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ひまわりの愛娘

ヒム→←←←←←←←←←アリス
学生

有栖川有栖。
名前は可憐な美少女のようだが、彼は可愛らしい顔を持っていても立派な男。
そんな彼はものすごく我儘だ。
だが顔がいいからか、男子生徒達にはちやほやされており、女子生徒が極端に少ないこの高校ではまるで王女様のような扱いをうけている。

だが、

俺はそんな彼がとても苦手だった。

 *

「火村!」

後ろからかけられた声に俺は思わず顔をしかめた。
無視してそのまま行ってしまおうかと思ったが…
「無視しなや!火村!」
廊下に響き渡るような声で叫ばれると、それも難しい。
仕方なく振り返ると、彼は怒っていたらしい顔を満面の笑みに変えた。
するとどうだろう…廊下にいてアリスの笑顔を見てしまった野郎共が「うぉッ」とかおかしな歓声を上げて顔を赤くした。
確かにアリスは、“アリス”という名前がよく似合う顔をしている。
女子生徒の数が1クラスに3人程度しかいない学校にあって、一番の“美女”と言われているだけのことはある。
だが、俺はアリスの笑顔が嫌いだ。
彼の無邪気な笑みを見ると、ひどく残酷な気持ちになる。
誰もまだ踏み行っていない雪原を、無造作に文歩いてやりたくなるような…。
「火村、これから図書館いくんやろ?俺も用事あるから一緒行ってええ?」
「…だめだ」
「ええやん!な?」
彼はするりと俺の腕に自分のそれをからませた。
途端、首筋に鳥肌が立つ。
「やめろ!」
脊髄反射で突き飛ばすと、彼は「わっ」と叫んで尻餅をついた。
そして…
「なにするんや」
涙を堪えるような目で俺を見上げる。
(おい…火村のやつ、アリスちゃんつきとばしたぜ)
(あいつ顔がいいからって…いいかげんにしろよな)
(あーあー、可哀想に、アリスちゃん、俺が慰めてあげるよー)
勝手なギャラリーのヒソヒソというには大きすぎる声に、いらだちが募る。
俺は、本当にコイツが大嫌いなのだと再確認する瞬間。
「火村」
アリスは起こして…というように俺に手を伸ばす。
その手を無視して立ち去ろうかと思ったが…思ったのだが…、自信たっぷりの女王様じみた笑みを見せるアリスの唇が小刻みに震えている事に気づいて足が止まった。
怯えている…?アリスが?いつも自信たっぷりな彼が?だけど、何に?
「ええよな?俺が一緒に行きたいって言うてるんやから、断らへんよな?」
口調だけは王女様のまま。
しかし、やっぱり彼はどこか怯えて見える。
その理由が知りたくて…俺の心はジリジリと焦げた。
「火村…?」
アリスの手がストンと落ちる。
俺が何も答えずただただ彼を見下ろしていると、次の瞬間、見え隠れしていた彼の“恐怖”が一気に全面に出た。
にっこりと微笑んで見せていた顔から表情が削げ落ち、眉が八の字に歪められ、助けを求めるような視線が向けられる。
王女様から、捨てられた子犬への驚くべき転身。
それを見た途端、俺はこれまでいくら彼に冷たくしても感じたことのなかった罪悪感に胸がギリギリとしめつけられた。
アリスの大きな目がうるうるとうるみ…唇がきゅっと引き結ばれたところで、俺はとうとう彼を無視できなくなってしまった。
なんてズルイ男だ。
そんな表情をされたら…。
「アリス…」
行くぞ。
と、そっけなく。
しかし、手を差し伸べると…アリスは先程までの泣きそうだった顔を一転させ、彼らしい自信たっぷりの満面の笑顔を見せた。
それにホッとしてしまった自分が悔しい。
だが、俺の手に体重をかけ身軽に立ち上がったアリスが、そのままいつものように俺の腕に絡みついた時、今まで感じていた嫌悪が何故か全く感じない事に気づいて、それは焦りに変わった。
これは、良くない傾向だ。
とても良くない傾向だ。
今、今すぐに彼の手を払いのけねば…手遅れになる。
俺の頭の中で赤い回転灯に光が灯り、けたたましく警報が鳴り響く。
しかし、
「ほな、いこか!」
まぶたの裏にハッキリと焦げ付いた先程のアリスの表情に手が動かない。
彼を拒絶する事を諦めた俺がため息をつくと、アリスは少し下からとても幸せそうに微笑んで俺を覗き込み、「帰りは一緒に夕飯くおな?」と首を傾けてみせた。

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