飼ってなかったのか?」
「ない。けど、近所に野良猫はたくさんいた」
俺の家の周り…というか、街にはやたら猫が多くて、そして猫好きも多かったから街全体で猫を飼っているような感じだった。
黒いのとか、ブチとか、白とか、キジとか、白黒とか…いっぱいいて、弟は目に入れても痛くないってくらいにかわいがっていたし、俺だって気が向けばかわいがっていた。
塀の上で寝てる猫とか、階段のところでじゃれあってる猫とか、窓から勝手に入ってきて夕食をつまんでいく猫とか…。
なんか、そんなことを思い出したら、家を離れてそんなに経たないはずなのにやけに懐かしく感じた。ここにも猫はいるけど、野良猫は近寄ってもすぐに逃げちまう。
別に寂しいとか思ってないけど。
「そういえば、ここはペットOKらしいぞ」
「え、そうなのか?」
「あぁ、吠える犬はダメだとかいう規則はあるらしいが…」
上の階の人はグリーンイグアナを飼っていて、隣の住人は猫を飼っているらしい。
それを聞いて、俺はちょっと呆れた。
俺は隣に誰が住んでるかなんてこと全く知らないっていうのに…
「何、ご近所付き合いしてるんだよ」
「む…しかし、こういうことは大事だぞ」
「かもしれないけど…」
「おかげで、野菜が新鮮な店、肉が安い店、ジャガイモの種類が豊富な店は抑えられた」
とても晴れやかな笑顔で拳を握るルートヴィヒ。
「…あ、そう」
お前は主婦か。

画面の中ではぽっこりしたお腹がなんとも可愛らしいライオンの赤ちゃんが、よたよたと母親のもとに歩いている。
動物園で今年生まれた赤ちゃん特集…らしい。
俺も別に動物は嫌いじゃないから、ルートヴィヒの隣でぼんやりとテレビを見ていたんだが…そのうちに、ルートヴィヒの顔を見てる方が面白いということに気づいた。
コイツは…本当に動物が好きなのだろう。
なんだかいつものイカツイ顔がやわらかい。
いや多分こいつをよく知らない人間が、今のコイツを見てもそんな風には見えないはず。
それどころか、あの可愛い動物たちをビニール袋にいれて、コンクリートに叩きつけようと考えているようにしか見えないかもしれない。
だが、まぁ…そこそこ付き合いが長くなってきた俺にはわかる。
一見睨んでいるようにみえるが、眉間にシワはないし、青い目がキラキラしてるし、口角はやんわり上がっているし…。
間違いなく…こいつは今、頭の中がお花畑だ。
しかもめちゃくちゃ集中してるし…。
自慢の手作りラビオリがほとんど手をつけられないまま冷えていくのは、少し…いや、かなりムカつくが、今ならちょっといたずらしてもバレないかもしれない。
俺はトイレに行くような振りをしてソファから立ち上がると、そっとルートヴィヒの後ろに回った。
さて、何をしてやろうか?
トマトをぶつけてやろうか、それとも付け髭でもつけてやろうか。
いや、ここはマイマートの刑か、メイド服…は無理だろうから…と考えていると、ふとルートヴィヒが後ろになでつけている髪が目に入った。
いつも綺麗になでつけてある髪…。
俺はまだ彼が前髪を下ろしたところを見たことがない。
それに気づいたとき、俺の手はもう勝手に動き出していた。
触れた髪は…思ったよりも柔らかかった。
ガチガチに固めているのかと思いきや、そういうわけではないらしい。
ぽふぽふっと撫でてみても…ルートヴィヒに反応はない。そんなに山羊の子に集中しているのか。
ぽふぽふ、もふもふ、くしゃくしゃ、なでなで…
何も言わないものだから、調子にのって髪をばらばらに崩してやって、それでもまだ撫でまくっていると…

「兄さん!いい加減にしろ!」

突然、バシッと手を捉えられ怒鳴られた。

振り返ったルートヴィヒは俺を見ると、頭に角でも生えているかのような鬼の形相をして、次に「しまった!」というような顔、それから真っ赤に染まった顔っと、立て続けに表情を3回も変えた。
多分1秒くらいの間に。
しかもその顔は、前髪が降りているせいかいつもより若く…というか歳相応に見えた。
「おぉ…」
俺が思わずそんな声を出すと、彼は首まで真っ赤にして「忘れろ…!」と言い、ソファから立ち上がると部屋に逃げこみ、そのまま朝まで閉じこもってしまった。

コメントの投稿

非公開コメント

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。