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夜と朝の中間地点

独=騎士 にょロマ=姫 伊=王子

夜中にふと人の気配を感じ、国の騎士であるルートヴィヒは目を覚ました。
彼はうつ伏せになった姿勢のまま、枕元に手を伸ばすと愛剣の柄を掴み…
「ルートォ…」
間の抜けた声を聞いて、手を離し小さくため息をついた。
そして…
「またですか!王子!」
起き上がると同時に怒鳴りつけると、部屋の侵入者…― 素っ裸にシャツを羽織っただけの王子 ―…フェリシアーノは「ヴェッ」と小さく悲鳴を上げて身体を震わせ、
「ルートォ、ルートー…」
彼の名を呼びながら、年甲斐もなくポロポロと涙を流し始めた。
そんな姿を見てしまっては臣下のルートヴィヒは、もう彼をしかることは出来なくなってしまう。
彼はもう一つため息をつきたい気分を抑え、ベッドサイドテーブルのランプに火を入れるとベッドから立ち上がりフェリシアーノに椅子を勧めた。
「で、また怖い夢でも見たのか?」
「ち、違うよ」
「では幽霊でも見たのか」
「違う!」
「では女官に迫って追い出されたか」
「違うったら!」
「まさか、おねしょをしたとか…」
「違う~!」
「おい、夜中だぞ、静かにしろ!」
ルートヴィヒはフェリシアーノを叱りつけた後、壁にかけられた時計を見、その短針が2時を指しているのを確かめるとため息をついた。
「それで、結局なんなんだ…」
明日も早朝から新兵の訓練があるのに…。
大体自分は、彼を守る為にいるのであって、小守をするために雇われているのではないのに…。
眉間の皺を揉みながらルートヴィヒが問うと、「それが大変なんだよ!」とフェリシアーノは椅子から立ち上がり叫んだ。

「姉ちゃんが結婚しちゃうんだ!」

フェリシアーノの叫びにルートヴィヒは一瞬動きを止めたものの、すぐに「そうか」と冷静な声を返した。
「王女様ももう16…結婚適齢期だからな…。結婚の話が来てもおかしくはない」
「え…、ルート…それだけ?」
「それだけ…?あぁ…相手は誰なんだ?」
「相手って…」
フェリシアーノは傷ついたような顔をし、相手は隣国の第一王子だと言った。
その王子は、彼女より10ほど上。側室をすでに何人か持っている。だからといって好色というわけではなく、なかなか見どころのある真面目な人物であると噂されている人物だった。
「ということは…正室に?」
「うん…そうだけど…」
「けど?」
「ルート…」
捨てられた子犬のような目で見上げるフェリシアーノ。
ルートヴィヒはそんな彼から目をそらしたくて…しかし、その欲求をなんとか抑えつけて何だと問うた。
「ねぇ、何も思わないの?姉ちゃん、結婚しちゃうんだよ?」
「…それは…いずれそうなることは分かっていただろう」
一国の王女として生まれたならば…いずれ国の大臣なり大貴族の貴族なり…もしくは他国の王子に嫁ぐということはほぼ決まっていたことである。
「でも、姉ちゃん、いやだって…」
「嫌だと言ってどうなるものでもないだろう…。王はお前たちには甘い人だが、この我儘ばかりは通らないだろう」
「で、でも…!」
歯がゆいというようにフェリシアーノは地団駄を踏み、
「でも…」
一度視線を下げ、
「でも!」
まっすぐにルートヴィヒを見上げた。

「ルートヴィヒは姉ちゃんの事好きなんでしょう!?」

たたきつけられた言葉にルートヴィヒは痛みを堪えるような顔をした。
「それに姉ちゃんだって…」
「違う!それは違う…!」
続けられた言葉を否定し、違うんだとルートヴィヒは首を振った。
「確かに俺は姫に対して出過ぎた思いを抱いている。だが、彼女が俺に好意を持ってくれているはずなどない」
顔を合わせる度に顔をしかめられ、「汗臭い」だの「暑苦しい」だのと言われる。
街に降りるときに護衛だとついていけば「目立つからあっちにいけ」と罵られ、部下に任せると「職務怠慢」だとすねを蹴り上げられる。
ほしがっていた髪飾りを誕生日プレゼントに送ってはみたものの、一度として彼女はそれを付けてくれたことはないし、「ジャガイモ」だの「ムキムキ」だのと名前すら呼んではくれない。
夜会の正装はセンスが悪いと罵られ、王にパートナーを仰せつかってダンスを踊れば「ヘタクソ」だとヒールで“わざと”足を踏まれる。
料理をとってやると「ジャガイモなんて食べない!」と皿をつきかえされ、髪かざりやドレスを褒めない事を「野暮男」と睨みつけられる…。
「どう考えても嫌われているだろう」
「ち、違うよ!姉ちゃんは素直じゃないだけで…」
「お前が俺を思って言ってくれているのは分かるが…」
「ねぇ、聞いてよ、ルート!」
「こうなることは分かっていたし、覚悟もしていたんだ」
「違うってば!」
聞いてよ!
フェリシアーノは右手で作った拳で彼の胸を打った。
「俺、知ってるもん!姉ちゃん、ルートにひどいことしちゃったって夜によく泣いてたもん!どうして素直になれないんだろうって言ってたもん!」
「…そんなことは…」
「あるよ!」
本当だよ!
必死に言うフェリシアーノにルートヴィヒの心は揺れた。
「訓練の時とかこっそり姉ちゃんが見に行ってたの、俺しってたし!部屋の窓からルートを探してたし!ルートが誕生日に送った髪飾りを鏡の前で何度もつけたり外したりしてたし!ルートが護衛の当番に当たる日にはずっとそわそわしていたし!」
仕事で城を離れる時には、ずっと浮かない顔をしていた。
帰るとの報が届くと、指折りその日を待っていた。
無事な顔を見ると、涙をはらはら流して喜んでいた。
ルートヴィヒに婚約の話が持ち上がると、彼女はそれを次々に握りつぶしていた。
北の砦への移動の話も、彼女が王に我儘をいって潰した。
夜会のドレスはルートヴィヒの服に合うように入念に準備していた…。
積み重ねられるフェリシアーノの言葉にルートヴィヒの心は揺れた。
「ねぇ、ルート…気づいてあげてよ」
べそべそと泣くフェリシアーノ。
普段はそんな風に泣く彼を煩わしく思うことも多いルートヴィヒだが…今日はそんな事を思う余裕はなかった。
彼は驚きに瞬きすら忘れるほどに動揺し、フェリシアーノに肩をゆすられてハッとした。
「ルート、本当だよ。本当の事なんだよ…!だから…」
行動を促すフェリシアーノ。
ルートヴィヒはしばらく唖然としていたが…やがて、
「悪い、用事を思い出した」
そういって、フェリシアーノを突き飛ばすようにして部屋を出て行った。

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