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影狼 06

気がつくと、俺は巣穴にしているウロの中にいた。
…?
なんだろう。すごく体がだるい。
起き上がる気力もなくぐったりとしていると、
『あ、目が覚めた?』
カイが戻ってきて、くわえていた何かの臓物をどさりと近くに置いた。
『これ、リクの取り分だよ。心臓はもらっちゃったけど、肝臓はあげるね』
どうやら牛王のものらしい。
ということは…
『倒したのか。』
『うん。リクが牛王の頭を落としたんだよ。同時に気を失っちゃったけど』
そうかと頷き、俺はペナルティをチェックした。ペナルティチェックの魔法は事後にしか使えないもので、この魔法に対するペナルティは早くに解除されている。
さて…まず一つ目、牛王の足を凍らせたやつの対価は…神経・精神に対する耐性がゼロになるものだったようだ。
そして二つ目、頭を切り落としたものは疲労×5。
代償が魔法に大して大きすぎる…ということは、俺のレベルがその魔法を普通に使えるレベルにないということだろう。
『肉ももってこようか』
『…あぁ。たのむ』
俺の言葉にカイは嬉しそうに跳ねていった。

疲れがひどい。
これでは明日までは動けそうにない。
俺は少しでも体力回復に勤めるべく、生暖かい新鮮なレバーに食いついた。
レバーは味でいえばあまり好みではないが、栄養面でいえば何よりのごちそうでカイの大好物でもある。
それをまるごと譲ってくれたということは、かなり心配をかけたのかもしれない。

『お前がいてよかったよ』
戻ってきたカイに心から言うと、彼は不思議そうに首を傾げた。
『魔法を使うたびにぶっ倒れてたんじゃ命がいくつあっても足りないからな。お前には感謝してるよ』
『え、そんなの別に…』
カイは照れてるのか落ち着かないようにうろうろとした。
『…俺もリクには助けられてるっていうか…、リクがいなきゃ俺はダメだから…あ、俺、見回りしてくる!』
照れ臭かったようで逃げてしまったが…確かに俺とカイは持ちつ持たれつなのかもしれない。
あいつは俺がいなきゃまだまだだし、俺はあいつがいるから怖がらずに魔法を打てる。
いい兄弟がいて俺は幸福者だ。



一週間後、俺たちはゴブリンたちの後をつけていた。
ゴブリンは集団生活を行う二足歩行の醜悪なやつらだ。
背丈は人よりも低いが、手足や胴回りは人の倍以上。
生産活動は行わず、もっぱら略奪行為によって生きているやつらだ。
俺たちがつけているのは五匹のゴブリンだ。
どうやら一仕事を終えたあとらしく、獣人族(その名の通り人の姿をとりながら獣の身体的特徴を一部を有している)の躯をそれぞれが担いでいる。
牛王を倒した俺たちはずいぶんレベルが上がっている。やつらのアジトを突き止めて殲滅するのはいい腕試しだ。
『カイ、見えるか』
『…うん、見えた。丘の向こうに細い煙が立ってる。多分そこだよ』
『わかった』
視覚機能を上げたカイに了解を告げると、俺は彼に心身強化の代わりに魔法能力の半減を命じた。
やつらは魔法を使えるやつもいないことはないが、低級レベルしか使えない。
それならば心身強化をして物理的に殲滅するのが正しい方法だ。
俺は…というと、同じように物理攻撃とともに幻覚魔法を試すつもりでいた。
俺式影分身もどきで撹乱してやる。
やつらがあわてふためく様を想像すると、思わず笑みがこぼれそうになった。

結果的にいえば…この襲撃はまったく危なげなく成功した。
ペナルティで俺の攻撃力が半分持っていかれたにも関わらずだ。
幻覚は俺の期待以上にゴブリンたちを引っ掻き回したし、そもそも魔法より物理攻撃を好むカイの働きは目覚ましいものがあった。
ゴブリンたちは意図的に逃がした十数匹(生物多様性って大事だよな)を除いて集落は全滅した。
ゴブリンは不味いと食わないカイだが、ゴブリンがあらゆる場所から略奪してきた物品には興味があるらしくテントの中に入っては布や箱を引きずり出している。
俺はというと最初のゴブリンが運んでいた獣人を見聞していた。
遺体は五つ。
耳が獣になっているのだが、どうやら全てウサギのようだ。子供が二体、成人男性が一人、残りは成人女性だ。
男性二人は外傷がひどいが、女・子供はほとんどなくきれいなもの。
顔立ちは東南アジア系…堀がやや深くはっきりとした顔立ちをしている。
服装は質素な布製。
刀傷が見てとれるが、それほど性能のよいものでつけられたようには見えない。
子供が腰につけていた袋からは、濁ったガラス玉のようなもの。それは、女性の首飾りにもついていた。
文明のレベルはまさに剣と魔法のある中世といったところか。
『リク、キラキラ』
カイが宝石の連なったネックレスを持ってきた。
『他にもいっぱい』
『それはいいものだ。ほかにもキラキラしたものがあれば持ってきてくれ』
『わかった』
俺は一旦遺体のそばを離れると、略奪品の中から服になりそうなものを見繕った。
『…一度試してみるか』
そして、人に化ける魔法を試してみることにした。
これまで何度か挑戦してみようとし、そのたびに躊躇してやめてきたものだ。
理由はよくわからない。
人あらざるものになってしまった自分を嘆くためか、それとも前世の自分をいまだ引きずっているためか…。
俺は虫を払うように首をふり、感傷を払った。
人に姿を変える魔法は、俺の予測からいえばさほど難しいものとは思えない。
ペナルティはすでに解除済みか、あってもごく軽いものだと思われる。
俺はそばに漂うジョーカーにちらと視線をやり、人に姿を変えた。

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