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影狼 08

村はごく簡単に森を開いて作られたような、質素な村だった。
簡単なテントによる住居がいくつかと、木で作られた大きめの住居が一つ。
大体60人くらいが暮らしているようだ。
狼をベースにした獣人たちの村であるからか、畑の類は見当たらない。
俺たちが村の入り口に姿を表すと、まず遊んでいた子供たちが気づいて動きを止めた。
そして、俺…というよりカイを見て、わーきゃーと声を上げると大人たちの方へ走っていった。
『小さいのがいるね』
「子供だな。お前のいい遊び相手になるかもしれない」
『ほんと?』
「あぁ」
カイは見てくれは大きいが、中身はまだまだ本当に子供だ。
生まれて二年で二歳児ということはないが、攻撃力はともかくとして中身は遊びたい盛りの小学生といったところだ。
村に入らずに様子をうかがっていると、大人たちが集まりだした。
誰もがあたりまえだが狼の耳を頭に生やしていて、質素な服を着ている。
俺たちの出現に戸惑っているようだが、敵意は見えない。
『ねぇリク、俺、あいつらの言葉がわかんないよ』
彼らがひそひそと交わす言葉を聞いてカイが言う。
確かに彼らの言葉はよくわからない。
まったく未知の言語だ。
俺は魔法を使って言葉を取得し、カイにも適当な代償を出させて習得させた。
ちなみにこれくらいの魔法であれば、もうペナルティは発生しない。
そうして改めて彼らの話を聞いてみると…
「シン=ロウだ。」
「まさか…なぜこんなところに」
「本当にシン=ロウか?小さいじゃないか」
「しかし、普通の狼ではないぞ…。」
「それに隣に立つ男はなんだ。人か?」
「いや、人ではあるまい。人ならば髪と目の色は一致しないはずだ」
なんてことを言っている。
シン=ロウってのは話の内容からして、もしかしたら母親のことかもしれない。
『しかし、本当の人間じゃないって一発でばれちまったな』
カイだけに通じる言葉で話すと、カイは面白そうに目を細めた。
『まさか、この世界の人間は髪と眼は別の色をしてる…なんてな』
『今から変えるの?リク』
『いや、もう手遅れさ』

カイの頭を撫でると、集まってきた人々からどよめきが起きた。
シン=ロウ…いや、母さんはずいぶんと恐れられているようだ。
もしかしたら、彼らも母さんにとっては獲物でしか無かったのかもしれない。
彼女は良くも悪くも平等だったからな。
そんなことを考えていると、人々の中から小柄な老人と屈強そうな二十代半ばくらいの男が出てきた。
カイが反射的に構えようとするのをなだめ、「貴方が村長か」と彼らの言葉でやや尊大に尋ねた。
「いかにも、俺がこの村を治めているタムラタだ」
俺の言葉に答えたのは若い男の方。では老人は?と視線を向けると「私は先々代の村長であり、いまは長老をしておりますゴルダです」と笑った。
「この度はわざわざこのような辺境な村までよくお越しくださいました」
長老が丁寧に頭を下げると、村人たちも慌てたように頭を下げる。
「少し尋ねたいことがあり寄らせてもらった」
「それはそれは…では私どもの家に招待させてください。ご覧の通り何もないところではありますが精一杯おもてなしさせていただきます」
「あぁ、ありがたい」
言って、俺はカイの背中から今朝とったばかりの大鹿もどきをどさりと下ろした。
「つまらないものだが受け取ってくれ」
「これはこれはお心遣いに感謝いたします」
やたらと腰の低い長老だ。
俺とカイが二人のあとについて歩き出すと、俺たちの持ってきた土産に村人らが群がり「こりゃすごい」「さすがシン=ロウだな」とか言っていた。
喜んでくれたようで良かった。

俺たちが通されたのは、村の中央に建てられた木造の家だった。
入ってすぐに広間があり、中央に大きなテーブルがもうけられていた。
おそらく村での話し合いなどはここで行われるのだろう。
村長と長老が奥の席に座り、俺が対面に座るとカイは俺の足元で寝そべった。
村長が慌てて敷物を取りに行こうとするのを手で制していると、奥の部屋から女が茶を持って表れた。
多分、尊重の奥方だろう。
小柄で優しそうな人だ。
彼女は俺たちに茶を出し、そしてカイにはミルクの入った平皿を差し出すとしずかに奥に戻っていった。
「さて、シン=ロウ様、そして契約者様、あらためて歓迎申し上げます。」
「まてまて」
俺は苦笑しながら手を横に振った。
「先ほどは訂正しなかったがな、お前たちは勘違いをしている」
「は?勘違いですか?」
「そう。この白いのはシン=ロウという名前ではないし、俺も契約者ではない」
きっぱりと言うと二人は困惑したような顔を見交わした。
「だが…白い大狼(たいろう・ダイアウルフ)はシン=ロウ様では…?」
「こいつはカイ。シン=ロウではない」
「カイ様…?」
名を呼ばれたカイがピクリと耳を動かしこちらを見た。
『呼んだ?』
『いや。話はつまらないだろうが、もう少しそこにいてくれ』
『りょーかい、リク』
「では、貴方はカイ様の契約者であると?」
「まず契約者というものがよくわからないが、契約者でもない。」
「しかし、お言葉が通じておられる様子ですし…カイ様はあなた様に従っているように見えます。本当に契約を交わしているのではないのですか?」
「あぁ。」
俺が一つ頷くと、彼らは大いに驚いたようだった。
「では改めて自己紹介をしよう。俺の名はリク。カイの兄弟だ」
名乗った途端、二人がピシッと凍りついた。
ん?あぁ姿が違うからか?
「あー、この姿は…」
「あ、ありえん」
俺の言葉を遮るように村長が言い、立ち上がった。
「大狼に兄弟が…。人に化け流暢に言葉を話しているなんて…それも契約者も得ずに…」
俺は彼らの驚きが理解出来ず、首を捻った。
「何を驚く?」
「…い、いえ…ですが、本当なのですか?」
「あぁ…信じないなら…」
俺は部屋を見渡し部屋を区切る時に使うらしい衝立が重ねて置かれているのを見つけると、「すこしアレを借りるぞ」と席を立った

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