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Sledgehammer 21

何の意味もない話 リハビリ用
前出てきたピアノマン
黒いキャミソールドレスを着たローザに、黒のパーカーを着た男が近づく。
すらっとした細身の男。
柔らかそうな髪を後ろでラフに縛っている。
綺麗な男だ。
男を褒める言葉は知らないが、綺麗な…中性的な美しさのある男。

「久しぶりにきたな」

振り返ると、いつの間に現れたのだかバーテンダーの男がすぐとなりに立っていた。
「あれって…」
「ん?知らなかったのか?あれがそうだぜ」
あぁ、やっぱり。
「セシル」
「なんだ、知ってるじゃないか」
「名前だけは…」
あのローザを射止めた男。
視線の先、二人は少し立ち位置を変え、セシルの表情が見えなくなった代わりに、ローザの表情がこちらから確認できるようになった。
「笑ってる」
「そりゃ笑うだろう」
「じゃなくて…」
何といえばいいか…笑い方が違う。
俺たちや客に笑いかける時のそれとは、全然違う。
それは、彼女に惚れている俺からすれば大変ショックなわけだが…あの綺麗な男を見た後は、なんとなく納得もできてしまう。
だけど…
「俺、惚れてるのは向こうだと思ってた」
「は?」
「だから…つまり、向こうが必死こいてローザを引き止めてるものと…」
「あー…」
間の抜けた相槌をうってバーテンダーは小さく笑った。
「彼氏のほうを知らなきゃそう思うだろうな」
なにせ彼女はとびきりの美人だ。
バーテンダーの言葉に俺は頷くが、しかし、それだけの言葉では到底彼女の魅力は語りきれない。
彼女は完璧なのだ。
月の女神のように。
顔も、姿も、物腰も、声も、性格も、教養も…すべてにおいて完璧。
一点の曇もない。
見ているだけでため息が出る…が、今でたため息はいつものものとは少し種類が違う。
「打ちのめされたか」
「…あぁ」
これでも俺は女にもてる方だ。
高校の時にはファンクラブなんてものが組織されたこともあったし、年上の女性からももてた。街に出れば逆ナンもよくあることだったし、芸能プロダクションなんかからのスカウトだってなんども。
こうやってステージでピアノを弾くようになってからは、俺目当ての客だって多かったんだ。
ローザはつれなかったが、自信はあった。
なのに…。
恋敵である男もさることながら、彼女に…
「あんな顔されちゃ…」
お呼びでないの丸分かり。
道化以下。
かませ犬にもなりゃしない。
「穴があったら入りたい」
唸ると、隣でバーテンダーが笑った。
「いつも自信満々のお前が…珍しいものを見たな」
「別にあの男に負けたわけじゃない…」
「あの男に負けたんだろ」
「そうかもしれないけど…俺が負けたのは、彼女の笑顔だ」
負け惜しみ。
言ってる本人がわかってるんだ。
「そうさせているのは彼だ」
指摘しないで欲しいというのは、高望みし過ぎか?

もちろん、言い返す言葉はない。

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