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攻略するつもりは無かった 06

『ルッツを泣かしたら、お前をきりたんぽ鍋にしてやる!』

そんな謎の警告文(?)を俺の部屋に放り込んで、ギルベルトが帰っていってから一週間ほどが経ったある日、俺達の部屋に一つの小包が届いた。
それは画家を目指している弟からのもので、新居(?)にと描いてくれたらしいヒマワリの絵が入っていた。
弟は画家を目指しているだけあって昔から絵が上手く、届いた絵も部屋を見たことが無いはずなのに部屋の雰囲気にぴったりのものだった。
鮮やかなオレンジと対比をなす完全無比の青。
額縁はさすがにちょっと安っぽかったが、そこまで要求するのは酷というものだろう。
ルートヴィヒもとても気に入ったらしく、ひとしきり褒めた後、今は難しい顔をして絵を持ち、部屋中を歩き回って何処に飾ろうか考えている。
インテリアには厳しい俺が「好きなとこに飾れよ」と許可を出したからだ。
俺は先程からソファに座り雑誌を読むフリをしながら、檻に入れられた熊みたいに部屋の中をウロウロしているルートヴィヒを見ているのだが、可笑しくてたまらない。
機能とか効率性とかで、冷蔵庫を買うときも、ベッドを決めるときにもこうと決めれば迷いが一切なかった男が、「こちらの壁か…いや、それとも」とぶつぶつ言いながらもう一時間近く考えている。
これがおかしくないわけがない。
くつくつと笑っていると、やがて自分が笑われているのだと気づいたらしいルートヴィヒは、顔と言わず耳まで赤くして一人用のソファに腰をおろした。
「っで、決まったのかよ」
「……まだ考え中だ」
「ふぅん。家具類を決めるときとは随分勝手が違うみたいだな」
ニヤニヤしながら言ってやると、彼はますます顔を赤くしてそっぽを向いた。
「し、仕方が無いだろう!コレには仕様書も取り扱い説明書もついてなかったんだからな…」
「仕様書…!取説!」
なんだそれは、いいわけか?
俺は腹を抱えて笑ってやった。
全く面白みのかけらもない男だと思っていたが、こんなに面白いやつだったのか。
「今度…図書館で絵画の飾り方のマニュアルでも借りてくる」
ごく真剣に言う男に俺は息も絶え絶えだ。
「お前…そんなの…自分の感性でかんがえろよ」
「む…そうは言うが…俺はこういうことは苦手なんだ」
「はは、みたいだな。でもおれだって絵画の並べ方なんて習ったことはないぜ。っつか、大半のやつはそうだろう」
自分がいいと思ったところに素直におけばいいんだとアドバイスしてみても、彼は納得がいかない…というより、自分の感性には自信がないというように眉を潜め、手に持った絵画を見つめた。
「そんな難しく考えることじゃないと思うけどなぁ…」
「分かっているが…性格的に出来ないんだ」
自分でもこういう時は不器用だと感じているのか、ルートヴィヒの表情は渋い。
「しかし、いい絵だな。お前はスタイリストを目指しているし、弟の方は画家か…。お前たち兄弟は芸術の方に才能があるらしいな。ご両親もそちらの方面で?」
聞かれて俺は首を捻った。
俺の母親は花屋農家の娘で、今も花屋で働いているし…父親はふらふらとしているだけで定職付いたことがない。
「あ、じいちゃんは女と酒が好きで、遊び人だったって行ってたな」
「それは…関係ないんじゃないか?」
眉尻を下げるルートヴィヒ。
もっともだ。
「お前は絵は描かないのか?」
「描かない。けど、成績はよかったぜ」
そう、弟みたいに好んで描くことは無かったし、コンテストに出品したり…なんて事はなかったが、高校レベルの美術ではいい成績をいつも貰えていた。
そのことを口にすると、ルートヴィヒは「羨ましい」と言った。
「俺は…美術のセンスだけは本当に皆無なんだ」
「そうなのか?完璧なお前にも欠点があるんだな」
「完璧…かどうかはしらんが、美術は苦手だ。授業で隣の席の人の顔を描くように言われたときは…」
「時は?」
先を促すと、彼は苦り切ったような顔をして「泣かれた」とボソリと言った。
「泣かれた?!ははは、そりゃすげー才能だな!」
俺が笑うと、彼はまた赤くなってそっぽを向いた。
ほんと、こいつ…思っていた以上に面白い。

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