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恋人はステータス

パラレル SF?近未来系?
よみかえさない

火村が名波の部屋に行くと、彼の部屋には見知らぬ若い男がいた。
薄い茶の髪をした線の細い、優しげな顔立ちをした男だ。
「誰だ?」と聞くと、名波は面倒そうにその若い男に目をやり、「あぁ」と適当な返事をした。
「新しい“レンタル”」
名波はレンタル狂だ。
親が資産家だということもあるだろうが、高いレンタルを切れ目なくそばにおいている。
男女に区別はなく。
恋人としておいているのかというとそうでもなく…もちろん、そういうこともあるだろうが、大抵は手伝い替わりや、ただ居候としておいているだけとか…そんな感じだ。
「前の奴は?」
「あぁ、優香?あいつなら昨日切れた」
「ってことは、こいつは今日からか」
「そ」
そっけなく応えた名波は、パソコンのモニターに向き直りカタカタとキーをたたき出す。
火村は椅子を引っ張り出してきてそばに座ると、かばんからファイルを取り出した。
「なにそれ」
「何って…わかってるだろう。調べて欲しい。至急」
「至急?」
「至急」
「支給かよ」
名波がブツブツ言いながらファイルを受け取ったとき、キッチンにいたアリスがお盆にカップを二つのせてやってきた。
臭いからすると、コーヒーか。
「棚の上にクッキーあったろ。缶ごともってきて」
コーヒーを置いたアリスに名波が言うと、「おん、わかったわ」と言ってアリスがキッチンへともどっていった。
「聞いたか?」
「ん?」
「あいつ関西弁なの」
不機嫌そうな顔で言った。
火村は全く気にならなかったが、名波はあまり関西弁が好きではないのかもしれない。
「それに、女だと思ってたのに、男だった」
「カタログで選んだんじゃないのか?」
「選んだ。名前だけで」
「名前?」
「あいつ、アリスっていうの」
アリス。
そりゃたしかに。
「なんや、俺の悪口か?」
戻ってきたアリスがちらかったテーブルの上にクッキー缶を置いて口を尖らす。
「別に、チェンジしてもよかったんやで」
「しかも生意気」
「なんやねん」
アリスは缶の蓋を開けると、真ん中に赤いジャムのついたクッキーをとってかみついた。
「その時は、まぁいいかと思って契約したんだけど、こいつと一ヶ月くらさなきゃいけないかと思うと欝だ」
「違約金がかかるのか?」
「そ、別に金はいいんだけど、悔しいだろう?」
「そんなものか」
「そんなものだ」
俺達の会話をどう思っているのかはしらないが、アリスは特に気にした様子もなくクッキーを食べ、そしてテーブルの上に伏せてあった文庫本を読み出した。

「あ、そうだ」

しばらくしてキーをものすごい速さで打っていた名波が口を開いた。
「お前、アリスいらない?」
「は?」
「だからさぁ、一ヶ月、こいつ預かってよ。金はとらないから」
どう?っと言う名波に、「又貸しは禁止やで」とアリスが文庫本から顔を上げて言った。
「なんだよ。固いこというなよ」
「アホ、そんなん認めたら俺が罰せられんねんで」
「バレなきゃいいじゃねぇか」
「俺には発振器うめられてん知らんわけやないやろ」
アリスはそういってトントンと胸を指で叩いた。
「あー…そうだったかぁ」
「そうやで、一ヶ月ちゃーんとお世話になります」
「けど、やだ」
「はぁ?なんやねん、それ」
ぽんぽんと会話を重ねていく二人。火村が傍でみている分には、とても仲が良さそうにみえるのだが…よくよく見ると、名波は嫌がっているようにも見える。
「俺、関西弁にトラウマあるんだよ」
「トラウマ?」
「そ、スゲーーー性悪女にひっかかったんだよ。その女の喋り方が、お前そっくり。なんか思い出すからヤ」
「そんなこと言われても…」
アリスは眉をぎゅっと寄せて、口を尖らせた。
「契約書交わした時点で一ヶ月の契約はスタートやねんで。こっちの粗相が無い限りは、違約金はらってもらわな、俺、かえれへんし」
「っといってもなぁー…」
名波は天井を見上げ、それから火村の顔を見た。
「俺、お得意さまだしさ…ちょっとくらい無理はきくとおもうんだよな」
「それで?」
「店にいって、ちょっと頼んでみようかな。俺の友人が、アリスをどうしても貸して欲しいって言ってるって」
「…その友人ってのは俺のことか?」
「そうそう。で、俺は二体目を手元において、アリスをお前のところに置く。どう?」
「どうって…」
「お前、仕事帰ってから夕飯つくるの億劫とかいってたじゃん。こいつ、料理くらいは作れたぜ」
火村がアリスをちらっと見ると、アリスはなんだか複雑そうな表情をして名波の方を見ていた。
「お前だって、お前を嫌ってる俺より火村の所の方がいいだろ?」
「…お客さんはだれだって一緒や」
「建前だな」
名波は笑い、火村をちらっと見てからさっそくと受話器をとった。
そんな名波を見て、火村は少し困ったな…と思った。
手伝いをただでレンタルしてもらえるのはありがたいが、彼の家はそれほど広いとは言えない。客用の寝具だってない。
いや…そうじゃなくて、あっさり、自分が他人を…アリスを受け入れようとしていることに、困っていた。

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