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ルート55を北へ

題名に意味はない

「海軍さん、あそんでかない?」

そのセリフは、夜、裏通りを歩いているとよく掛けられるセリフだった。
いつもならそのセリフをスモーカーは無視してさっさと歩くのだが、この時は女の声に聞き覚えがあるような気がして思わず顔をそちらに向けた。
すると…店先に置かれた酒樽に腰掛ける若い女が一人。
テンガロンハット、黒くうねる髪、真っ赤なブラに包まれた豊満な胸、惜しげもなくさらされた腹と太もも、足の付根までの短いジーンズに、カウボーイブーツを履いた女は…
「…火拳…」
スモーカーの唸るような声に、女…頬にそばかすを持った女は愛嬌たっぷりに微笑んだ。
「よぉ、スモーカー」
「てめぇ…何のつもりで俺の前に姿現しやがった。殺されてぇのか」
低い声。
寄せられた深い眉間の皺。
それは普通の人間ならば腰を抜かして四つん這いで逃げ、豪胆なものでも顔色をなくすほどの迫力があった。
だが、アンと呼ばれた女はそんなものは毛ほども感じていない様子で、手をひらひらと振った。
「ははは、あんたに殺られるなら本望かもしれないな」
「なら期待に応えてやらなきゃいけねーな」
「それもいいけど、今日は勘弁してくれよ。それにあんただって今日は非番なんだろ」
「……んでてめぇが知ってやがる」
「そりゃ、たしぎちゃんが一人で部下数人引き連れて喋ってるのを聞いたからな」
「チッ、たしぎの奴…」
「まぁまぁ、そういらつくなって」
怖い顔が一段と怖くなる。
アンは笑いながら樽から降りると、スモーカーの横についた。
「行こうぜ」
「ぁ?」
「ほら」
腕を引かれ仕方なく歩き出すと、アンは腕から手を離し後ろに腕を組み、楽しそうに歩き出した。
「おい、火拳」
「アンって呼びなよ」
「チッ」
「ちょっとあんたに聞きたいことがあってね」
「聞きたいこと?」
「そう、あんたなら知ってるかと思って…」
そういってアンが口にのせたのは、近頃この界隈を荒らしまわっているルーキーたちの名前だった。
「それを聞いてどうする?」
「ん?もしかして、今回のあんたのターゲットってそいつら?」
スモーカーの声の調子が少しだけ変わったことに気づいてアンが下から覗き込むように見た。
スモーカーはそんな彼女の顔を手のひらで押しやるようにすると、「そんなところだ」と答えた。
「だが、優先順位で行けばお前さんが上だ」
目の端をキラリと輝かせて伸ばされた手を、アンはスルリと避ける。
一瞬だけ、二人の目が交接するが、すぐに離される。
お互い、相手がとてもやりにくい相手だと知っているのだ。
「熱烈な言葉、胸があつくなるね」
「はん、だったら胸焼け起こして死んじまえ」
「ははは、私にそれを言うか」
アンは手のひらを炎に一瞬だけ変え笑った。
「あんたこと、私に焦がされちまいな」
「冗談を言うな。俺だって相手を選ぶ権利はある」
「お、そう返すか」
息のあった言葉遊び。
面白そうにクツクツと笑ったアンは、スモーカーのたくましい腕にぎゅっと抱きついた。
「おいッ」
「じゃぁ、期待に応えてやらなきゃなぁ」
彼女は彼の腕に胸を押し付けたかと思うと、次の瞬間、その腕を引いて横にあったちいさな路地へと彼を連れ込んだ。
「おい!火拳!」
「アンって呼んでといったはず」
「何処に連れていく気だ」
「あぁ?美女とくたびれた親父が行く先って言ったら一つだろう?」
「誰が美女だ!誰がくたびれた親父だ!」
「あれ、噛み付くとこはそこなんだ?」
黒曜石の目をきらめかせ、「じゃぁ問題ないな」と彼女はまた腕を引き、今度は一件の安宿へと彼を導き入れた。
「いら…「目的は情報か?」」
宿屋の主人の言葉に被さるようにスモーカーが言うと、アンは腰のポシェットから金をポイポイとカウンターに放り「だったら?」と口角を上げる。
「俺を買収する気か」
「非番なんでしょ?」
「関係あるか!」
「お固いねぇ」
ニヤニヤしながらアンは鍵を受け取る。
「いいじゃないか。どうせ船(海軍)じゃ遊べないんだろう?」
「余計なお世話だ」
「はいはい」
アンは鍵を受け取ると、渋る割りに素直に言うことを聞くスモーカーを連れて二階へと上がる。
部屋に入ったアンは明かりをつける事無く、スモーカーの首にしがみつくとその唇を奪った。
スモーカーの身体はその一瞬こわばったが、すぐに彼の方から積極的に舌を絡ませると細い腰に腕を回した。
そして、アンが息を切らしようやく上がった息を履いたときには、彼女はベッドに横になっていた。
そのことにアンは一瞬驚くが、すぐに視界に入ってきた男の顔に不敵な笑顔を見せる。
「んじゃ、料金は先払い…ということで」
アンの言葉にスモーカーは忌々しげに舌打ちをすると、獲物を仕留めんとする狼のように彼女の首もとに噛み付いた。

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