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Sledgehammer 26

12月24・25日。
ライブハウス“バロン”ではクリスマスライブが行われることになった。
バロンを利用してライブをしているバンドが一斉に介してのクリスマスライブだ。
近頃はあまり活動はしていなかったものの、人気は高いらしいカインたちのバンドももちろん誘われた。
しかし、最初彼らは乗り気ではなかったので断っていた。
だが、釘バットをカラカラと引きずりながら歩いていたところを拉致され急遽ライブに出ることになった。
彼らがライブに出るのと出ないのでは客の入りが違うらしい。
エッジのバイトの関係もあり、出演するのは25日の10時すぎ。
客があったまったトリよりもいい時間かもしれない。

街はクリスマス一色。
人々は妙にそわそわしている。
客の入りもいい。
また入った客もアルコールが回って盛り上がっていた。

だが、セシルのテンションは低かった。
そしてカインも低かった。
高かったのはエッジだけで、彼は楽屋でローストチキンを嬉しそうに食っている。
「欠食児童みたいだな」
カインが不快そうに煙草を咥えながら言っても、
「明らかに冷凍じゃん」
セシルが舌をベッと出しても、エッジは全く気にせず次から次に口に入れていった。
「まじ、美味い」
彼は手当たりしだいに食いまくる。
彼はあまり味覚が発達していないらしい。
カインとセシルは思ったが、セシルにかんして言えば、彼はエッジよりも味覚が発達していないので言えた義理ではない。
長テーブルの上には、バロンが用意したものや、出演バンドが持ち寄った物、また客の差し入れなどで食べ物が満載だ。
カニのコロッケ、フライドチキン、ベークドポテト、生ハムの巻かれたアスパラガス、明らかに冷凍品のハンバーグ、マカロニグラタン、大きなエビフライ、やきとり…肉類が多いのは若い男の出演者が多いからだろう。
セシルはうんざりとしながらエッジの食べる様を見、ホールのショートケーキの上に飾られているいちごを一つずつつまんで口に入れだした。
「それって美味いの?」
「微妙」
「でも、食うんだ?」
「食うよ」
セシルは6個あった飾りのいちごを全て食べてしまうと、口の中に一つ残っていたらしいヘタをペッと吐き出し、カインを見た。
二人は無言で視線をしばらく合わせていたが、やがてセシルの視線の意味がわかったのかカインが持っていた煙草をセシルに差し出した。
「いちごとヤニの組み合わせとか」
「何」
「どーみゃくこーか とかなりそー」
「どーにゃく?」
「どーみゃ…?…あーわかんね」
お前が変なこというからわからなくなったとカインは不機嫌そうに頭をガシガシと掻いた。
と、その時楽屋の扉が開き、アルバイトスタッフの一人が顔を出した。

「そろそろ時間ですよー」

大学生らしいひょろっとした男の声に三人は一度は視線を上げたものの、すぐにフイっと視線をそらした。
エッジはもくもくと食べ続け、セシルは“メリークリスマス”とかかれたチョコレートを手にとり、カインはまた煙草をスパスパとやりだした。
「え、あ、あの…そろそろなんですけど」
「「「…」」」
「あの、あと1曲で…」
「「「…」」」
セシルとカインははっきりとやる気がなかった。
エッジはやる気はあったが、それは食べるという行為にのみで、音楽に対してじゃなかった。
バンドマンの風上にも置けない、最低な三人だ。
真面目に音楽をやってるやつらから、闇討ちされてしまえ…と思うくらいには。
「で、出番が…」
かわいそうなアルバイトスタッフが心底弱ったような声を出すと、ようやく…三人は顔を上げた。
「行くか」
「えー…」
「えーって、そんだけ食ったんだからその分は働けよ」
「それだけって僕が食べたのはイチゴ6個キリだけど」
「エッジが食い過ぎだな」
「エッジ…」
「俺のせいかよ!」
「っつか、俺らいつからバンド活動してないよ」
「えー…夏あたりから?」
「あー、マイシャローナ?」
「あれは熱かったな…」
「うん、死ぬかと思った」
「ステージの上って特に照明もあるしさ…」
「でもあれは結構たのしかったよな」
「あ、あのあと俺ら金魚すくい「あの!!!!!」」
「お願いですから…準備を…」
ステージの方からはわーーーっという大歓声が上がっている。
おそらく前のバンドが捌けたのだろう。
三人は仕方なく立ち上がった。
だるだるっとした様子は本当にやる気がなさそうだ。
しかし、アルバイトスタッフとしてはとりあえずステージに出てさえしてくれれば、彼の役目は終了だ。
だがホッとした途端、セシルがギターの代わりに釘バットを持ってステージに向かったのを見て、サッと顔を青ざめさせた。

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