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影狼 13

「……って」
「…ね。……は……かしら?」
「…が取れたよ。鍋に入れちゃっていい?」
「いいけど、灰汁が出るからちゃんとすくってね」
「お前は何を食うんだ?シチューを一緒に飲むか?」
「アイク、その狼ならさっき自分で何か狩って食べてたよ」

声。
声に沈んでいた意識が浮上する。
どうやら俺は眠っていたらしい。
背中に感じるのは固い地面。
ボンヤリと目を開けると、誰かの背中が見えた。
赤いストールのようなものを肩にかけた…金の髪の少女?
手を動かそうとしたが途端に酷い痛みが走り、変わりに「うぅ」と喉の奥から悲鳴が漏れた。
するとハッとしたように少女が振り返り、ついでカイが俺を覗き込んだ。
「気がついた!」
『リク!!』
「あぁ……クッ」
「あぁダメよ寝ていて、あなた酷い怪我をしているのよ。止血だけはしたんだけど…」
私の力ではすべては癒せなかったと眉を下げる少女は…確か…ミーア、毒に侵されていた少女だ。
『カイ、辺りに敵は?』
『いないよ』
『体を起こしたい。手伝ってくれないか。背中を…』
そういって体を少し起こすと、カイがクッションがわりに腰の辺りに体を入れてくれた。
『ありがとうな』
礼を言いあらためて自分の体を見ると…なんというかミイラ男のようになっていた。
どうやら魔法の代償はかなり大きかったようだ。
ジョーカーにペナルティを尋ねようかと思ったが…知るのが怖くてやめた。
とりあえず、体は痛いが息をするのも辛いってほどじゃない。母親に半殺しにされた時に比べれば全然ましだ。
「あ、あの!助けてもらったみたいで!あ、ありがとうございます」
「ありがとうございます!」
薪の近くでアイクとユックが恐縮したように頭を下げた。
「あぁ…どういたしまして」
アイクは頭を打ったと言っていたから心配していたのだが、どうやら問題ないようだ。
よかった。
「あの、お名前をお聞きしてもいいですか?」
「あぁ、俺はリクだ。そして狼のカイ。そっちは、ミーアにアイクにユックだったか?」
「はい。この度は助けていただき、本当にありがとうございます」
またも丁寧に頭を下げるミーアに、少年二人も改めて頭を下げてきた。
「いや…俺も治療してもらったしな」
「それは…でも、私たちを助けなければしなかった怪我ですから」
確かにそうだが…
「…そういえば、あれからどれくらいが経ったんだ?」
「1日半くらいですわ。あれからすぐに私は目をさましました。それから貴方の止血をし、ユックと猿たちが盗んでいった荷物の一部回収をして、アイクを治療したんです。」
ミーアは薪にかけられた鍋を示して、あれも回収してきたのだといった。
「といっても、スクロールや薬草を入れていた荷物は見つからなかったんだけど…」
「学校の制服もね」
アイクの言葉にユックが鍋をかき混ぜながら言う。
「お前たちは学生なのか」
「はい。フラスティマ王立学院の二年生なんです」
「二年生ということは…」
「三人とも14だぜ」
なるほど、やはりそれくらいの年代か。
「その二年生が、なぜこんなところに?」
「課外授業の一貫なんです」
「そう、三人でパーティを組んでギルドの依頼をこなすんだ」
ギルドと言うのは聞いたことがある。
冒険者が登録してギルドから依頼を受けて、報酬を得るシステムだ。
ギルドに入るとランクFが与えられ、依頼を一定以上こなすとランクが上がっていく…らしい。
「そこでワットバーンを狩りに森にはいったんだけど、ちょっとどじを踏んじゃった」
「あれがちょっとか?俺たちが通りかからなきゃ確実に死んでたぞ」
「確かに…」
「反省してます」
「森に入るのは私たちじゃ無理だったみたいね」
聞くと、課外授業では毎年無理をして命を落としてしまうものがいるのだという。
彼らも薬草摘みから魔物狩りに依頼を変更し、あやうくその仲間入りをするところだったらしい。

彼らが作ったシチューは固形スープを溶かし、そこに野草と肉をいれたものでかなり美味しかった。
ちゃんと人間の舌にあった味わいだ。だから…まぁ、…カイは気に入らなかったみたいなのだが。
「ところでリクさんは、こんなところで何をしてるんですか?」
「俺たちと一緒でギルドの依頼?」
「一人で森に入ったんですか?」
三人が目をきらきらさせるのに少し体が引いた。
「それに、私、黒い髪に黒い目って初めてみました!」
「怖いものかと思ってたけど綺麗…ってゆーか格好いいよな」
「もしかして魔族とかじゃないですよね」
「カイ君が白いから白と黒でとってもかっこいいです!」
「その狼って物凄く頭がいいよな。こっちの言葉がわかるみたいだし。やっぱり契約してるから?」
「そういえば見間違いかもしれないけど、助けてくれた時、カイが物凄く大きく見えたんだけど…気のせいですよね?」
なんだか…クラスに入った転入生になった気分…いや、
「あー、そんなに一気に話されても答えられないんだが…」
教師だった時の俺に戻った気分だ。
まぁ俺が教師をしていたのは大学だから、生徒も彼らとは少しテンションが違うが。
「えっとだな…。俺の名前はさっきもいったがリクだ。年は…お前たちよりは上とだけいっとく。種族は…秘密。あと…ついこの間、この国にやって来たところ。…こんなものでいいか?」
「種族が秘密ってどういうことですの?」
「その姿は擬態ってことか?」
「そういえばリクは回復と炎を使ってたよ」
「ということは水と炎のダブルなんだ?」
「え、羨ましいなぁ~」
「俺なんか疾風属性持ってるのに、全くつかえないんだよな」
「それはアイクが練習しないから…」
「やっても無駄無駄、才能ないっていわれちまったしさぁ~」
のべつまくなしに喋り出した三人…。
……若さってすごい。
いや、この体は十分若いんだが、意識としてはもう三十代半ばだ。
なんだか俺はついていけない。彼ら三人のテンションには疲れを感じる。
『あー…カイ、寝るか』
首を回してカイを見ると、俺が言うまでもなく眠っていた。
俺はカイを枕にするようにずりさがり、三人のかしましい声を聞きながら目を閉じた。

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