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影狼 05

精霊を得た後、母親は俺たちが近づくことを断固として拒否した。
これまで教育に対しては厳し過ぎるくらいの母ではあったが、甘やかす時はとことん甘くいつも見守っていてくれた母。拒絶されたことはこれまでは一度もなかった。
その母親が牙を剥いて俺たちを威嚇し、時に鋭い爪で攻撃しながら吠えたてる。
それでも何とか母親の後をついていったが、縄張りにすら近寄ることが許されなかった俺とカイはやがて母から離れるしかなかった。
いわゆる巣立ちというやつだろう。
俺はすぐに理解したが、カイには無理だったようでしつこく彼女を追いかけたり哀れっぽく哭いたりした。
だがいくらやっても、もう彼女が自分を寄せ付けてくれないことを悟ると、俺に身を寄せて丸くなった。
『母さんはどうしちゃったの?俺たちのことが嫌いになったの?』
子供っぽく聞くカイの顔を舐めてやりながら、俺はそうじゃないといってやった。
『俺たちはもう一人前と認められたんだよ。』
『一人前だと母さんと一緒じゃダメなの?』
『ダメだ。大人なんだからな。』
大人といっても…実はあまり自信がない。
少なくとも人間の二十歳相当に成長したという気はしない。
せいぜい中学生くらいだ。
だが、そんなものなのかもしれない。
『リクは?リクも俺から離れるの?』
『…あぁ、そのうちな』
『えっ!い、いやだよそんなの!』
『落ち着け、そのうちって言ったろ』
興奮するカイをまた舐めると、彼は甘えるように頭を胸にすり付けてきた。
『俺は…もっと強くなったら森を出たいと思ってるんだ。だけど、それまでは一緒にいよう。もちろん、お前がよければだが』
『いいよ!いいに決まってる!だけど、その時は僕も一緒に行きたいな』
『あぁ…。でも今すぐに決めなくてもいいさ』
だまっていなくなることは無いと約束すると、彼は安心したように目を閉じた。

俺とカイは母親の縄張りからずいぶん離れた場所にある巨木のウロを拠点にすることに決めた。
ここは、元は月の輪熊もどきの巣だったのだが、俺とカイが連携して熊を駆逐しててにいれた。
すぐそばに湧き水の出ている小川があってまずまず快適な場所だ。
そこで俺たちは狩りの訓練や、魔法の訓練…それからカイには人の暮らしについての勉強をさせた。(お魔法を使って知ったお金の概念や、その簡単な計算なんかだ。ちなみにペナルティは睡眠時の時間一時間延長、一度のみだった)

カイの精霊は天秤ではなく、正確にはバランサーというらしい。
契約を結んでいない精霊とは会話を交わすことができないので、正しいところはわからないがカイの説明や魔法を見てわかったところによると、カイの能力もまた代償を必要とするものだということだ。
例えば、氷の魔法を使うということを天秤の片方にのせるとすると、傾いた天秤を水平に保つために火炎属性への防御を削るといった具合だ。
だが、この能力は俺の能力とは違い自分で代償を自分で設定できる。
しかもあらゆるものを天秤に載せることが出来るのだという。
基本的にプラスとマイナスの関係ではあるが、単純に代償がデメリットとは言いがたい。
今はレベルが低いから無理らしいが、暗闇で目が見える変わりに自分の気配を薄くするとか、火炎攻撃を反射する変わりに氷結攻撃は吸収する…とかもできるらしい。
またこれも今のレベルでは無理だが、他人や物にたいして魔法を発動させたり、スポイルといって自分の持たない能力を一定期間奪い代償にすることも出来るようになるらしい。
はっきりいってジョーカー真っ青な反則級の精霊だ。
だが…悲しいかな。
カイはあたまが悪い。
いや、狼としては今でも十分に頭がいい方だとは思うが、人としての経験を積んでいない彼にはバランサーを完全には使いこなせない。実力の半分も引き出すことはできないだろう。
まぁ、ジョーカーにしろバランサーにしろ説明が不足しているのは自覚がある。おいおい説明したい。

『リク!牛王だ!』

カイの声にハッとした俺は魔法の練習を切り上げると慌てて走り出した。
ブオォォォォ!!
と、大気がビリビリと振動するような牛王の吠え声。
くそ、なんで今まで気づかなかった?!
あぁそうか、ペナルティだ。回りの気配を探る能力が著しく下がっていたようだ。
本当に俺の魔法ってのは…ッ!
『リク!!』
『わかってる!!』
牛王ってのはその名の通り(といっても俺の命名だ)牛の王のように巨大なやつだ。
二足歩行で高さは五メートルほど、巨大な二本の角をもち炎をよく扱う。
この森でも最強に分類される生物だ。
『カイ!氷結魔法へシフト!代償に氷結耐性を捧げろ!!』
『!わかった!』
途端、カイの持つ雰囲気が変わる。
俺も同じように氷結魔法を使うときに氷結耐性をペナルティとしたいところだが、俺の場合はペナルティがその時々により変わる。
低い確率で当たり…というか、プラスの効果を得られることもあるがそれは期待できない。当たりはないものと考えるのが利口。
さっさとレベルをあげなけりゃ、俺は自分の魔法に殺されそうだ。…といってペナルティを恐れていてはこれもまた死ぬし…なんというジレンマ。
『いくよ!』
カイが開いた口から大粒の氷塊が飛び出し、牛王を襲うが牛王は両手を振るってそれを避ける。
『ひゃぁ、きかないよ!』
『ばか、すぐに諦めすぎだ!!』
攻撃を続けることを指示し、俺は牛王の足元に向かって氷結魔法を放った。
ビシビシという音とともに地面が凍りつき、氷が牛王の足をのぼる。
『やった!』
『油断するなといってるだろう!攻撃の手を休めるな!!』
『うん!』
今回の俺の魔法に対するペナルティは今の所はよくわからない。
後になって出てくるか、それとも現在なんらかの耐性が下げられているのか…
だがこれくらいなら許容範囲。
『カイ!そのまますこしの間足止めしてろ!』
『わかった!!』
次々に氷の弾をつくり、牛王がしかける攻撃を身軽に避けるカイ。
これは素早さを上げる代わりに氷結魔法耐性をゼロにしたのかもしれない。
牛王は氷結魔法はけして使わないからいいだろう。
俺はカイが牛王を引き付けている隙に巨大な氷の刃を作り上げた。レベルを上げると一瞬でできるのかもしれないが、今の俺では十秒くらいかかってしまった。
ペナルティは…今回もよくわからない。
だがもし火炎耐性がゼロになっていたとしたらかなり不味い。
一発で決めなくては…。
刃は俺の意思によりゆっくりと回転をはじめ、速度を倍々に増やすと銀の円盤のようになった。
それに今度は牛王というターゲットを与え
『カイ!いまだ!避けろ!』
一気にそいつの胴をまっぷたつに引き裂いてやった。

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