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サボり魔と委員長の関係

グラウンドへと降りる10段もない階段の一番下の段に委員長は腰掛け本を読んでいた。
彼は本を読むのが好きだった。といっても、あまり難しい本ではなく、彼が好むのはファンタジーやSFといったもの。
彼が今読んでいたのは、SFとファンタジーが融合したような作品で、剣と魔法の世界と近未来社会が融合したような…ゲームの世界のような話だった。
今はちょうど、主人公が友人と二人で親の言いつけを破って“竜の谷”へと向かっていった所。
ガウーランという馬のような動物の背に乗って、一気に谷に駆け下りていく。
物語がとても盛り上がっている所。ドキドキして…早く続きを読みたくて…
だから、気づくのが遅れた。

「…だよね」

「え?」

隣にとても厄介な男が腰掛けていたのに。
委員長のクラスメイトの、セシルだ。
セシルはいつもカインという生徒とつるんでいる…顔はいいのだが…なんというか…頭のかわいそうな男子生徒だ。
「だからさ、ゆっちんの話。知ってるでしょ?ゆっちん」
「は…?ゆっちん…ですか?あの、知りませんが…」
「あ、そう。でも知っててくれないと話になんないから、知ってるってことにしててよ」
「え…」
理不尽な言葉に目をぱちくりさせている委員長の横で、セシルは「でね」と混乱する彼を完全に置き去りにしたまま、また口を開いた。
「ゆっちんが言うにはね、このグラウンドにはめっちゃくっちゃ幽霊がいるんだって」
「幽霊…ですか」
「そそ、うっじゃうじゃ。だからさ、本当は野球やりたいのにできないんだって」
セシルの言葉に、委員長は「はぁ」と気のない返事をした。
すると、セシルは
「えーそれだけ?」
とつまらなそうに口を尖らせる。
委員長は焦って視線を前に戻し…
「あ、でも、野球部は練習してますね」
と、バッティング練習をする野球部を見て言った。
だが…
「そりゃもう、石を投げれば幽霊に当たるってくらいいるらしいんだよ」
軽く無視されて、カインでもない委員長は唖然とした。
「あ、見てみたい?そっかー」
セシルは立ち上がると、小さな石を拾って手のひらでポンポンと弾ませた。
そして、ポーンとグラウンドに向かって放ると…それは、何も無い空間にゴチンとぶつかって跳ね返り…セシルの足元までコロコロと転がって止まった。

今のは…なんだ。
何か…あたった。ゴチンと。
しかし、そこには何もない…。アクリルの壁も、ガラスの壁も…空間の歪みも…ない。
それなのに…石は、“何か”にぶつかって…戻ってきた。

唖然とする委員長。
立ち上がったセシルは、
「まぁ、今のは全部嘘なんだけどね」
と言って、ひょっこひょっこと特徴的な歩き方で去っていった。

「…え?嘘…?え…でも今…」

気のせいだったのだろうか?
委員長はセシルが投げて戻ってきた小石を拾い…そっとグラウンドに向かって投げてみた。
それは当たり前のように放射線を描いて少し離れた場所に落ち、少しだけ転がって停止した。
委員長は唖然と何もない空間を見つめていたが…、しばらくするとなんだか怖くなってきた。
彼はぶるりと身体をふるわせると、本を胸に抱えて慌てて校舎の方に戻っていった。

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